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のんびりと過ごす日々 2
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部屋に戻ると机の上に大きな箱があった。
リボンにはさまれているカードを引き抜くとそこにはプレゼントだとセルジュのサインが書いてある。
中身を見るためにリボンをとって箱を開けると、そこには綺麗な箱とスケッチブック、ペン、絵の具が入っている。
欲しがると思って贈ってくれたのだろう。その優しさに胸が熱くなる。
そして箱の中は何かと蓋を開けると、刺繍の糸がたくさん入っていた。
「わぁ、すごい」
一般的なものからパールの糸、金糸、銀糸もある。
これだけ色が豊富なら、リアルな花の刺繍もできそうだ。
「あ、もしかして王妃様のおねだりがあるのかなぁ」
布がなかったことからすでにカタチとなっているものに繍うのかもしれない。
それはそれで楽しみである。
王宮に来て数日がたった。
王妃殿下からおねだりされた刺繍をしつつ、本を読んだり、休憩中のフレットやアルフォンスとお茶を楽しんだ。
セルジュとは朝食を一緒にとる。毎日忙しそうで体のことが心配だ。
夜は大抵一人。部屋でとることとなる。今日も用意してもらった夕食を食べて刺繍をしようかと思っていたら、セルジュから話があると部屋に呼ばれた。
彼の部屋に入るのは初めてだ。テーブルの上にはお菓子と紅茶が用意されている。
少しずつだが食べる量が増えてきた。お菓子は別腹なんですよとアルフォンスが話していたことがあったが、今ではその通りだと思う。
「タズリー伯爵家のことで話がある」
婚約が白紙になってからどうしているのか。
「きっと何も変わっていませんよね」
「その通りだ。すぐに謹慎は解かれてパーティに行っているからな」
やはりそうなったか。あの姉妹が反省をするわけがないのだ。
だがそれは想定済みなのだとセルジュが言う。
「俺の学友の中におしゃべり雀を妻にしたものがいてな。噂を広めておいたよ」
「まさか、あのことをですか」
「そうだ。さぞや楽しいパーティであっただろうに。彼女たちは目立ちたがり屋だからな」
それは、別の意味で目立っていただろう。
あの性格だから侮辱されたと怒りを我慢できずに誰かに当たり散らしているのではないだろうか。
「しかもいつもなら我先にダンスを申し込む男達が誘いもしない。声を掛けない者もいたとか」
「それは、大いに荒れていることでしょうね」
あの家に居たら今頃自分はどんな目に合っていたことだろうか。考えるだけでも恐ろしい。
「ふふ、実はとっておきのプレゼントを姉妹に用意している」
「プレゼント、ですか」
聞くのが怖い。
ヒクっと口の端が動く。耳をふさぎたい衝動にかられる。
「なに、婚約を白紙にしてしまったお詫びに新しい婚約者を用意しただけだよ」
いや、それだけではないだろう。
「罪はきちんと償わないとな」
そうだろう、と、顔を近づける。カッコいいから照れてしまう。
「そう、ですね」
顔を手で隠して視線から逃れると側から離れていった。
「さて、どのような物語を演じてくれることだろうか。楽しみだよ」
特等席で眺めていればいいのだよと、セルジュが得意げに笑った。
リボンにはさまれているカードを引き抜くとそこにはプレゼントだとセルジュのサインが書いてある。
中身を見るためにリボンをとって箱を開けると、そこには綺麗な箱とスケッチブック、ペン、絵の具が入っている。
欲しがると思って贈ってくれたのだろう。その優しさに胸が熱くなる。
そして箱の中は何かと蓋を開けると、刺繍の糸がたくさん入っていた。
「わぁ、すごい」
一般的なものからパールの糸、金糸、銀糸もある。
これだけ色が豊富なら、リアルな花の刺繍もできそうだ。
「あ、もしかして王妃様のおねだりがあるのかなぁ」
布がなかったことからすでにカタチとなっているものに繍うのかもしれない。
それはそれで楽しみである。
王宮に来て数日がたった。
王妃殿下からおねだりされた刺繍をしつつ、本を読んだり、休憩中のフレットやアルフォンスとお茶を楽しんだ。
セルジュとは朝食を一緒にとる。毎日忙しそうで体のことが心配だ。
夜は大抵一人。部屋でとることとなる。今日も用意してもらった夕食を食べて刺繍をしようかと思っていたら、セルジュから話があると部屋に呼ばれた。
彼の部屋に入るのは初めてだ。テーブルの上にはお菓子と紅茶が用意されている。
少しずつだが食べる量が増えてきた。お菓子は別腹なんですよとアルフォンスが話していたことがあったが、今ではその通りだと思う。
「タズリー伯爵家のことで話がある」
婚約が白紙になってからどうしているのか。
「きっと何も変わっていませんよね」
「その通りだ。すぐに謹慎は解かれてパーティに行っているからな」
やはりそうなったか。あの姉妹が反省をするわけがないのだ。
だがそれは想定済みなのだとセルジュが言う。
「俺の学友の中におしゃべり雀を妻にしたものがいてな。噂を広めておいたよ」
「まさか、あのことをですか」
「そうだ。さぞや楽しいパーティであっただろうに。彼女たちは目立ちたがり屋だからな」
それは、別の意味で目立っていただろう。
あの性格だから侮辱されたと怒りを我慢できずに誰かに当たり散らしているのではないだろうか。
「しかもいつもなら我先にダンスを申し込む男達が誘いもしない。声を掛けない者もいたとか」
「それは、大いに荒れていることでしょうね」
あの家に居たら今頃自分はどんな目に合っていたことだろうか。考えるだけでも恐ろしい。
「ふふ、実はとっておきのプレゼントを姉妹に用意している」
「プレゼント、ですか」
聞くのが怖い。
ヒクっと口の端が動く。耳をふさぎたい衝動にかられる。
「なに、婚約を白紙にしてしまったお詫びに新しい婚約者を用意しただけだよ」
いや、それだけではないだろう。
「罪はきちんと償わないとな」
そうだろう、と、顔を近づける。カッコいいから照れてしまう。
「そう、ですね」
顔を手で隠して視線から逃れると側から離れていった。
「さて、どのような物語を演じてくれることだろうか。楽しみだよ」
特等席で眺めていればいいのだよと、セルジュが得意げに笑った。
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