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第二章 秘められた悪意
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「日記がない? そんな事あるわけないだろ!」
エフェルローンは、鑑識官を頭ごなしに怒鳴りつけた。
――翌朝。
エフェルローンとルイーズは、王宮内の一角にある憲兵庁内の証拠品保管室に来ていた。
だが――。
「本当です! 我々が受け取った証拠品の中に、日記らしき物はありませんでした。本当です、信じて下さい!」
必死の形相でそう説明する青年鑑識官をエフェルローンは信じるどころか、更に問い詰めるとこう言った。
「お前が盗んだんじゃないだろうな?」
「そ、そんな……」
そう言って狼狽する年若い鑑識官を哀れに思ったのだろう、ルイーズが止めに入ろうと口を開きかけたそのとき。
「彼には日記を盗む動機はありませんよ。ちなみに僕もですけど」
細身で長身の男が、そう言って証拠品のリストをエフェルローンに差し出した。
「証拠品を受け取ったのは、僕です。そのとき、日記らしき物は何処にもありませんでした。本当です。だから、どうか彼を責めないで下さい」
そう青年鑑識官を見事にフォローすると、長身痩躯の黒髪碧眼の男はエフェルローンに向かい、深く頭を下げた。
長身痩躯で、黒髪碧眼の男―—。
「ひょっとして、お前……」
軽く目を見張り、エフェルローンは驚いた表情をする。
そんなエフェルローンに、長身痩躯の青年は軽く笑みを浮かべながらこう言った。
「お久し振りです、クェンビー先輩。ダニーです、ダニー・ガスリーです。何年振りでしょうか?」
ダニー・ガスリー――四年前、禁忌魔法事件で共に捜査に臨んだ新人魔術師。
(確か、今は図書館の司書をしてるんじゃ……)
そんな事を考えていると、ダニーが苦笑しながらこう言った。
「何でこんなところに……って、そんな顔してますね」
「だってお前、確か……」
そう言って言葉を詰まらせるエフェルローンに、ダニーはばつが悪そうにこう言った。
「はい、ついこの間までは大学の図書館で司書をしていました。ですが最近、移動願いを出しまして。そして、一週間ほど前からここで勤務を。あまり人気のない仕事なので、直ぐに申請許可が下りました」
気持ち嬉しそうに語るダニー。
「それにしても、何でまたこの仕事に? お前ほどの実力があればもう一度、捜査官として働けるだろう?」
不思議そうに尋ねるエフェルローンに、ダニーは頭を掻きながらこう言った。
「捜査官の仕事には、正直未練はあります。でも、向いてないんです、僕には。あの時それを実感しました。もし僕がもう少しまともに動けていれば、先輩は……」
「ダニー……」
エフェルローンは言葉に詰まる。
ダニーが捜査官を退いた理由――その理由を薄々感じていたとはいえ、実際に口に出されると、申し訳ない気持ちで一杯になる。
ダニーではないが、「あのとき、もっと自分がしっかりしていれば」と思わずにはいられない。
「馬鹿言うな、ダニー。悪いのは俺だ。全部俺の選択が招いた結果だ。お前が気負う事なんかないって」
「ありがとうございます、先輩。でも、やっぱり自分自身が許せなくて。結局、自分の問題なんですよね、困ったもんです」
眉をハの字に寄せ、ダニーは自らを恥じるように頬を掻き、そして唇を引き結ぶと下を向いた。
「ダニー……」
エフェルローンはかける言葉が見つからず、口を閉じる。
「それでも」
ダニーは、もう一度顔を上げると自嘲しながらこう言った。
「やっぱり憲兵の仕事に関わっていたい自分がいて。そのことに気付いたのは、コールリッジ先輩に会ったときでした」
「ディーンに? いつ会ったんだ?」
ダニーは思案するような表情でこう言った。
