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第1話
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☆☆☆
何気なく、変わらない日常
変わりなく移ろう季節
高校2年生となった変わらない春の日
私が彼女と出会った瞬間
毎日が、かけがえのない物になった
☆☆☆
四月とは。
新しい生活が始まる節目の月である。
三月まで新米だったサラリーマンが新入社員を迎え先輩になるように、学生は一つ学年が上がり内心ソワソワとしつつ通学路につく。
そして始まる、喜び悲しみといった感情の渦が巻き起こるそれによって一年の学校生活が大きく変わるとも言われる学生の一大イベント。
クラス替えである。
この虹ヶ岳学園も例外ではなく、昇降口は多くの生徒で賑わっていた。
「あぁあ…」
高度成長期も終わり技術が格段に進歩した今も昔から変わらない、張り出される方式の新クラス表。ぴょこぴょことジャンプをしながら見ていた幼馴染が、みるからにしぼんでしょんぼりとしながら落胆の声を上げる。
人の波から少し離れて見ていてなんとなく結果を察し、そっとため息を一つ。
「クラス、離れてた。…えみりぃ」
「よしよし、泣かない泣かない」
こっちへ戻ってきて話しながら、水色の目に涙を浮かべ始める幼馴染ー雪奈かんな。
いつも通り、高校2年生というにはすこし低い位置にある頭を撫でる。
これで幼稚園から始まった違うクラス記録は14年に更新された。なんとなく察してはいたが、つくづくこの子とは同じクラスになれないらしい。
新クラス発表後にこうするのは最早恒例だった。
するんと指通りの良い銀髪を撫でながら自分でもクラスを確認。
私がB組で、かんながC組。
「じゃあ、また後でね。かんな」
「ん。あとで」
ひとしきり撫でてかんなが落ち着いたあと、それぞれの教室に移動するために廊下で別れる。
「やったエミリと一緒だ!」
「合唱祭は勝ったな」
「かんなとは案の定?」
教室に入ると、新しいクラスメイトから声をかけられる。
ざっと教室を見て、大抵の人とは面識があることを確認して安心する。
各々に返事をしながら席についた。
苗字が有栖川な私はいつも通り出席番号一番で、一番廊下側の列の一番前の席だった。
「あれ。ねぇゆい、ここって誰かいるの?」
「そうなんだよね。クラス表ではエミリの次ゆいだったんだけど」
横を向いて気付く、誰も座っていない隣の席。一つ飛ばした席に、掲示されていたクラス表では私の下に名前があったゆいが座っていた。
その謎が解明されないまま担任となる先生が入ってきたため、考えを打ち切り前を向く。
「ーーーということで、一年間よろしくお願いします」
いつも通りで典型的な先生の挨拶が終わる。このあと何をしようかと考えていたが、そこで終わりじゃなかった。
「それでは早速ですが、新しく仲間になる編入生を紹介します。入って下さい!」
扉に一番近い席の私は、入ってきた彼女を一番早く見ることが出来た。
歩いて行った先で電子チョークを左手に取り、手早く名前を書く。振り向いた時に髪がふわっとなびき、綺麗だと思った。
「では軽く自己紹介お願いします」
「荊姫宝です。姫に宝と書いてひめほと読みます」
腰までかかる光を反射する綺麗な黒髪に、珍しい緑色の目。
綺麗だと感じたのに、新しい仲間にときめくはずなのに。
笑って
私が抱いたのは、ただそれだけの想いだった。
なぜかは分からない。
彼女の表情がどこか暗く限りなく無に近かったせいかも知れない。
心の底から笑ってほしいと思ったのは初めてだったからなのかも知れない。
自分の鼓動を喉元に感じる。
その瞬間、世界に色が弾けた。
より鮮やかに。より鮮明に。
始まる一年。
いつもと違う始まり。
今この感情に名前をつけるとしたら。
一目惚れだった。
何気なく、変わらない日常
変わりなく移ろう季節
高校2年生となった変わらない春の日
私が彼女と出会った瞬間
毎日が、かけがえのない物になった
☆☆☆
四月とは。
新しい生活が始まる節目の月である。
三月まで新米だったサラリーマンが新入社員を迎え先輩になるように、学生は一つ学年が上がり内心ソワソワとしつつ通学路につく。
そして始まる、喜び悲しみといった感情の渦が巻き起こるそれによって一年の学校生活が大きく変わるとも言われる学生の一大イベント。
クラス替えである。
この虹ヶ岳学園も例外ではなく、昇降口は多くの生徒で賑わっていた。
「あぁあ…」
高度成長期も終わり技術が格段に進歩した今も昔から変わらない、張り出される方式の新クラス表。ぴょこぴょことジャンプをしながら見ていた幼馴染が、みるからにしぼんでしょんぼりとしながら落胆の声を上げる。
人の波から少し離れて見ていてなんとなく結果を察し、そっとため息を一つ。
「クラス、離れてた。…えみりぃ」
「よしよし、泣かない泣かない」
こっちへ戻ってきて話しながら、水色の目に涙を浮かべ始める幼馴染ー雪奈かんな。
いつも通り、高校2年生というにはすこし低い位置にある頭を撫でる。
これで幼稚園から始まった違うクラス記録は14年に更新された。なんとなく察してはいたが、つくづくこの子とは同じクラスになれないらしい。
新クラス発表後にこうするのは最早恒例だった。
するんと指通りの良い銀髪を撫でながら自分でもクラスを確認。
私がB組で、かんながC組。
「じゃあ、また後でね。かんな」
「ん。あとで」
ひとしきり撫でてかんなが落ち着いたあと、それぞれの教室に移動するために廊下で別れる。
「やったエミリと一緒だ!」
「合唱祭は勝ったな」
「かんなとは案の定?」
教室に入ると、新しいクラスメイトから声をかけられる。
ざっと教室を見て、大抵の人とは面識があることを確認して安心する。
各々に返事をしながら席についた。
苗字が有栖川な私はいつも通り出席番号一番で、一番廊下側の列の一番前の席だった。
「あれ。ねぇゆい、ここって誰かいるの?」
「そうなんだよね。クラス表ではエミリの次ゆいだったんだけど」
横を向いて気付く、誰も座っていない隣の席。一つ飛ばした席に、掲示されていたクラス表では私の下に名前があったゆいが座っていた。
その謎が解明されないまま担任となる先生が入ってきたため、考えを打ち切り前を向く。
「ーーーということで、一年間よろしくお願いします」
いつも通りで典型的な先生の挨拶が終わる。このあと何をしようかと考えていたが、そこで終わりじゃなかった。
「それでは早速ですが、新しく仲間になる編入生を紹介します。入って下さい!」
扉に一番近い席の私は、入ってきた彼女を一番早く見ることが出来た。
歩いて行った先で電子チョークを左手に取り、手早く名前を書く。振り向いた時に髪がふわっとなびき、綺麗だと思った。
「では軽く自己紹介お願いします」
「荊姫宝です。姫に宝と書いてひめほと読みます」
腰までかかる光を反射する綺麗な黒髪に、珍しい緑色の目。
綺麗だと感じたのに、新しい仲間にときめくはずなのに。
笑って
私が抱いたのは、ただそれだけの想いだった。
なぜかは分からない。
彼女の表情がどこか暗く限りなく無に近かったせいかも知れない。
心の底から笑ってほしいと思ったのは初めてだったからなのかも知れない。
自分の鼓動を喉元に感じる。
その瞬間、世界に色が弾けた。
より鮮やかに。より鮮明に。
始まる一年。
いつもと違う始まり。
今この感情に名前をつけるとしたら。
一目惚れだった。
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