パサディナ空港で

トリヤマケイ

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#191 出会いカフェ+

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 池袋の出会いカフェに行ってみることにした。



 それは、35度なんてまだまだ涼しいと思えるほどの、40度を軽く超えた酷暑日のことだった。
 
 
 


 そんなカフェがあるとはまったく知らなかったし、いわゆるそんな風俗に行ったこともなかったが、エロい雑誌でたまたまそのお店の紹介記事があり、なんか面白そうだと興味をそそられたのだった。






 ざっくりと説明すると入会金が2000円くらい、入場料も2000円ほどで、あとは広い全面マジックミラーの店内で何をしていようが構わないらしい。
 
 
 

 とりあえず、夜勤明けでフリーなのでさっそくお店にいくことにした。
 
 
 
 
 

 店内に入ってみると、7.8人のおじさんたちが、そこらへんのソファに座ってスマホやラップトップを眺めている。
 
 
 

 
 
 薄暗い店内は、静かだし、とにかく涼むには最適で、いったん座ってしまったら絶対に居眠りしてしまうだろうなとオレは思った。 
 
 
 
 
 
 
 みなさん、新規のお嬢さん待ちなのだろうか、システムとしては、マジックミラー越しに気に入った彼女を見つけたならば、トークルームで10分間くらい話しをして、交渉成立したならば、連れ出し料金2000円ほどで店外にて交渉をもてる流れだ。
 
 
 
 
 
 

 このご時世なので、接客商売は依然マスク着用が当たり前なので、トークルームでマスクをちょいずらしてもらい確認するのを忘れるヤツはまずいないだろうが、まあ、マスク美人ならばマスク美人のままでというのもありなのかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 

 通常のお店とちがい、出勤時間などあってないようなものだろうし、本当にど短期のワンショットでやる子の方がかなりいて、突然上玉が来るケースもなきにしもあらずなので、おじ様たちはその女神様降臨の奇跡を静かに待つのだった。







 なので、結構ねばる人もいてチャンスを逃さないように寿司やオニギリ、カップラーメン、あるいは弁当を持参して食べているおっちゃんもいる。







 斯くいうオレは、つい最近まで、いわゆる地下アイドルにハマっていて、推しメンも複数いたのだが、バカらしくなってやめてしまった、来年の秋くらいには推しメンのひとりが素敵なイケメンに嫁ぐらしい。








 しかし、推しメンがいきなり卒業発表したのには腰を抜かした。グループの公式サイトにアップされた長文の「卒業のご報告」には、自分の未来に真摯に向き合って愚考してみるに、もうそこにはアイドルとしての自分の姿を描くことは出来ないとして、これからはアイドルを目指す若い人たちの育成に注力したい、とのことで、業界を去るのではなく裏方として支えていきたい、という主旨の卒業発表だった。
 
 
 
 
 
 
 
 しかし、ゲスな勘繰りかもしれないが、実際にはイケメンのヲタクとの結婚が決まって、卒業の時期を調整したのではないだろうか。
 
     
     
     
     
     
     
     
 
 まあ、近ごろはビッグネームのカップルがバンバン結婚を発表するのも当たり前のご時世みたいなので、
 
 
 
 
 
 
 
 「ブルータス、お前もか!」
 
 
 
 
 
 
 という感じだが、別に推しメンとマジで結婚できるとは思っていなかったけれど、裏切られたようでかなり凹んだ、ていうかマジで死にたくなった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 そんな経緯もあり、とにかくオレは新しい出会いに飢えていた。
 
 
 
 
 
 
 
 その出会いが金銭のやり取りのみで成り立っていようが一向に構わない、幻想である触れることの叶わない清楚な恋人よりも、いまは生身の女性の肉体に溺れたかった。
 
 
 
 
 
 
 


 薄暗い殺風景な店内で、マジックミラー越しの顔見せの際にスタイルはバッチリわかるけれども、マスクを外さないままの子は多い。
 
 
 
 
 
 
 

 たまにマスクなしでモデルと見紛うほどの飛び切り綺麗な子がいたりするが、間違いなくそういう自信たっぷりな子は、整形女子だろう。
 
 
 