「一週間、いえ……十日ぐらい前でしょうか? 図書館でたまたま会いました。先輩は、禁忌魔法管理部の方のみが閲覧することを許されている禁忌図書の閲覧許可証を持って来られたんです。その時、ディーン先輩がこう言ったんです。『アデラを追いかけている、戻ってこい』って」
「あいつ、そんなに早くからアデラを追ってたのか。ディーンといいギルといい……くそっ、皆《みな》して俺を!」
憤りのオーラを発するエフェルローンに、ダニーが苦笑しながらこう言う。
「ディーン先輩、こう言ってました。『エフェルには言うなよ、言ったら最後。単身命がけでアデラを捕獲しに行きかねないからな』って。僕もそう思います」
「先輩、愛されているんですね」
今まで、口を閉ざしていたルイーズが感慨深げにそう言った。
「黙れ」
エフェルローンはそう言ってルイーズの言葉をねじ伏せる。
ルイーズは、渋い笑みを浮かべながら半歩後ろに下がった。
その様子に、ダニーは懐かしそうな笑みを浮かべると、こう話を続ける。
「それで、少しでも先輩たちのお手伝いがしたくて、今こうしてここに」
「そう、だったのか。その……何もしてやれなくて、悪かったな」
ダニーの心遣いを思うと、自分のことだけでいっぱいいっぱいになっていた自分自身が恥ずかしい。
ダニーはとんでもないとばかり頭を横に振ると、吹っ切れたような顔でこう言った。
「気にしないで下さい。この仕事、結構気に入ってるんです。と、そんな訳で」
そう話を切り替えると、ダニーは真面目な口調でこう言った。
「改めまして、先輩。日記の件ですが、僕は担当の方《かた》から預かってはいません。どうしますか? 遺留品と遺留品リスト、ご自身の目で確認してみますか?」
「いや」
エフェルローンはそう言うと、ふつりと黙り込む。
調査資料には、被害者の遺留品として日記と、確かにあった。
だが、鑑識に確認に来て見れば、それは無いという。
――あるはずのものが無い。
盗まれたか、紛失したか、あるいは――隠蔽されたか。
「ダニー、ありがとな。一応、このリスト、貰ってくぞ」
そう言ってリストを頭上に掲げるエフェルローン。
ダニーは申し訳なさそうに笑うとこう言った。
「もっと力になれれば良かったんですけれど、すみません」
そんなダニーに、エフェルローンは「大事ない」というように笑って見せるとこう言った。
「このリストだけで十分だ。ありがとう、ダニー。仕事……頑張れよ」
その言葉に、ダニーは感極まったような顔をすると、嬉しそうにこう言った。
「はい、ありがとうございます! これからもよろしくお願いします、先輩!」
そう言って満々の笑みを浮かべるダニー。
そんなダニーに、エフェルローンは苦笑気味にこういった。
「おう、頼りにしてるぞ、新人?」
「は、はは……」
そう言って、引きつった笑みを浮かべるダニーを背に。
エフェルローンはボーっと突っ立っていたルイーズの腰を小さな手で叩くとこう言った。
「ルイーズ、戻るぞ」
カッと、ルイーズの顔が赤く染まる。
「なっ! 先輩ひどいっ! 何処触ってるんですか!」
腰を叩かれたルイーズは、顔を真っ赤にしながら抗議の声を上げると、先を行くエフェルローンの後をズカズカと追う。
「しょうがないだろ、肩を叩きたくても手が届かないんだから」
しれっとそう言うエフェルローに、ルイーズは呆れたように声を荒げてこう言った。
「はぁ? そんなの! 言い訳になりません!」
「何なら今度から太腿でも触るか?」
そう意地悪く笑うエフェルローンに。
ルイーズは目を怒らせると、頬を膨らませてこう怒鳴る。
「あー、もう! 信じられないっ! このセクハラ上司!」
「あ? なんだって?」
「もう! 知りません!」
そう言い合いながら去っていくエフェルローンとルイーズの背中を見送ると。
ダニーはまた、資料の整理を再開する。
