犬とご主人様

希紫瑠音

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飼い犬に噛まれる

【1】

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 両腕を後ろで組み手錠をはめ、足には重い鉄球のついた足枷をして自由を奪う。その姿を冷たい目をした美しい男が眺めている。

 見下すその先、贅肉のない引き締まった身体と端正な顔をもつ男がいる。

 彼は戦で敗れた国の騎士であった。さぞかしその頃は町の娘たちを虜にしてきたことだろう。競で相当つぎ込んでしまったが、それけの価値はある男だ。

 大抵、捕らえられた騎士は、命を懸けて新たな主を守るために闘犬として躾け直す。元々、忠誠心に厚いだけに躾をすれば立派な闘犬となった。ただ、前の主に対して忠誠心が強い騎士となると厄介で、騎士としてのプライドがズダズダになるまで調教し、誰が主人となっても忠誠心を持ち立ち向う犬を作り上げる。

 ただ、うまくやらないと人格を壊し過ぎて狂ってしまうか、ただの人形のようになってしまう。 

 だがこれだけの上玉だ。闘犬としてではなく、貴族のアクセサリーとして礼儀作法を身につけさえたり、痛みという快楽を覚えさせてそちらの趣味がある、もしくは色を仕込み夜の遊び相手として、という使い方もある。

 見栄えの良い騎士は、夜の遊び道具としての需要が多く、調教師であるリキョウがもっとも得意としている躾けの一つであった。






 首輪についた鎖を掴み、首を絞めるように強く引く。犬はもだえ苦しみだす。それが自分の中に高揚感を与えた。

「お客様に媚びろ。尻尾を振って、忠誠心を見せろ」

 と、客の前に引きずって連れていくけれど、何もしようとしない。 

「ご主人様の言う事が聞けねぇのか」

 綺麗な顔に似つかわしくない乱暴な口調、だが、ゾクゾクする色気がある。

 わき腹を蹴飛ばして倒れ込んだ犬を足踏みにすれば、反撃のつもりかガチガチと歯をならし噛みつこうとする。

 それを紙一重で避けて頬を殴りつけた。

「ばか犬め」

 と、仕置きとばかりに股間を踏みつけた。

 この犬は良い身体をしているし、立派なモノを持っている。充分に主を喜ばすことができるだろう。

「くぅ、あ、あぁぁぁ……ッ」

 熱っぽい目で客を見つめながら、低くて色気のある鳴き声をあげた。そんな犬に対して客は欲の満ちた目で見つめながら生唾を飲み込む。

 そっちの趣味もあったようで、客の表情に小さく舌を打つ。

「その犬を貰おう。金は言い値で」

 請求書とリードを客に手渡せば交渉成立。それなのにリキョウはリードを掴んだままだ。

「お客様、大変申し訳ありません。粗末な品をお売りする所でした」

 客が何か言おうと口を開きかけるが、笑みを浮かべて黙らせる。

 リキョウは美しい。自分の魅力を十分に知ったうえでそうしてみせるのだ。

「お客様、お詫びになるかわかりませんが……、今度、私の調教をご覧になりませんか?」
「本当かいっ! リキョウの調教を見せて貰えるなんて」

 すっかり犬よりもリキョウの調教へ心が動いている。うまくいったとほくそ笑む。

 約束の日を決めて客を見送る。そして、大きな図体を蹴飛ばして、その上に跨った。

 犬を売るのが仕事だというなのに、何故か彼の駄犬ぶりを見せつけようとしてしまう。まるで売りたくないといわんばかりにだ。

 いつもは反抗的な態度をとるのに、今日に限ってエロい声で鳴いた。
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