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第六章 勝利を目指して
信頼の証
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「あ、エマさん! 遅れちゃってごめんなさい!」
すり鉢状の訓練場の、その斜面に敷き詰められた長椅子の上に荷物を置くと。
ミリアは急いでエマの隣に腰を下ろした。
息を切らせ、額の汗を拭うミリアに。
エマは少し驚いたような顔をしてこう言った。
「どうしたの、ミリア。時間に遅れて来るなんて。なんかトラブル?」
心配そうに尋ねるエマに。
ミリアは首を竦めてこう言った。
「いえ……お弁当作ってたらちょっと遅くなっちゃって。あと、昨日バケットを買い忘れちゃってて、市場まで買いに行ったりしてたから……」
そう言って、申し訳なさそうに下を向くミリアに。
エマは、別段気にする様子も無くこう言った。
「そっか。あ、そろそろ始まるみたいよ」
その言葉に、ミリアは会場の中央に目をやる。
すると、そこには審判を務める騎士と、大会に出場する選手たちが一堂に集められており、選手たちは、審判から試合に関する何かの指示を受けているようであった。
「あの……エマさん。試合って、どういった感じで行われるんですか」
ミリアのその問いに。
エマは、少し首を捻りながらも答えて言った。
「訓練場の入り口に簡単に書いてあったけど、確か……予選を勝ち抜いた八人による勝ち抜き戦みたいね。ちなみに、グレックは予選は通過したみたい」
「そうだったんですね! 良かった……」
そう言って、無邪気に喜ぶミリアを微笑まし気に見遣ると、エマはうる覚えの記憶を手繰るようにこう言った。
「で。グレックの初戦の相手は、確か……バーナード? っていう人らしいわ」
「バーナードさん、ですか。どんな人なんでしょう」
そう言って、首を捻るミリアに。
エマも肩を竦めると、口をへの字にしてこう言った。
「私も良く分からないんだけど。まあ、試合が始まれば分かるでしょ」
エマの言うとおり、試合が始まれば会場の中央にはグレックとバーナードしかいないので、相手がどんな顔をしているのかぐらいは何となく分かるだろう。
ミリアはエマのいう事に納得すると、素直にこくりと頷いた。
「うん、そうですね」
と、その時――。
「お、エマにミリアちゃん! おはよー」
約束の時間から数十分遅れて、皮のバッグを斜め掛けしたアキが、ミリアたちの前にふらりと現れた。
「アキさん!」
「アキ、遅いじゃない。何してたの?」
そう問い詰めるエマに。
アキは、ムッとしたようにこう言った。
「何って、情報収集だよ」
「情報収集?」
そんなエマの疑うような眼差しを完全にスルーし。
アキは、額の前に手をかざすと、会場を見下ろしながらこう言った。
「ねぇ、グレックは?」
「あそこ」
憮然とした顔でそう指さすエマの指先を目で追うと。
アキは、少し興奮したようにこう言った。
「おー、ほんとだ。でも、ちょっと緊張してるっぽいねー」
そんなアキの視線の先、グレックが背筋をピン張ってきびきびと動いている。
そんなグレックを何気なく見ていたエマは、ふと思い出したようにアキに尋ねてこう言った。
「そう言えば、グレックの対戦相手のバーナードって、どういう奴なの?」
その問いに、アキは待ってましたとばかりに口を開いてこう説明する。
「バーナードは、力に秀でた攻撃型タイプの男だねー。スピードもそこそこあるみたいだから、ちょっと面倒くさいかも。でも、タラ島のロブナントと比べると、一回り劣るって感じらしいよ」
「ふーん。つまり、こいつに勝てないようなら、優勝は無理って事ね」
そう簡潔にまとめるエマに、アキは苦笑気味にこう言った。
「ま、そういうこと」
「あ、グレックが出て来たわよ」
エマのその言葉に、ミリアも会場の中央を見つめる。
グレックが、練習用の木剣を手に持って、リラックスした様子で自分の立ち位置に立つ。
続いて、対戦相手のバーナードが会場の中央に姿を現した。
と、次の瞬間――。
会場の至る所から、グレックに同情するような声が上がる。
ミリアも思わず口元を抑え、食い入る様に対戦相手に見入ってしまう。
(本当に、こんな人と……?)
