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ローラ編
シロノワール
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「さてと。何かお話を聞かせてください、長雨のようですし」
ユタカはそうローラに思念を送ったが、ケンジにもむろんフエにもそれははっきりと聞こえた。ユタカのチューニングはバッチリだ。
すると、ローラは目を閉じたままであるけれど、おずおずと話しはじめるのだった。
「そうですね。あの、その前にみなさんお腹空いてませんか?」
ケンジにも、フエにもユタカにもたしかにそう聞こえた。
「マジですか? あの、とっても失礼な発言をお許しくださいね」とフエ。「わたし、というかボクは、フエといいますけれど、ローラさん、その、あの、お腹が空くって?」
「ああ、なるほどね。それはそうですよね、ふつう人形が美味しいもの食べたいなんてことをいうはずもないですものね」
「ということは、つまり?」とフエ。
「彼女は入水自殺したんだよ、つまり、人間だったんだけど、なぜか人形として生まれ変わってきたんだと思う」とユタカ。
「それはそう。そうなんですが、結局死ぬに死ねなかった、ということなのかなぁ。自分でも正直言って今のこの状態がなんなのかよくわからないんですよ」とローラ。
「そうなんですか、それはよかった。よくはわからなくてもゾンビの類いではないと思いますから大丈夫でしょ。わけはわからないけれども、とにかくアナタは自死したのかもしれないけれども滅びることは選択しなかった、人形に転生して生き延びることを望んだ、のではないですかね?」とフエ。
「でもね、厳密にいうと、生きていると言い切ると嘘になるのかもしれないです」
「ん?」
「死に体という感じでしょうか、お相撲でいうアレに近いものがあるのかもしれないですね、半分死んで半分生きている、みたいな」
「ああ。よくはわからないのですが、お相撲は母ちゃんから聞いたことあります。ま、とにかくローラさんは、透き通るように青白く美しいお顔でほらバラ色の頬とかならばね、あれなんですがちよょっと生気がないような、顔色をしてらっしゃいますが、お腹はふつうに空くんですね、了解しました」
「ぶっちゃけ、気分なんですけれどもね。食べなきや食べないでも全然平気なのです、そこらへんが、やはりふつうではなのですし、私の場合、シュークリームだとかプリンだとかプリンアラモードだとか、あるいはマリトッツォとかジャガリコだとかみなさんのように直接食べるわけではないんです」
「わかりました。よくわかりませんが。わかりました。とくかく、食事とか飲み会とか、みんなでワイワイワチャワチャやるのが楽しいんですから、ローラさんが参加してくれるならそれに越したことはないですよ」
「で何を食べたいですか。こんな宇宙の辺部などこの銀河だかわからない、まあ、ふうつに並行世界でしょうけれど」
「実は、思い出してしまったら、急にとっても食べたくなってしまったんですよ」
「はいはい。で、それは?」
「コメダ珈琲のシロノワール」
「コメダ?」
「シロノワール?」
「なんじゃらほい」
「もうマジで絶品なんですから、一度食べたら病みつきになりますよ」
「ふむふむ。ローラさんがそうまでいうんだから、相当美味しいんでしょうね、それはとりあえず想像できるんですけれども、さて困ったな、そんなコメダなんちやらとかいうハイカラなお店はここにやあ、ありませんぜ姉御」とケンジ。
「ケンジ、江戸の人なのかおまえ?」
「てやんでえ、こちとら江戸っ子でい!」
「バカ」
「あ、あああああ。そういう物言いしていいと思っているキミがバカ」
「なんだと」
「まあまあ、そんなことよりどうしましょうかね」
「たしかに、シロノワールがどんなものなのかも全然知らないけれど、そんな美味しそうなものが、たぶん甘い系のやつとは思うんだけれど、ここを抜け出せない限りは、そんなものにはお目にかかれそうにないからなあ」
「でもね、ひとつだけ、試してみたいことがあるんですけれど」とフエ。
「なにさ?」
「ほら、ボクは一度もユタカの能力である共同幻想を見せるというのを体験したことがないんですけれど、どうかな、それ使ってコメダなんちゃらに行くって?」
「はいはい。なるほどね、って無理だよ。そもそも俺はコメダなんちゃら知らへんねから」
「そこなんですよ。そこをですね、ローラさんに手助けしていただくということなんですが」
「え。つまり、ローラの頭の中のコメダの情報を抽出して、俺が瞬時に映像化して共同幻想を見させるってことか」
「そうなんですが、頭の中を覗けるかという点がネックだと思います」
「その間、ローラに強くそのお店とかシロノワールを思い浮かべてもらっていさえすればなんとかなると思う、やったことはないけれど」
「じゃや、ダメもとでとにかく物は試しだで、やってみましょう」
ケンジは、面白がりそうなものだったが、意外にもちょっと怪訝なそうな表情を浮かべていた。
「なんやねん、ケンジ、なんか心配事でもあるんかい」
「いや、ユタカのこと信用してるけれど、その共同幻想とかいうのマジで大丈夫なわけ?」
「とは?」
「いや。ユタカが魔法使いとかならまだ百歩譲って肯定するんだけれど、共同幻想って結局、共同幻想を見せるやつらの脳になんか刺激を与えるってことなんじゃないの?」
「それな!さっきの電話の話みたいに、俺にも仕組みはわからんのよ」
