クリシェ

トリヤマケイ

文字の大きさ
61 / 73
魔王編

Gate way

しおりを挟む


    ということで、いきなりお話は3人がダンジョンに突入するところから再開します。

   ダンジョンの入り口は、ごく自然な感じの洞窟でありながら、奥に行くに従って薄暗くなっていかず、真逆に明るくなっていく様は、まるで人感センサーダウンライトが熱に反応して次々に点灯していくかのように思われた。

「不思議だなぁ、LEDのライトでもあるのかな?」

「あー、それはね、この星砂に似たやつが生命体が近づいていくとそれに反応して、光り出すんだよ」

「星砂?  ユタカ、星砂知ってるの?」

「あ、それも母ちゃんからの受け売り、昔、母ちゃんは沖縄に住んでいたことがあるらしいんや」

「へー!」とケンジは感心したようにいうと、やっとフエちゃから貰い受けたキャップにも慣れたらしく、先頭を切って意気揚々とトンネルのようにくり抜かれた横穴を闊歩していく。

   ケンジは、たぶんこれはあれじゃね、シールド工法ってので掘削したんじゃん?  シールド工法がなんなのか知らんけど、などとブツブツ独り言しながら、そのトンネルを真っ先に抜けた。

   すると、視界が一気に開けたが、その不思議な光景に度肝を抜かれた。

   最初の階層のゲートというか、門が眼前にあった。そして、その門の下までやってくると、黒光りしながら見るものすべてを威圧するような巨大な門を見上げた。

   何やら蛇がのたくった跡のような文字らしきものが書かれてある金のプレートが青白いラジウムみたいに美しかったが、おそらくこのプレートに書いてあるのがこれから入っていく階層の世界をストレートに言い表わしているのだろうと思った。

「これは、この階層の第一のゲートだよ、てか、そう思う」とフエ。

「そうや、フエちゃは、ダンジョン攻略してたんやもんな、いろいろ知ってるんやんなぁ」

「第一のゲートって?  つまり。第二もあるわけ?」

「まあ、それはそうなんだけど、そこらへんもいろいろパターンあるみたいだから。とにかくここのダンジョンはハンパなくて、たぶんアルゴリズムでダンジョンの階層を常に変化させてると思う」

「なにそれ?  階層は固定されてないってこと?」

「いや、階層そのものは固定されてるけど、入り口が時間制なのかなんなのかわからないけれど、常に変化してるんだと思う」

「じゃあ、もう少し待ってたらこのゲートも別なゲートに変わるってこと?」

「それはよくわからない。そこらへんもランダムに変化するのかも知れないんだけど、とにかくゲートは同じだったとしても飛ばされる先がわからないって話」

「なんかややこしいんだね」

「ちなみに自分が入った時には、この黒いゲートじゃなかったはず」

「つまり、ゲートをくぐっても地続きでその階層と繋がっているわけじゃないってことか」

「そうなんだよ、ゲートの先には何もない。或いは暗黒。ただ、亜空間へのゲートがあるだけなんだよ」


   ケンジは、ユタカとフエのそんなやりとりを上の空で聞きながら、いったいどんな世界が待ち受けているのだろうと、ワクワクしながら、ゲートを見上げているのだった。

   しかし、端から居丈高な高圧的なパワーを感じさせる巨大な門は、固く閉ざされているのであり、部外者を断固拒否しているとしかケンジには思われないのだった。

   万里の長城、或いはベルリンの壁のようにどこまでも果てしなく続く彼岸と此岸の境界線である目に見えぬ壁が、あたかも見えるようだった。

    あたかもというのは、実のところフエの説明していた通り、そこには巨大な門が空中に浮いているだけなのだった。

   ケンジは、こういったシュルレアリスム的な光景をどこかで見たことがあると思った。というか、絵だった。たしかルネ・マグリットという人が描いた海の上に巨大な岩が音もなく浮かんでいる、そんな作品をケンジは憶えていたのだ。


   脳裏に浮かぶ巨大な岩。白波の立つ海上にピタリと静止したまま、音もなく浮かんでいる。

   だいぶ以前に、それもたった一度だけ見ただけだったはずだが、強烈な印象を受けたケンジは、いつまでもあの絵が忘れられないのだった。

   ケンジにとっては、ただ単に海の上に浮かぶ巨大な岩という不思議な絵では済まされない何かが、その絵にはあったのであり、その何かにケンジは強く惹かれたのだ。

    いま、その不思議な光景が現前しているのを目の当たりにして、ケンジは呆然とするばかりだった。

「さてさて、どうしたものかね」とユタカ。

「あそこまで浮くのはフエちゃの反重力でやってもらうにしても、問題はどうやってゲートを開けるかだな」

「案外、開いてるかもよ?」とフエ。

「てかさ、あれって反重力で吹っ飛ばせないのかな?」

「いやいや、そもそもアレが迷宮への入り口なんやから、アレ吹っ飛ばしたらマズイやろ?   入り口なくなってまうで」

「そうなの?   そういう考え方もあるわけだ」と妙に感心してみせるケンジ。

   そして、やはりフエの反重力のパワーでユタカたちは中空に浮かぶゲートまで移動すると、すったもんだしながらゲートを開こうとしたが、いっかなゲートは開かないのだった。

「普通、ドアって引っ張って開けるか、押して開けるかだけど、もうひとつ引き戸ってケースもあるよね?」

    そう言いながらケンジが試しに横へとスライドしてみると、異様なくらい軽やかにゲートは動き出したが、開き切ると同時に霧のように消えてしまうのだった。

   しかし、ユタカたちはそんなことを知るよしもなく、ゲートが開くと同時に亜空間へとあっという間に吸い込まれていった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...