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素直になれない恋心
虎(1)
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大柄な男が苦しそうにうめき声をあげている。
詩の愛猫であるタイガは標準体重よりも重くて大きい。
そんなのが腹の上で寝ているのだからあたりまえだ。
それを見て見ぬふりをしているのは、のんきに昼寝をしているからだ。
そろそろ起こしてやろうかと、身体を揺さぶる。
「おい、虎治、起きろ」
何度目かの呼びかけに、
「う~ん」
目をこすり大きく伸びをすると、腹の上のタイガがピクリと耳を動かし一緒になって伸びをする。
「タイガってば、俺の腹の上で寝ていたんだ。だから苦しかったのか」
タイガを持ち上げて膝の上へと乗せる。
「お前さ、サークルの旅行先を決めるのにウチに押しかけといてさ、なんで寝ているんだよ」
「昨日、バイトが忙しかったんだよね。だから疲れがでちゃったかなぁ」
タイガの頭を撫でながら、えへへと笑うと、腹の虫が大きな音を立てる。
「そんなことよりもさ、詩にぃ、お腹すいたよぉ」
腹をさすりながら詩をじっとみつめる。
詩は幼いころから弟のように可愛がってきた。そのためか虎治を甘やかしてしまう。
拳を作りワナワナとさせつつも、ため息をひとつ、そして怒りをおさめる。
「わかったよ。チャーハンでいいか」
「うん。詩にぃのご飯、大好き」
甘え上手め。心の中でぼやきつつ、キッチンへと向かうと冷蔵庫から食材を取りだして料理をはじめる。
「虎治、タイガにオヤツあげといて」
「了解」
虎治は迷うことなくタイガのおやつを取りに行く。
家に入りびたりなので、どこになにがあるかを知っているのだ。
「タイガ、おやつだよ~」
「みぎゃぁ」
タイガはがらがらとした声で鳴く。詩はその声が可愛くてデレッとした顔で眺めていると、虎治と目が合い微笑みかけてくる。
虎治はかっこいい男だ。
背が高くて顔も良い。高校の頃から女子に人気があったし、人懐っこい性格もあって友達も多い。
詩も同じくらいの背丈なのだが、貧弱な体型と普通過ぎる顔のせいか女子にモテない。それをひがみつつ、できあがったチャーハンを皿へ山盛りによそい、虎治の方へと持っていく。
「わっ、美味しそう。頂きます」
手を合わせ、チャーハンを食べ始める。
虎治の食べっぷりはみていて気持ちがいい。詩はその姿を満足げに見つめる。
あっという間にチャーハンは空となり、
「ゴチソウサマでした」
満足げに腹をさする。
「あぁ、毎日、詩にぃのご飯が食べたいよぅ」
ちらっと詩の方へ視線を向ける。
「そういうことは彼女に言え」
「えぇ、詩にぃの作ったのが食べたいんだよ」
甘えるように言われると悪い気がしない。
柔らかい表情でこちらを見ている虎治が目にはいり、詩はドキッと胸を高鳴らせる。
「いやだね。デカいし、鬱陶しい」
と虎治から顔を背けた。
「えぇ、おっきいのも可愛いよ? ねぇ、タイガ」
「みぎゃぁ」
そのとおりと、まるで返事をしているかのようにタイガが鳴く。
虎治はタイガを持ち上げて、腕を掴んでちょいちょいと動かして、詩の頬にタイガの手がプニっとふれる。
この攻撃はずるいだろうがと、再び虎治の方へと顔を向けた。
「タイガはな!」
詩はそう、強めに言い放つと、
「えぇっ、俺だって可愛いよ」
タイガを膝の上に置いて、にゃんと口にしながら、まねき猫のようなポーズをとった。
それでなくとも大柄でうっとうしいのに、かわいくて胸がきゅんと跳ねてしまった。
だが、それをみとめたくなくて、
「可愛くない」
詩は気持ちを誤魔化すように虎治の後頭部をバシッと音を立てて叩いた。
「暴力反対~」
虎治が口元を尖らせ、肩のところに頭をぐりぐりと押し付けてきた。それを引き離し、
「うるさい。ほら、飯も食ったし、旅行先を決めるぞ」
とテーブルの上にノートパソコンとパンフレットを置いた。