 
 
 

 女性の方は本当に割り切って稼ぎに来ているわけなので、マジに風呂キャンセル界隈の住人で不潔でそばにいるだけで臭うとか、人類ではないとか以外ならば、全然容姿は気にしない。
 
 
 
 
 

 愛する対象である推しメンを失ってしまったオレは、目的意識もないまま、とりあえず出会いカフェに毎日のように来てしまうのだった。






 そんなある日、薄暗い店内の片隅に置かれてあったぬいぐるみ、というか人形がやけに気になったことがあった。
 
 
 
 
 
 
 こんなところに人形なんかあったっけか? 
 
 
 
 
 
 
 
 オレの何気ない視線は人形の上を素通りしてしまわずに、吸い寄せられるようにして、いつの間にか人形を注視していたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 それは、いわゆるブライス人形と呼ばれているやつに似ているとオレは思った、くりくりとした大きな眸が印象的なかわいい人形だ。
 





 人形などに興味のないオレが、なぜまたその、もの言わぬ人形に興味を覚えたのかまったくわからないが、とにかく一瞥して、かわいいと思ったことは確かだった。
 
 
 
 
 
 
 
 まあ、しかし
 
 
  
  
  
  
  
 人形はどこまでいっても人形であって、それ以上でもそれ以下でもない。
 
 
 
 
 
 
 
 オレは、人形を手に取ることもなく、いつのまにか興味を失ってYouTubeで音楽を聴きはじめた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 店内には、当たり前だがラップトップも設置され、wifiが使えるのはありがたい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 そして、オレは音楽をAirPodsではなく、イヤホンで聴きながらいつの間にやら、居眠りしていたらしい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 やがて、その声が聞こえてきたのだった。
 
 
 
 
 

 最初はわからなかった。
 
 
 
 
 
 
 たまたま、その時アレアというバンドのイントロで女性が長いこと呟くという楽曲を聴いていたこともあって、全然違和感を覚えず、おかしいとは思わなかった。
 
 
 



 しかし、さすがにポエトリーリーディングみたいな曲ばかりを聴いているわけではないので、だんだん薄気味悪くなっていった。
 
 
 
 
 
 
 
 それは、外耳を通して聞こえてくるのではなく、直接脳内にアクセスしてくるようなのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 どうやらその声の持ち主は、女性らしい。
 
 
 
 
 
 
 とは言っても男性と女性の声は、1オクターブほどの音程の差しかないのだし、ヴォイスチェンジャーといったものを使えば、容易に声のピッチや声質を可変できるのだから、女性になりすましている可能性も否めない。
 
 
 
 
 
 
 
 とにかくオレは、誰かと話がしたいらしい、この出会いカフェに通っているのも正直言ってH目的のみではないのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 ただのヤリモクならば、出会い系のほうが素人女性とコスパ良くエッチできるというのはあるだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 推しメンの存在が大きかったことが、ここに通いはじめて痛いくらいにわかるのだった、ヤリ目的で出会った女性とは会話はない。
 
 
 
 
 
 
 
 そして、いつしかオレは、掃き溜めに鶴のような、いつ降臨するかわからない女神様を待ちわびるよりも、その人形との会話が楽しみになっていった。
 
 
 
 
 
 
 その声の主は、やはりブライス人形だったのだ。
 
 
 
 
 
 
 彼女は、オレの脳に直接語りかけているから、他の人には一切聞こえないといった。
 
 
 
 
 
 
 
 それから、店内にいる間はずっと会話するようになった。
 







 彼女は、ナナですと自己紹介してくれたが、わたしの声が聞こえるなんて、オカシイ人と言われてしまった。






 ある日、彼女から怪しまれるからたまには女の子連れ出したらと、たしなめられた。
 
 
 
 
 
 
 オレはそれもそうだと思い、時々は、茶飯系の女子を誘って、食事なんかをした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 例えば
 
 




 トークルームで手1万口2万本番3万と言われる。そういうのじゃなくて、ご飯奢るから、あとカラオケとか? ボーリングとか?








 それでいいんなら全然いいですよ、ただしお小遣いはほしいかな?








