想い姫

希紫瑠音

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2・プレゼント

 待ちに待った金曜日。そのはずだったのに、リオは居心地の悪い思いをしていた。

 ファミレスで待ち合わせをしたのはよいが、目の前に座っているのは聖ではなく洸だった。

「ごめんなー、リオちゃん。俺までお邪魔することになって」

 勉強をするなら洸も一緒に良いかと聞かれ、本当は嫌だったのだが、聖のお願いを断る事もできずに良いよと返事をしてしまったのだ。

 話しなんてしたくないのに、話しかけられて鬱陶しい。相手にしたくないので本を読んでいようと鞄に手を伸ばすが、

「リオちゃん、お香って好きかな?」

 と聞かれるが、お香を焚いた事など一度もない。だけど興味はあったので肯定するように頷くと、目の前にお香を焚く道具とお香を並べた。

「どんな香りなの?」
「リラックスできる香だって」

 小さな紙をリオに手渡す。そこにはお香の効能と炊き方が書かれていた。

 何故、これをリオに渡したのだろう。洸がお香に興味があるようには見えない。だから不思議に思う。

「姉ちゃんから、リオちゃんにって」

 聖と洸の姉は雑貨屋の店員をしており、リオにプレゼントをしてくれたらしい。

「そう。ありがとうって言っておいて」

 香を手に取り、鼻を近づける。爽やかなにおいがした。

「いいにおい」
「気に入って貰えたら嬉しいな」
「家に帰ったら焚いてみるよ。楽しみだな」

 自分でも驚くくらいに、洸の前で素直に感情を表すことができる。

 それに、こんなに話しをした事など一度もないだろう。

 今まで目を合わせなかったのに、ふい視線がぶつかり合う。それに気がつき、ふわりと微笑む洸。リオはいつものように胸が苦しくなって、胸元をぎゅっと掴んだ。

「リオちゃん、気分でも悪いの?」

 それを見ていた洸が立ちあがり前屈みとなる。

「だい……、じょうぶ、だから」

 肩に洸の手が触れる。鼓動が激しくなり、心を落ち着かせようとするけれど余計に息苦しくなってくる。

 このままではいつもの発作を起こしてしまう。トイレに逃げ込もうかと思った、その時。

「お待たせ」

 と、後ろから聖の声がした。

 リオはホッと息を吐き、肩から洸の手が離れる。

 今まで感じていた熱が離れ、ホッとしたのと同時になぜか胸が痛んだ。

「行こうか」

 待たせたお詫びと、聖が伝票を持って会計へと向かう。

「待って」

 また洸と二人きりになるのが気まずくてリオは聖の後を追った。





 右には大好きな人。左には苦手な人。

 二人とも同じ顔をしているのに、どうしてこんなにも感じ方が違うんだろう。

 複雑な気持ちのまま、洸から貰ったお香を取り出して焚き始める。ふわりと爽やかなニオイがしてくる。

「へぇ、良いにおいだな」

 このお香の事は聖も知っていたらしい。

「うん、さすが姉ちゃんだな」
「これ、洸がリオにプレゼントしたいって、姉貴に選んでもらったんだ」
「え……?」

 洸は姉からだと言っていたのに。

「聖、秘密だっていったじゃんっ。リオちゃんが困っちゃうでしょ」
「困るなんて……、そんな事ないよな?」

 リオはどうにか頷いてはみたものの、頭の中では困惑していた。洸の意図が解らないからだ。

「だから言ったのに。ごめんね、特に意味はないから」
「そう、なの?」

 本当に意味がないのか。聖に助けを求めるように見つめるが、

「洸がそう言うのなら」

 ちらっと洸へ視線を向けた後、苦笑いを浮かべて頭を掻いている。

「……うん」

 結局、その話はうやむやのまま、別の話題になった。

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