「はぁ~い」
虎治がそれを手に取り見始め、詩は食べ終えた食器を重ねて流し台へと運んだ。
詩の愛猫であるタイガは標準体重よりも重くて大きい。
そんなのが腹の上で寝ているのだからあたりまえだ。
それを見て見ぬふりをしているのは、のんきに昼寝をしているからだ。
そろそろ起こしてやろうかと、身体を揺さぶる。
「おい、虎治、起きろ」
何度目かの呼びかけに、
「う~ん」
目をこすり大きく伸びをすると、腹の上のタイガがピクリと耳を動かし一緒になって伸びをする。
「タイガってば、俺の腹の上で寝ていたんだ。だから苦しかったのか」
タイガを持ち上げて膝の上へと乗せる。
「お前さ、サークルの旅行先を決めるのにウチに押しかけといてさ、なんで寝ているんだよ」
「昨日、バイトが忙しかったんだよね。だから疲れがでちゃったかなぁ」
タイガの頭を撫でながら、えへへと笑うと、腹の虫が大きな音を立てる。
「そんなことよりもさ、詩にぃ、お腹すいたよぉ」
腹をさすりながら詩をじっとみつめる。
詩は幼いころから弟のように可愛がってきた。そのためか虎治を甘やかしてしまう。
拳を作りワナワナとさせつつも、ため息をひとつ、そして怒りをおさめる。
「わかったよ。チャーハンでいいか」
「うん。詩にぃのご飯、大好き」
甘え上手め。心の中でぼやきつつ、キッチンへと向かうと冷蔵庫から食材を取りだして料理をはじめる。
「虎治、タイガにオヤツあげといて」
「了解」
虎治は迷うことなくタイガのおやつを取りに行く。
家に入りびたりなので、どこになにがあるかを知っているのだ。
「タイガ、おやつだよ~」
「みぎゃぁ」
タイガはがらがらとした声で鳴く。詩はその声が可愛くてデレッとした顔で眺めていると、虎治と目が合い微笑みかけてくる。
虎治はかっこいい男だ。
背が高くて顔も良い。高校の頃から女子に人気があったし、人懐っこい性格もあって友達も多い。
詩も同じくらいの背丈なのだが、貧弱な体型と普通過ぎる顔のせいか女子にモテない。それをひがみつつ、できあがったチャーハンを皿へ山盛りによそい、虎治の方へと持っていく。
「わっ、美味しそう。頂きます」
手を合わせ、チャーハンを食べ始める。
虎治の食べっぷりはみていて気持ちがいい。詩はその姿を満足げに見つめる。
あっという間にチャーハンは空となり、
「ゴチソウサマでした」
満足げに腹をさする。
「あぁ、毎日、詩にぃのご飯が食べたいよぅ」
ちらっと詩の方へ視線を向ける。
「そういうことは彼女に言え」
「えぇ、詩にぃの作ったのが食べたいんだよ」
甘えるように言われると悪い気がしない。
柔らかい表情でこちらを見ている虎治が目にはいり、詩はドキッと胸を高鳴らせる。
「いやだね。デカいし、鬱陶しい」
と虎治から顔を背けた。
「えぇ、おっきいのも可愛いよ? ねぇ、タイガ」
「みぎゃぁ」
そのとおりと、まるで返事をしているかのようにタイガが鳴く。
虎治はタイガを持ち上げて、腕を掴んでちょいちょいと動かして、詩の頬にタイガの手がプニっとふれる。
この攻撃はずるいだろうがと、再び虎治の方へと顔を向けた。
「タイガはな!」
詩はそう、強めに言い放つと、
「えぇっ、俺だって可愛いよ」
タイガを膝の上に置いて、にゃんと口にしながら、まねき猫のようなポーズをとった。
それでなくとも大柄でうっとうしいのに、かわいくて胸がきゅんと跳ねてしまった。
だが、それをみとめたくなくて、
「可愛くない」
詩は気持ちを誤魔化すように虎治の後頭部をバシッと音を立てて叩いた。
「暴力反対~」
虎治が口元を尖らせ、肩のところに頭をぐりぐりと押し付けてきた。それを引き離し、
「うるさい。ほら、飯も食ったし、旅行先を決めるぞ」
とテーブルの上にノートパソコンとパンフレットを置いた。
「はぁ~い」
虎治がそれを手に取り見始め、詩は食べ終えた食器を重ねて流し台へと運んだ。
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