 ということで、お小遣い1万円で交渉は成立。
 
 
 
 
 
 
 そんな感じだった。
 
 
 
 
 
 
 

 先日は、ミサキという彼女のカードを受け付けに持っていって、連れ出し料を支払った。
 
 
 
 
 
 

 ミサキちゃんが出て来たので、連れ立って出かけた。
 
 
 
 
 
 
 
 その時、ちらっとナナの姿は見えないけれど、ナナのいる方をうかがうと、はっきりと「いってらっしゃい」というナナの声が脳内に響いた。
 
 
 





 そんなこんなで半年くらい経っただろうか、ある日、ナナが意外なことを言い出した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 もうこんなところに来てはダメというのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 真面目な人なんだから、こんなところに出会いを求めちゃダメということらしい。
 
 



 それに対して無視していると、やがて、話しかけてもナナが言葉を返してくれなくなった。
 

 
 
 
 
 それでもオレは諦めきれず、通い続けた。
 
 
 





 だがある日、片隅に置いてあったナナが、いなくなるというオレにとっては衝撃的なことが起こった。
 
 
 
 
 
 
 

 スタッフに何気なく訊ねてみると、掃除した際に撤去したとのことで、しかしまだ廃棄はしてないということだったので、良ければ売ってくれないかと持ちかけてみた。
 
 
 
 



「常連さんなんだし、こんなもので良ければ差し上げますよ」
 
 
 
 
 
 
 そう言ってくれた。
 
 
 
 
 
 
 

 そういうわけで、奇しくもオレはナナを家に持ち帰ることになったのだった。
 
 
 
 
 
 

 いよいよ、ナナと水入らずの生活がはじまると思うとオレはうれしくてたまらなかった。
 
 
 




 移動中もオレを試しているのか無言のままだったナナは、オレの部屋に入るとやっと話しはじめた。
 
 
 






「はじめに言っておくけれど、人形がしゃべるわけないんだから、出かける時は人形は置いていってね」







「どういうこと?」
 
 
 
 
 
 
 

「だから、まあ、理屈はどうだっていいのよ、気にしないで。ただ対象がないとヒトってなかなか話しづらいでしょ、なので人形でもぬいぐるみでもYogiboでもなんでもいいのよね、対象、ただ対象物があればとりあえずは話しやすいだろうというだけの話なの」









「え~、そういことなの? じゃあその、君の実体は?」








「まあ、それはおいおいね、てか、あなたほんとうに人形がしゃべってるとでも思っていたの?」









「うーん。まあ、なんというか」


     
     
     




「とにかくね、外に出かけたりする場合には、人形は置いといて、あなた、頭がオカシイと思われたくないでしょ?」


 





「あー、わかった」








「でね、あとひとつ確認しておきたいことがあるんだけれど、訊いてもいいかな?」








「もちろんだよ。お互いのことまだまだ全然知らないんだから」








「そうよね。私はあなたがどんな人間であろうとも、添い遂げたいと思っています、例えば女衒みたいなお仕事をしていて芸能人やら政治家に女性をアテンドしているとか、過去に高利貸しのイジワルな婆さんを殺したことがあるとか、全然構わない、私には、実体がないのだから見栄も外聞も一切関係ないし、あなたの過去にも興味ない。
 
 
 
 

 でもその一方で、私が気になるのは、あなたはほんとうに人形の私をずっと愛し続けてくれるのかしら?   いま仮に人形といったけれど、実際はそうではないわけだし、そりゃ、いまはいいわよ。こうして四六時中思念だけで会話出来ることが楽しくて仕方ないだろうし。
 
 
 

 つまりね、私が一番気にしていることは、やっぱり飽きられて捨てられることなの。ずばり訊くけれどもあなたもしかして結婚願望、強かったりするの?」








「いや、どうなんだろう。今まで彼女いなかったし、結婚を具体的に考えたことはなかったかな」
 
 
 
 
 
 
 
 
「結局、そこら辺がネックになると思うのよね」








 
 だからオレは、彼女に2次元ならともかく絶対にヒトである女性になんかには恋したりしないと、即座に誓った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 むろん、オレは一年後に人間の女性との運命的な出会いに遭遇することなどまったく知らないのだから、誠心誠意心の底からキミを愛し、一生離さないとナナに誓ったのだった。
 