「あの……」
「どうしたの、ミリアちゃん」
会場の中央を注視したままそう答えるアキに。
ミリアは顔色を青くし、こう尋ねる。
「あんな強そうな人と、本当に戦うんですか?」
小ぶりだが、がっしりした岩のような体に、木の幹のように太い腕。
グレックより太いその腕で木剣を握ると、それをおもちゃのように軽々と振り回して見せるバーナード。
そのたびに会場は、悲鳴とも歓声ともつかない声が上がる。
(こんな人を相手にしたら、グレックさん、怪我だけじゃ済まないんじゃ……)
そう深刻に眉を顰めるミリアに、アキは困ったように眉を顰めるとこう言った。
「心配?」
その問い掛けに、ミリアは涙目でこくりと正直に頷く。
そんな今にも泣きだしそうなミリアを前に。
アキは、静かな笑みを浮かべると、力強くこう言った。
「でもさー、信じるしかないよね。信じよう、ミリアちゃん」
そう言って、真面目な顔で会場の中央をじっと見つめるアキの、グレックに対する揺るぎない信頼を前に。
ミリアは、恥ずかしさの余り思わず下を向いた。
(そうか、アキさんはグレックさんのこと心の底から信じてるから。だからあんな風に平然としていられるんだ)
そう思い至ったミリアは、膝の上の両拳をグッと握り締める。
(私も、そうありたい。アキさんのように強く……!)
ミリアは勇気を振り絞って顔を上げると、会場の中央に立つグレックを力強く見つめた。
そして――。
「構え!」
訓練場に騎士の号令が響く。
と、同時に。
グレック、バーナード、両者が素早く木剣を構える。
会場が、水を打ったようにしん、と静まり返り、ミリアはその張りつめた緊張感に、思わずはっと息を飲む。
と、次の瞬間――。
「始め――!」
その号令を合図に。
木剣と木剣が激しくぶつかり合う音と共に、地面から吹き上げるような大きな歓声が、会場全体に沸き上がるのであった。
すり鉢状の訓練場の、その斜面に敷き詰められた長椅子の上に荷物を置くと。
ミリアは急いでエマの隣に腰を下ろした。
息を切らせ、額の汗を拭うミリアに。
エマは少し驚いたような顔をしてこう言った。
「どうしたの、ミリア。時間に遅れて来るなんて。なんかトラブル?」
心配そうに尋ねるエマに。
ミリアは首を竦めてこう言った。
「いえ……お弁当作ってたらちょっと遅くなっちゃって。あと、昨日バケットを買い忘れちゃってて、市場まで買いに行ったりしてたから……」
そう言って、申し訳なさそうに下を向くミリアに。
エマは、別段気にする様子も無くこう言った。
「そっか。あ、そろそろ始まるみたいよ」
その言葉に、ミリアは会場の中央に目をやる。
すると、そこには審判を務める騎士と、大会に出場する選手たちが一堂に集められており、選手たちは、審判から試合に関する何かの指示を受けているようであった。
「あの……エマさん。試合って、どういった感じで行われるんですか」
ミリアのその問いに。
エマは、少し首を捻りながらも答えて言った。
「訓練場の入り口に簡単に書いてあったけど、確か……予選を勝ち抜いた八人による勝ち抜き戦みたいね。ちなみに、グレックは予選は通過したみたい」
「そうだったんですね! 良かった……」
そう言って、無邪気に喜ぶミリアを微笑まし気に見遣ると、エマはうる覚えの記憶を手繰るようにこう言った。
「で。グレックの初戦の相手は、確か……バーナード? っていう人らしいわ」
「バーナードさん、ですか。どんな人なんでしょう」
そう言って、首を捻るミリアに。
エマも肩を竦めると、口をへの字にしてこう言った。
「私も良く分からないんだけど。まあ、試合が始まれば分かるでしょ」
エマの言うとおり、試合が始まれば会場の中央にはグレックとバーナードしかいないので、相手がどんな顔をしているのかぐらいは何となく分かるだろう。
ミリアはエマのいう事に納得すると、素直にこくりと頷いた。
「うん、そうですね」
