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魔王編
Gate way
しおりを挟むということで、いきなりお話は3人がダンジョンに突入するところから再開します。
ダンジョンの入り口は、ごく自然な感じの洞窟でありながら、奥に行くに従って薄暗くなっていかず、真逆に明るくなっていく様は、まるで人感センサーダウンライトが熱に反応して次々に点灯していくかのように思われた。
「不思議だなぁ、LEDのライトでもあるのかな?」
「あー、それはね、この星砂に似たやつが生命体が近づいていくとそれに反応して、光り出すんだよ」
「星砂? ユタカ、星砂知ってるの?」
「あ、それも母ちゃんからの受け売り、昔、母ちゃんは沖縄に住んでいたことがあるらしいんや」
「へー!」とケンジは感心したようにいうと、やっとフエちゃから貰い受けたキャップにも慣れたらしく、先頭を切って意気揚々とトンネルのようにくり抜かれた横穴を闊歩していく。
ケンジは、たぶんこれはあれじゃね、シールド工法ってので掘削したんじゃん? シールド工法がなんなのか知らんけど、などとブツブツ独り言しながら、そのトンネルを真っ先に抜けた。
すると、視界が一気に開けたが、その不思議な光景に度肝を抜かれた。
最初の階層のゲートというか、門が眼前にあった。そして、その門の下までやってくると、黒光りしながら見るものすべてを威圧するような巨大な門を見上げた。
何やら蛇がのたくった跡のような文字らしきものが書かれてある金のプレートが青白いラジウムみたいに美しかったが、おそらくこのプレートに書いてあるのがこれから入っていく階層の世界をストレートに言い表わしているのだろうと思った。
「これは、この階層の第一のゲートだよ、てか、そう思う」とフエ。
「そうや、フエちゃは、ダンジョン攻略してたんやもんな、いろいろ知ってるんやんなぁ」
「第一のゲートって? つまり。第二もあるわけ?」
「まあ、それはそうなんだけど、そこらへんもいろいろパターンあるみたいだから。とにかくここのダンジョンはハンパなくて、たぶんアルゴリズムでダンジョンの階層を常に変化させてると思う」
「なにそれ? 階層は固定されてないってこと?」
「いや、階層そのものは固定されてるけど、入り口が時間制なのかなんなのかわからないけれど、常に変化してるんだと思う」
「じゃあ、もう少し待ってたらこのゲートも別なゲートに変わるってこと?」
「それはよくわからない。そこらへんもランダムに変化するのかも知れないんだけど、とにかくゲートは同じだったとしても飛ばされる先がわからないって話」
「なんかややこしいんだね」
「ちなみに自分が入った時には、この黒いゲートじゃなかったはず」
「つまり、ゲートをくぐっても地続きでその階層と繋がっているわけじゃないってことか」
「そうなんだよ、ゲートの先には何もない。或いは暗黒。ただ、亜空間へのゲートがあるだけなんだよ」
ケンジは、ユタカとフエのそんなやりとりを上の空で聞きながら、いったいどんな世界が待ち受けているのだろうと、ワクワクしながら、ゲートを見上げているのだった。
しかし、端から居丈高な高圧的なパワーを感じさせる巨大な門は、固く閉ざされているのであり、部外者を断固拒否しているとしかケンジには思われないのだった。
万里の長城、或いはベルリンの壁のようにどこまでも果てしなく続く彼岸と此岸の境界線である目に見えぬ壁が、あたかも見えるようだった。
あたかもというのは、実のところフエの説明していた通り、そこには巨大な門が空中に浮いているだけなのだった。
ケンジは、こういったシュルレアリスム的な光景をどこかで見たことがあると思った。というか、絵だった。たしかルネ・マグリットという人が描いた海の上に巨大な岩が音もなく浮かんでいる、そんな作品をケンジは憶えていたのだ。
脳裏に浮かぶ巨大な岩。白波の立つ海上にピタリと静止したまま、音もなく浮かんでいる。
だいぶ以前に、それもたった一度だけ見ただけだったはずだが、強烈な印象を受けたケンジは、いつまでもあの絵が忘れられないのだった。
ケンジにとっては、ただ単に海の上に浮かぶ巨大な岩という不思議な絵では済まされない何かが、その絵にはあったのであり、その何かにケンジは強く惹かれたのだ。
いま、その不思議な光景が現前しているのを目の当たりにして、ケンジは呆然とするばかりだった。
「さてさて、どうしたものかね」とユタカ。
「あそこまで浮くのはフエちゃの反重力でやってもらうにしても、問題はどうやってゲートを開けるかだな」
「案外、開いてるかもよ?」とフエ。
「てかさ、あれって反重力で吹っ飛ばせないのかな?」
「いやいや、そもそもアレが迷宮への入り口なんやから、アレ吹っ飛ばしたらマズイやろ? 入り口なくなってまうで」
「そうなの? そういう考え方もあるわけだ」と妙に感心してみせるケンジ。
そして、やはりフエの反重力のパワーでユタカたちは中空に浮かぶゲートまで移動すると、すったもんだしながらゲートを開こうとしたが、いっかなゲートは開かないのだった。
「普通、ドアって引っ張って開けるか、押して開けるかだけど、もうひとつ引き戸ってケースもあるよね?」
そう言いながらケンジが試しに横へとスライドしてみると、異様なくらい軽やかにゲートは動き出したが、開き切ると同時に霧のように消えてしまうのだった。
しかし、ユタカたちはそんなことを知るよしもなく、ゲートが開くと同時に亜空間へとあっという間に吸い込まれていった。
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