 
 
 
 




 だが、運命的な出逢いはどうすることも出来なかった、すでに新しい恋人に出会うまでのカウントダウンは始まっていたのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 そしてオレは、ある日、奈美という超絶かわいいコに出会い、恋に堕ちてしまったのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 俺は好きだという自分の気持ちを偽ることは出来なかったし、徐々に大きくなっていく奈美へのその感情を押しとどめることは不可能だった。
 
 
 
 
 
 
 


 そして、不思議なことに、その頃からナナの声が徐々に小さくなっていき、やがてはまったく聞こえなくなってしまったのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 だが、俺は新しい恋に巡り会えた喜びに、彼女の声が聞こえなくなってしまったことなどまったく気にもならなかった。

 
 
 
 
 
 
 やがて、奈美と俺は結婚することになった。
 
 
 
 
 

 出会いカフェで不思議な体験をしてから、早いもので三年の月日が流れていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 あの脳内彼女みたいな存在は、彼女いない歴=年齢の自分の自己防衛本能が働いて生み出しキャラだったのだと、今にしてみればわかるのだった。
 
 
 
 
 
 
 

 ハネムーンは、プロヴァンスに一度は行ってみたかったので南仏にしようと考えていたが、奈美が、どうしてもサントリーニ島に行きたいというので、結局俺が折れて、サントリーニ2泊、アテネ6日間の旅にした。
 



 
 
 エーゲ海を見下ろす白い、別荘のようなアンドロニスラグジュアリースイーツの初夜のベッドで、めくるめく快楽の渦に飲み込まれ、彼女の体内に生命を迸らせると、オレはそのまま泥のように眠ってしまったようだった。
 
 
 
 





 
 身も心も蕩け、一切の不安やシガラミから解放された、それは恐ろしいほど深い眠りだった。
 
 
 
 
  

 
 

 未だに醒めやらぬ痺れるような甘い快感と眠気に雲の上をたゆたうように彷徨っていると、どこからか声が聞こえてきた。
 
 
 
 
 
  
  
  

 奈美はぐっすり横で眠っているし、そもそも奈美の声ではない。
 
 
 
 
 





 周りを窺ってもむろん、部屋には自分たちふたりだけだ。
 
 
 
 
 
 
 
 

 しかし、声は徐々に明晰に聞こえてくる、そう脳内でそれは響いているのだ。
 
 
 
 
 
 
 

「お久しぶりね。すごくよかったわ。男の人に抱かれたなんて何十年ぶりかしら。いや、何百年かな?」








「その声は、まさか!」










「あら、憶えていてくれたみたいね」










「じゃあなに、きみはオレの想像した脳内彼女じゃなかったの?」









「ピンポーン」








「でも、どうして?  急にきみの声が聞こえてこなくなったから、てっきり」






 

「あら、ずっと私はあなたにいつも通り話しかけていたわよ、ただあなたは、現実のこの彼女に夢中になって訊く耳持たなかっただけ」
 
 
  
  
  
  
  

「そうなんだ、でも」
 
 
 
 
 
 

「なんでまたこんな時に、でしょ?   これでも、結構大変だったのよ、実は、私この彼女の精神を乗っ取ったわけじゃないけれど、とりあえずマウント取ったわ
 
 
 
 
 
 
 
 
 でも、それではあまりにも可哀想だし、半々ということで、話がついたの、あなたは、つまりふたりの女を同時に愛せるのよ、男冥利につきるでしょ?  これからもせいぜい私たちを悦ばせてちょうだい」









 微睡みの中でそんな夢を見た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 まさかなと思った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ふらふらと立ち上がりエーゲ海を眺めた、夜明け前の紫の海は穏やかだった。
 
 
 
 
 





 窓を開ければ潮騒が聞こえてくるだろうが、ホテルの部屋の中はかすかな空調の音しか聞こえない。
 
 
 
 
 

 それでも俺は、窓辺に近寄り潮騒が聞こえてこないか、耳を澄ました。
 
 
 
 
 

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