と、その時――。
「お、エマにミリアちゃん! おはよー」
約束の時間から数十分遅れて、皮のバッグを斜め掛けしたアキが、ミリアたちの前にふらりと現れた。
「アキさん!」
「アキ、遅いじゃない。何してたの?」
そう問い詰めるエマに。
アキは、ムッとしたようにこう言った。
「何って、情報収集だよ」
「情報収集?」
そんなエマの疑うような眼差しを完全にスルーし。
アキは、額の前に手をかざすと、会場を見下ろしながらこう言った。
「ねぇ、グレックは?」
「あそこ」
憮然とした顔でそう指さすエマの指先を目で追うと。
アキは、少し興奮したようにこう言った。
「おー、ほんとだ。でも、ちょっと緊張してるっぽいねー」
そんなアキの視線の先、グレックが背筋をピン張ってきびきびと動いている。
そんなグレックを何気なく見ていたエマは、ふと思い出したようにアキに尋ねてこう言った。
「そう言えば、グレックの対戦相手のバーナードって、どういう奴なの?」
その問いに、アキは待ってましたとばかりに口を開いてこう説明する。
「バーナードは、力に秀でた攻撃型タイプの男だねー。スピードもそこそこあるみたいだから、ちょっと面倒くさいかも。でも、タラ島のロブナントと比べると、一回り劣るって感じらしいよ」
「ふーん。つまり、こいつに勝てないようなら、優勝は無理って事ね」
そう簡潔にまとめるエマに、アキは苦笑気味にこう言った。
「ま、そういうこと」
「あ、グレックが出て来たわよ」
エマのその言葉に、ミリアも会場の中央を見つめる。
グレックが、練習用の木剣を手に持って、リラックスした様子で自分の立ち位置に立つ。
続いて、対戦相手のバーナードが会場の中央に姿を現した。
と、次の瞬間――。
会場の至る所から、グレックに同情するような声が上がる。
ミリアも思わず口元を抑え、食い入る様に対戦相手に見入ってしまう。
(本当に、こんな人と……?)
「あの……」
「どうしたの、ミリアちゃん」
会場の中央を注視したままそう答えるアキに。
ミリアは顔色を青くし、こう尋ねる。
「あんな強そうな人と、本当に戦うんですか?」
小ぶりだが、がっしりした岩のような体に、木の幹のように太い腕。
グレックより太いその腕で木剣を握ると、それをおもちゃのように軽々と振り回して見せるバーナード。
そのたびに会場は、悲鳴とも歓声ともつかない声が上がる。
(こんな人を相手にしたら、グレックさん、怪我だけじゃ済まないんじゃ……)
そう深刻に眉を顰めるミリアに、アキは困ったように眉を顰めるとこう言った。
「心配?」
その問い掛けに、ミリアは涙目でこくりと正直に頷く。
そんな今にも泣きだしそうなミリアを前に。
アキは、静かな笑みを浮かべると、力強くこう言った。
「でもさー、信じるしかないよね。信じよう、ミリアちゃん」
そう言って、真面目な顔で会場の中央をじっと見つめるアキの、グレックに対する揺るぎない信頼を前に。
ミリアは、恥ずかしさの余り思わず下を向いた。
(そうか、アキさんはグレックさんのこと心の底から信じてるから。だからあんな風に平然としていられるんだ)
そう思い至ったミリアは、膝の上の両拳をグッと握り締める。
(私も、そうありたい。アキさんのように強く……!)
ミリアは勇気を振り絞って顔を上げると、会場の中央に立つグレックを力強く見つめた。
そして――。
「構え!」
訓練場に騎士の号令が響く。
と、同時に。
グレック、バーナード、両者が素早く木剣を構える。
会場が、水を打ったようにしん、と静まり返り、ミリアはその張りつめた緊張感に、思わずはっと息を飲む。
と、次の瞬間――。
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その号令を合図に。
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