そして、昔の出来事に想いを馳せたダニーは、手元の資料を整理の手を止めると、寂し気にこう呟いた。
「憲兵、か」
そう呟いたダニーの弓形の背中は、なんとなく寂しそうであった。
エフェルローンは、鑑識官を頭ごなしに怒鳴りつけた。
――翌朝。
エフェルローンとルイーズは、王宮内の一角にある憲兵庁内の証拠品保管室に来ていた。
だが――。
「本当です! 我々が受け取った証拠品の中に、日記らしき物はありませんでした。本当です、信じて下さい!」
必死の形相でそう説明する青年鑑識官をエフェルローンは信じるどころか、更に問い詰めるとこう言った。
「お前が盗んだんじゃないだろうな?」
「そ、そんな……」
そう言って狼狽する年若い鑑識官を哀れに思ったのだろう、ルイーズが止めに入ろうと口を開きかけたそのとき。
「彼には日記を盗む動機はありませんよ。ちなみに僕もですけど」
細身で長身の男が、そう言って証拠品のリストをエフェルローンに差し出した。
「証拠品を受け取ったのは、僕です。そのとき、日記らしき物は何処にもありませんでした。本当です。だから、どうか彼を責めないで下さい」
そう青年鑑識官を見事にフォローすると、長身痩躯の黒髪碧眼の男はエフェルローンに向かい、深く頭を下げた。
長身痩躯で、黒髪碧眼の男―—。
「ひょっとして、お前……」
軽く目を見張り、エフェルローンは驚いた表情をする。
そんなエフェルローンに、長身痩躯の青年は軽く笑みを浮かべながらこう言った。
「お久し振りです、クェンビー先輩。ダニーです、ダニー・ガスリーです。何年振りでしょうか?」
ダニー・ガスリー――四年前、禁忌魔法事件で共に捜査に臨んだ新人魔術師。
(確か、今は図書館の司書をしてるんじゃ……)
そんな事を考えていると、ダニーが苦笑しながらこう言った。
「何でこんなところに……って、そんな顔してますね」
「だってお前、確か……」
そう言って言葉を詰まらせるエフェルローンに、ダニーはばつが悪そうにこう言った。
「はい、ついこの間までは大学の図書館で司書をしていました。ですが最近、移動願いを出しまして。そして、一週間ほど前からここで勤務を。あまり人気のない仕事なので、直ぐに申請許可が下りました」
気持ち嬉しそうに語るダニー。
「それにしても、何でまたこの仕事に? お前ほどの実力があればもう一度、捜査官として働けるだろう?」
不思議そうに尋ねるエフェルローンに、ダニーは頭を掻きながらこう言った。
「捜査官の仕事には、正直未練はあります。でも、向いてないんです、僕には。あの時それを実感しました。もし僕がもう少しまともに動けていれば、先輩は……」
「ダニー……」
エフェルローンは言葉に詰まる。
ダニーが捜査官を退いた理由――その理由を薄々感じていたとはいえ、実際に口に出されると、申し訳ない気持ちで一杯になる。
ダニーではないが、「あのとき、もっと自分がしっかりしていれば」と思わずにはいられない。
「馬鹿言うな、ダニー。悪いのは俺だ。全部俺の選択が招いた結果だ。お前が気負う事なんかないって」
「ありがとうございます、先輩。でも、やっぱり自分自身が許せなくて。結局、自分の問題なんですよね、困ったもんです」
眉をハの字に寄せ、ダニーは自らを恥じるように頬を掻き、そして唇を引き結ぶと下を向いた。
「ダニー……」
エフェルローンはかける言葉が見つからず、口を閉じる。
「それでも」
ダニーは、もう一度顔を上げると自嘲しながらこう言った。
「やっぱり憲兵の仕事に関わっていたい自分がいて。そのことに気付いたのは、コールリッジ先輩に会ったときでした」
「ディーンに? いつ会ったんだ?」
ダニーは思案するような表情でこう言った。
「一週間、いえ……十日ぐらい前でしょうか? 図書館でたまたま会いました。先輩は、禁忌魔法管理部の方のみが閲覧することを許されている禁忌図書の閲覧許可証を持って来られたんです。その時、ディーン先輩がこう言ったんです。『アデラを追いかけている、戻ってこい』って」
