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ばか。
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「なあ、桜」
いつも私をからかってくる幼馴染。その彼が、私を呼ぶ。振り向くと、そこには頭がカラーコーンの男が。
うぎゃぁあああ!!
これは春と桜の物語。
その声は教室を超えて廊下にまで響いた。
「バカやめてよ!びっくりしたじゃん!めっちゃ恥ずかしいんだけど!」
春はあっはっはと気の抜けたような笑いを出して、何してんの?と桜に聞いた。
「はぁ・・・・・宿題」
すると春は「え、いつも学年5位には入ってる桜が宿題?なんでそんな優等生が宿題を提出日の朝にやってるの?」と、なんかムカつく顔しながら言ってきた。
あんたの方が成績上でしょ。
「うるさいなぁ」
いつもの朝、いつもの景色、いつもの教室。
今、この教室には誰もいない。
今日宿題を忘れたのは彼と話すきっかけをつくるため。
きっとこんなやり方じゃなきゃ告白なんてできない。
春とは昔からいつも一緒にいてとても仲が良かった。恋愛とかそういうのとは全く関係が無かったけど。
小学生の頃まではそれで良かった。楽しかったから。
きっとあのときからだ、この気持ちが生まれたのは。
いつまでもこの関係から抜け出せなきゃ次のステップへはいけないと思い、今日に至る。
カーテンが風になびいたのと同時に、桜はだんっと机を叩いて席を立ち、持っているペンを置いて彼の名を呼んだ。
「春!!!」
ん?とやっぱり気の抜けた声で反応した彼。
断られたら。拒絶されたら。そんな心の弱い私が私に言う。このたった2文字を伝えることがどれだけ難しいかを私は今ようやく知った。足が震える。伝えようとすると喉から声が出ない。今にも逃げ出してしまいたい。1秒1秒その一瞬がとてつもなく長く感じた。
下唇を噛み、精一杯の思いを全部この言葉に込めて、言える、言え、と自分を鼓舞する。
「好き」
10分にも思えたそのわずか1分、春はじっと私の言葉を待ってくれた。私が何か大事なことを言いたそうにしているのを察したんだろう。
春の顔を見るのが怖くて、なかなか振り返ることが出来ない。どんな顔をしてるんだろう。どんな事を思って、どんな返事をしてくるだろう。分からないし、聞きたくない。桜は既成事実を作ろうとしたのか、それとも頭が恋愛脳なのか、どちらにせよパニックだったのは間違いないが、なぜか春にキスをしようとしていた。
そして顔を見ないように力いっぱい目を瞑って、振り返ってキスをした。が。
い痛っ・・・・あれ?
春の顔は、カラーコーンであった。
「なんでカラーコーンなの!?なんでまだ外してないの!?!?」
「だって外す描写なかったじゃん」
「そんな描写いるかぁ!!」
青春を謳歌する高校生2人のむず痒い空気から一変し、いつもの2人へと戻った。
「やっぱり桜といると楽しいなぁ」
「もう・・・」
その表情をみて、なんか濁されたけど、まぁいっかと思った。
「俺も好きだ」
「え・・・?」
一瞬、戸惑った。
でもその言葉を理解するのに時間はいらなかった。その返事は期待していなかった言葉で、でも少しだけ期待していた、その言葉だった。
「おいおい、顔グシャグシャだぞ?」
春もでしょ!いつもならそんな言葉で返していただろう。でも今はそんな気分じゃなかったから。
「ばか」
それだけ、
桜は言った。
いつも私をからかってくる幼馴染。その彼が、私を呼ぶ。振り向くと、そこには頭がカラーコーンの男が。
うぎゃぁあああ!!
これは春と桜の物語。
その声は教室を超えて廊下にまで響いた。
「バカやめてよ!びっくりしたじゃん!めっちゃ恥ずかしいんだけど!」
春はあっはっはと気の抜けたような笑いを出して、何してんの?と桜に聞いた。
「はぁ・・・・・宿題」
すると春は「え、いつも学年5位には入ってる桜が宿題?なんでそんな優等生が宿題を提出日の朝にやってるの?」と、なんかムカつく顔しながら言ってきた。
あんたの方が成績上でしょ。
「うるさいなぁ」
いつもの朝、いつもの景色、いつもの教室。
今、この教室には誰もいない。
今日宿題を忘れたのは彼と話すきっかけをつくるため。
きっとこんなやり方じゃなきゃ告白なんてできない。
春とは昔からいつも一緒にいてとても仲が良かった。恋愛とかそういうのとは全く関係が無かったけど。
小学生の頃まではそれで良かった。楽しかったから。
きっとあのときからだ、この気持ちが生まれたのは。
いつまでもこの関係から抜け出せなきゃ次のステップへはいけないと思い、今日に至る。
カーテンが風になびいたのと同時に、桜はだんっと机を叩いて席を立ち、持っているペンを置いて彼の名を呼んだ。
「春!!!」
ん?とやっぱり気の抜けた声で反応した彼。
断られたら。拒絶されたら。そんな心の弱い私が私に言う。このたった2文字を伝えることがどれだけ難しいかを私は今ようやく知った。足が震える。伝えようとすると喉から声が出ない。今にも逃げ出してしまいたい。1秒1秒その一瞬がとてつもなく長く感じた。
下唇を噛み、精一杯の思いを全部この言葉に込めて、言える、言え、と自分を鼓舞する。
「好き」
10分にも思えたそのわずか1分、春はじっと私の言葉を待ってくれた。私が何か大事なことを言いたそうにしているのを察したんだろう。
春の顔を見るのが怖くて、なかなか振り返ることが出来ない。どんな顔をしてるんだろう。どんな事を思って、どんな返事をしてくるだろう。分からないし、聞きたくない。桜は既成事実を作ろうとしたのか、それとも頭が恋愛脳なのか、どちらにせよパニックだったのは間違いないが、なぜか春にキスをしようとしていた。
そして顔を見ないように力いっぱい目を瞑って、振り返ってキスをした。が。
い痛っ・・・・あれ?
春の顔は、カラーコーンであった。
「なんでカラーコーンなの!?なんでまだ外してないの!?!?」
「だって外す描写なかったじゃん」
「そんな描写いるかぁ!!」
青春を謳歌する高校生2人のむず痒い空気から一変し、いつもの2人へと戻った。
「やっぱり桜といると楽しいなぁ」
「もう・・・」
その表情をみて、なんか濁されたけど、まぁいっかと思った。
「俺も好きだ」
「え・・・?」
一瞬、戸惑った。
でもその言葉を理解するのに時間はいらなかった。その返事は期待していなかった言葉で、でも少しだけ期待していた、その言葉だった。
「おいおい、顔グシャグシャだぞ?」
春もでしょ!いつもならそんな言葉で返していただろう。でも今はそんな気分じゃなかったから。
「ばか」
それだけ、
桜は言った。
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