「能天気だからな、ユタカは」
「あ、褒められてる?」
「褒めてないから」
ユタカはそうローラに思念を送ったが、ケンジにもむろんフエにもそれははっきりと聞こえた。ユタカのチューニングはバッチリだ。
すると、ローラは目を閉じたままであるけれど、おずおずと話しはじめるのだった。
「そうですね。あの、その前にみなさんお腹空いてませんか?」
ケンジにも、フエにもユタカにもたしかにそう聞こえた。
「マジですか? あの、とっても失礼な発言をお許しくださいね」とフエ。「わたし、というかボクは、フエといいますけれど、ローラさん、その、あの、お腹が空くって?」
「ああ、なるほどね。それはそうですよね、ふつう人形が美味しいもの食べたいなんてことをいうはずもないですものね」
「ということは、つまり?」とフエ。
「彼女は入水自殺したんだよ、つまり、人間だったんだけど、なぜか人形として生まれ変わってきたんだと思う」とユタカ。
「それはそう。そうなんですが、結局死ぬに死ねなかった、ということなのかなぁ。自分でも正直言って今のこの状態がなんなのかよくわからないんですよ」とローラ。
「そうなんですか、それはよかった。よくはわからなくてもゾンビの類いではないと思いますから大丈夫でしょ。わけはわからないけれども、とにかくアナタは自死したのかもしれないけれども滅びることは選択しなかった、人形に転生して生き延びることを望んだ、のではないですかね?」とフエ。
「でもね、厳密にいうと、生きていると言い切ると嘘になるのかもしれないです」
「ん?」
「死に体という感じでしょうか、お相撲でいうアレに近いものがあるのかもしれないですね、半分死んで半分生きている、みたいな」
「ああ。よくはわからないのですが、お相撲は母ちゃんから聞いたことあります。ま、とにかくローラさんは、透き通るように青白く美しいお顔でほらバラ色の頬とかならばね、あれなんですがちよょっと生気がないような、顔色をしてらっしゃいますが、お腹はふつうに空くんですね、了解しました」
「ぶっちゃけ、気分なんですけれどもね。食べなきや食べないでも全然平気なのです、そこらへんが、やはりふつうではなのですし、私の場合、シュークリームだとかプリンだとかプリンアラモードだとか、あるいはマリトッツォとかジャガリコだとかみなさんのように直接食べるわけではないんです」
「わかりました。よくわかりませんが。わかりました。とくかく、食事とか飲み会とか、みんなでワイワイワチャワチャやるのが楽しいんですから、ローラさんが参加してくれるならそれに越したことはないですよ」
「で何を食べたいですか。こんな宇宙の辺部などこの銀河だかわからない、まあ、ふうつに並行世界でしょうけれど」
「実は、思い出してしまったら、急にとっても食べたくなってしまったんですよ」
「はいはい。で、それは?」
「コメダ珈琲のシロノワール」
「コメダ?」
「シロノワール?」
「なんじゃらほい」
「もうマジで絶品なんですから、一度食べたら病みつきになりますよ」
「ふむふむ。ローラさんがそうまでいうんだから、相当美味しいんでしょうね、それはとりあえず想像できるんですけれども、さて困ったな、そんなコメダなんちやらとかいうハイカラなお店はここにやあ、ありませんぜ姉御」とケンジ。
「ケンジ、江戸の人なのかおまえ?」
「てやんでえ、こちとら江戸っ子でい!」
「バカ」
「あ、あああああ。そういう物言いしていいと思っているキミがバカ」
「なんだと」
「まあまあ、そんなことよりどうしましょうかね」
「たしかに、シロノワールがどんなものなのかも全然知らないけれど、そんな美味しそうなものが、たぶん甘い系のやつとは思うんだけれど、ここを抜け出せない限りは、そんなものにはお目にかかれそうにないからなあ」
「でもね、ひとつだけ、試してみたいことがあるんですけれど」とフエ。
「なにさ?」
「ほら、ボクは一度もユタカの能力である共同幻想を見せるというのを体験したことがないんですけれど、どうかな、それ使ってコメダなんちゃらに行くって?」
「はいはい。なるほどね、って無理だよ。そもそも俺はコメダなんちゃら知らへんねから」
「そこなんですよ。そこをですね、ローラさんに手助けしていただくということなんですが」
「え。つまり、ローラの頭の中のコメダの情報を抽出して、俺が瞬時に映像化して共同幻想を見させるってことか」
「そうなんですが、頭の中を覗けるかという点がネックだと思います」
「その間、ローラに強くそのお店とかシロノワールを思い浮かべてもらっていさえすればなんとかなると思う、やったことはないけれど」
「じゃや、ダメもとでとにかく物は試しだで、やってみましょう」
ケンジは、面白がりそうなものだったが、意外にもちょっと怪訝なそうな表情を浮かべていた。
「なんやねん、ケンジ、なんか心配事でもあるんかい」
「いや、ユタカのこと信用してるけれど、その共同幻想とかいうのマジで大丈夫なわけ?」
「とは?」
「いや。ユタカが魔法使いとかならまだ百歩譲って肯定するんだけれど、共同幻想って結局、共同幻想を見せるやつらの脳になんか刺激を与えるってことなんじゃないの?」
「それな!さっきの電話の話みたいに、俺にも仕組みはわからんのよ」
「能天気だからな、ユタカは」
「あ、褒められてる?」
「褒めてないから」
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