「あいつ、そんなに早くからアデラを追ってたのか。ディーンといいギルといい……くそっ、皆《みな》して俺を!」
憤りのオーラを発するエフェルローンに、ダニーが苦笑しながらこう言う。
「ディーン先輩、こう言ってました。『エフェルには言うなよ、言ったら最後。単身命がけでアデラを捕獲しに行きかねないからな』って。僕もそう思います」
「先輩、愛されているんですね」
今まで、口を閉ざしていたルイーズが感慨深げにそう言った。
「黙れ」
エフェルローンはそう言ってルイーズの言葉をねじ伏せる。
ルイーズは、渋い笑みを浮かべながら半歩後ろに下がった。
その様子に、ダニーは懐かしそうな笑みを浮かべると、こう話を続ける。
「それで、少しでも先輩たちのお手伝いがしたくて、今こうしてここに」
「そう、だったのか。その……何もしてやれなくて、悪かったな」
ダニーの心遣いを思うと、自分のことだけでいっぱいいっぱいになっていた自分自身が恥ずかしい。
ダニーはとんでもないとばかり頭を横に振ると、吹っ切れたような顔でこう言った。
「気にしないで下さい。この仕事、結構気に入ってるんです。と、そんな訳で」
そう話を切り替えると、ダニーは真面目な口調でこう言った。
「改めまして、先輩。日記の件ですが、僕は担当の方《かた》から預かってはいません。どうしますか? 遺留品と遺留品リスト、ご自身の目で確認してみますか?」
「いや」
エフェルローンはそう言うと、ふつりと黙り込む。
調査資料には、被害者の遺留品として日記と、確かにあった。
だが、鑑識に確認に来て見れば、それは無いという。
――あるはずのものが無い。
盗まれたか、紛失したか、あるいは――隠蔽されたか。
「ダニー、ありがとな。一応、このリスト、貰ってくぞ」
そう言ってリストを頭上に掲げるエフェルローン。
ダニーは申し訳なさそうに笑うとこう言った。
「もっと力になれれば良かったんですけれど、すみません」
そんなダニーに、エフェルローンは「大事ない」というように笑って見せるとこう言った。
「このリストだけで十分だ。ありがとう、ダニー。仕事……頑張れよ」
その言葉に、ダニーは感極まったような顔をすると、嬉しそうにこう言った。
「はい、ありがとうございます! これからもよろしくお願いします、先輩!」
そう言って満々の笑みを浮かべるダニー。
そんなダニーに、エフェルローンは苦笑気味にこういった。
「おう、頼りにしてるぞ、新人?」
「は、はは……」
そう言って、引きつった笑みを浮かべるダニーを背に。
エフェルローンはボーっと突っ立っていたルイーズの腰を小さな手で叩くとこう言った。
「ルイーズ、戻るぞ」
カッと、ルイーズの顔が赤く染まる。
「なっ! 先輩ひどいっ! 何処触ってるんですか!」
腰を叩かれたルイーズは、顔を真っ赤にしながら抗議の声を上げると、先を行くエフェルローンの後をズカズカと追う。
「しょうがないだろ、肩を叩きたくても手が届かないんだから」
しれっとそう言うエフェルローに、ルイーズは呆れたように声を荒げてこう言った。
「はぁ? そんなの! 言い訳になりません!」
「何なら今度から太腿でも触るか?」
そう意地悪く笑うエフェルローンに。
ルイーズは目を怒らせると、頬を膨らませてこう怒鳴る。
「あー、もう! 信じられないっ! このセクハラ上司!」
「あ? なんだって?」
「もう! 知りません!」
そう言い合いながら去っていくエフェルローンとルイーズの背中を見送ると。
ダニーはまた、資料の整理を再開する。
そして、昔の出来事に想いを馳せたダニーは、手元の資料を整理の手を止めると、寂し気にこう呟いた。
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