吸涙鬼のごはんになりました。

黒咲ゆかり

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15. 素直

俺が嫌いな匂いに包まれて
いつの間にか眠りにつく。

「……き…………水葵?」

「…………ぅ…ん。」

(あ…れ、なんで涙がここに…夢?)

「水葵…なんで僕のベットになんて
寝てるの?」

(いやっ、違う、現実だ!!)

「…………なんで帰ってきたんだ。」

「ごめん。忘れ物しちゃったんだ。」

「…………そうか。」

「水葵…目の下赤いけど…」

「っ……花粉症なんだよ。」

「僕が…他の部屋に行っちゃったの…
もしかして…寂しかった?」

涙が何かを期待している顔で見る。

「そんな……こと。」

寂しかった。
そんなこと言って……こいつもまた…
俺の前から居なくなったら。
そんな嫌な予感が頭によぎる。

「じゃあ、なんで僕のベットに居たの?」

「そ…れは…お前の…………匂…いが。」

(なんか俺…変態…みたい。)

「……匂いって…それって…なんか。」

「……っ…あぁもういいだろ。」

「ううん…まだなんで泣いてたのか聞いてない。」

「だっ……から…泣いてないって。」

「僕が居ないのに涙が出てきて焦ったんでしょ。……僕には…素直でいてよ。
お願い。」

『お願い』なんて言われたって…。

「俺は……!…………俺はもう嫌なんだよ。お前のことを大切に思ってしまったら……きっとお前も…」

「僕も…?」

「お前も俺の前から居なくなるんだろ。」

「…………どうして…そう思うの?」

俺はを自分の両親のことを全て話した。
こんな事を話せてしまうくらい
涙は俺にとって大切な存在になってしまったのかもしれない。

「……僕は絶対居なくなったりしないよ。」

「なんで…そんなこと言いきれるんだよ」

なんの根拠もないのにハッキリと自信に満ちた瞳で言う涙に戸惑いすらおぼえる。

「……言ったでしょ
僕は好きな子を泣かせないって。」

「今まであんなに…泣かせてきたのに?」

「……んふ…だから今度からは
泣いちゃうくらい幸せにしたげる。」

優しい俺の頭を撫でる手が…
涙の匂いが…暖かくて。

「………………もう、泣かねぇよ。」

「……っぷ…素直じゃないんだから。」

泣かないなんて言いながら、
目の奥が熱くなるのを必死に隠して。
自分にすら素直になれなかった俺を
こんな情けない顔にさせるこいつは
大物だと思う。

「…………俺は十分素直だ。」

「ほんとぉ~?
じゃあ、僕のベットで何してたの教えなさいっ。」

「いや、それは本当に変なことは何もしてない。」

(事実だ。)

「…ほぅ?…嘘つけぇ~い!」

「うわぁっ?!」

涙のベットに押し倒される。

涙本人の匂いと、
涙の匂いでいっぱいのシーツ。

(な…なんか変な気持ちに…。)

「…………あ、今僕の匂い嗅いだでしょ。
すんって言った…あはっ」

「……嗅いでない。だいたいなんでお前の匂いなんてっ。」

「ほらっ、やっぱり素直じゃない」

こちらを睨み頬を膨らませる。

「…………嗅いだよ。それがなんだ!」

「ふっ、開き直んないでよ…
まぁ、今日は合格ってことにしといてあげるっ。」
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