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長期休暇
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※※※
家に帰り、暫くは話しをしていたが、いつのまにか寝てしまっていたようだ。
横を見ればすぐ近くに整った容姿があり、目覚めのそれは心臓に悪い。
「良く寝ていたな」
結城も起きたばかりなのだろう、寝跡が頬についている。それでも笑顔が爽やかだ。
「二人とも起きたのね。スイカを切ってくるわ」
と母が台所へと立ち、家族がテーブルを囲む。
赤と黄色のスイカは井戸水で冷やしてあり、のどが渇いていたのでそれで潤す。
「あれを一度やってみたかったな」
と呟く結城に、何かと聞けばスイカ割がしたかったそうだ。
「やったことがないのか」
「あぁ。子供の頃から海外で過ごすことが多かったから」
「お前、ボンボンだものな」
そう嫌味っぽく口にする。
「まぁな。一度、花火がしたいと願ったら、打ち上げ花火だったし」
流石、金持ち。一般人とはスケールが違うよなといじければ、結城が寂しそうに笑いかける。
「すまんな、実家まで無理やりついて来てしまって。これを食べたらおいとまをするよ」
昨日の夜、帰れと言ったのは颯太だ。だが、結城は断ると言った。それなのにそんなことを言うのだろう。
「……急にどうしたんだよ」
「俺は、お前が誘いを断ってまで何処に行くのか気になった。そして断られた理由を知った」
ここは良い場所だと、嫌がられてもついて来てよかったと口元を綻ばす。
「自分勝手なことで家族との時間を邪魔してしまい、申し訳なかった」
そう頭を下げる。理由を素直に話してくれた。確かに自分勝手だ。だけど、怒りはわいてこない。
「今更だろ。だからもういいよ。それよりも、花火をやらねぇで帰るの?」
「花火」
目を瞬かせて颯太を見ていた結城だが、見る見るうちに喜びの表情へと変わる。
「だから、明日、一緒に帰ろう」
と手の甲に触れる。
「俺はまだ、ここにいてよいというのだな?」
「あぁ、そういうことだ」
「そうか、嬉しいよ」
その、微笑みの破壊力は半端ない。男である自分にまで効果があるなんて。
結城は見た目と人当たりの良さもあり、同期内では彼が中心であった。颯太もその頃は良く話をしたものだ。
だが、社長の息子だという噂が流れ、事実だということを本人の口から聞くと、摺り寄る奴、距離を取る奴、彼女の座を狙う奴、周りの態度は急変するが、颯太は態度を変える事無く接していた。
研修が終わり、配属先が決まったあたりから結城の態度がおかしくなり始めた。
まず、名前をフルネームで呼ばれるようになった。
休みの日になるとやたらと誘われるようになった。
真っ赤な薔薇の花束をプレゼントされそうになった時は流石に引いた。それから結城は俺の中でただの同僚から苦手な男へとかわった。
友達になれると思っていたのに、裏切られたという気持ちもあった。
それからは結城のことを見ようとしなくなった。でも今はそれを反省している。彼は見た目と同じく、いい男なのかもしれない。
夕食の後、花火を楽しみ、その後に小川に蛍を二人で見に来ていた。
「楽しかったな」
「あぁ。ネズミ花火の、あの時のお前……」
ネズミ花火が足元で回転し始めて、まさかそういうものだとは思っていなかったようで、結城が驚いて逃げまくっていた。
「そういうお前だって」
その慌て振りが面白くて笑っていたら、自分の方にも花火がきて、思わず声をあげてしまった。
「あはは、そうだよな」
あの時の自分にも笑える。
「あぁ。好きな人と一緒に楽しいことが出来て幸せだ」
「好き?」
「あぁ。ずっと恋していたんだ」
颯太の気を引きたかった。ただ、それだけだった。
「薔薇とか贈られた時は引いたぞ」
結城に気のある女性なら贈られて嬉しいと思うだろうが、流石にお祝いとかでなく花を贈られても純粋に喜べない。
「はじめてなんだ。自分から好きになったのは」
さりげなく自慢かよと思いつつも、それが颯太とか、どうなんだろう。
「残念な奴だな、お前って」
「残念? 俺はお前と出逢えたことに感謝しかない」
「うわぁ……」
恥ずかしい奴だ。
だが、そんなに想ってくれいるということが嬉しく、同性に告白されたというのに嫌悪感がないのはそういう所かもしれない。
「想いを告げたからな、これからはもっと攻めていく。覚悟しておけよ」
「は、俺は簡単に落ちねぇし」
そう口角を上げれば、蛍が宙を舞った。
「綺麗だな……」
その美しさに魅了される。
「あぁ、綺麗だ」
ふと視界を遮られる。そして、唇に柔らかなモノが触れた。
「あっ」
キスされた、そう思った時には既に離れていた。
「宣戦布告だ、荻颯太」
耳元で囁かれ、ゾクッとしながら耳を押さえる。
「なっ、結城!」
「俺が一歩リードだな」
と笑う結城に、してやられたことが悔しくて、背中に軽くパンチを食らわした。
家に帰り、暫くは話しをしていたが、いつのまにか寝てしまっていたようだ。
横を見ればすぐ近くに整った容姿があり、目覚めのそれは心臓に悪い。
「良く寝ていたな」
結城も起きたばかりなのだろう、寝跡が頬についている。それでも笑顔が爽やかだ。
「二人とも起きたのね。スイカを切ってくるわ」
と母が台所へと立ち、家族がテーブルを囲む。
赤と黄色のスイカは井戸水で冷やしてあり、のどが渇いていたのでそれで潤す。
「あれを一度やってみたかったな」
と呟く結城に、何かと聞けばスイカ割がしたかったそうだ。
「やったことがないのか」
「あぁ。子供の頃から海外で過ごすことが多かったから」
「お前、ボンボンだものな」
そう嫌味っぽく口にする。
「まぁな。一度、花火がしたいと願ったら、打ち上げ花火だったし」
流石、金持ち。一般人とはスケールが違うよなといじければ、結城が寂しそうに笑いかける。
「すまんな、実家まで無理やりついて来てしまって。これを食べたらおいとまをするよ」
昨日の夜、帰れと言ったのは颯太だ。だが、結城は断ると言った。それなのにそんなことを言うのだろう。
「……急にどうしたんだよ」
「俺は、お前が誘いを断ってまで何処に行くのか気になった。そして断られた理由を知った」
ここは良い場所だと、嫌がられてもついて来てよかったと口元を綻ばす。
「自分勝手なことで家族との時間を邪魔してしまい、申し訳なかった」
そう頭を下げる。理由を素直に話してくれた。確かに自分勝手だ。だけど、怒りはわいてこない。
「今更だろ。だからもういいよ。それよりも、花火をやらねぇで帰るの?」
「花火」
目を瞬かせて颯太を見ていた結城だが、見る見るうちに喜びの表情へと変わる。
「だから、明日、一緒に帰ろう」
と手の甲に触れる。
「俺はまだ、ここにいてよいというのだな?」
「あぁ、そういうことだ」
「そうか、嬉しいよ」
その、微笑みの破壊力は半端ない。男である自分にまで効果があるなんて。
結城は見た目と人当たりの良さもあり、同期内では彼が中心であった。颯太もその頃は良く話をしたものだ。
だが、社長の息子だという噂が流れ、事実だということを本人の口から聞くと、摺り寄る奴、距離を取る奴、彼女の座を狙う奴、周りの態度は急変するが、颯太は態度を変える事無く接していた。
研修が終わり、配属先が決まったあたりから結城の態度がおかしくなり始めた。
まず、名前をフルネームで呼ばれるようになった。
休みの日になるとやたらと誘われるようになった。
真っ赤な薔薇の花束をプレゼントされそうになった時は流石に引いた。それから結城は俺の中でただの同僚から苦手な男へとかわった。
友達になれると思っていたのに、裏切られたという気持ちもあった。
それからは結城のことを見ようとしなくなった。でも今はそれを反省している。彼は見た目と同じく、いい男なのかもしれない。
夕食の後、花火を楽しみ、その後に小川に蛍を二人で見に来ていた。
「楽しかったな」
「あぁ。ネズミ花火の、あの時のお前……」
ネズミ花火が足元で回転し始めて、まさかそういうものだとは思っていなかったようで、結城が驚いて逃げまくっていた。
「そういうお前だって」
その慌て振りが面白くて笑っていたら、自分の方にも花火がきて、思わず声をあげてしまった。
「あはは、そうだよな」
あの時の自分にも笑える。
「あぁ。好きな人と一緒に楽しいことが出来て幸せだ」
「好き?」
「あぁ。ずっと恋していたんだ」
颯太の気を引きたかった。ただ、それだけだった。
「薔薇とか贈られた時は引いたぞ」
結城に気のある女性なら贈られて嬉しいと思うだろうが、流石にお祝いとかでなく花を贈られても純粋に喜べない。
「はじめてなんだ。自分から好きになったのは」
さりげなく自慢かよと思いつつも、それが颯太とか、どうなんだろう。
「残念な奴だな、お前って」
「残念? 俺はお前と出逢えたことに感謝しかない」
「うわぁ……」
恥ずかしい奴だ。
だが、そんなに想ってくれいるということが嬉しく、同性に告白されたというのに嫌悪感がないのはそういう所かもしれない。
「想いを告げたからな、これからはもっと攻めていく。覚悟しておけよ」
「は、俺は簡単に落ちねぇし」
そう口角を上げれば、蛍が宙を舞った。
「綺麗だな……」
その美しさに魅了される。
「あぁ、綺麗だ」
ふと視界を遮られる。そして、唇に柔らかなモノが触れた。
「あっ」
キスされた、そう思った時には既に離れていた。
「宣戦布告だ、荻颯太」
耳元で囁かれ、ゾクッとしながら耳を押さえる。
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