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ふたつのプレゼント

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 誕生日当日。
 夕食の支度をしている美空に、晴斗からLINEが届いた。

『誕生日おめでとう。今日は行けないけど、俺の心はいつも美空の傍にいるよ』

 メッセージの後、大きなバースデーケーキのスタンプが送られてきた。
「ふふっ。晴斗さん可愛い」

『ありがとうございます』

 返信したところで、玄関チャイムが鳴った。
「え? 誰だろう?」
 スマホを置くと、美空は玄関へと向かった。


「ハッピーバースデー美空さん!」
「紫雲君?」
 ドアの向こうには、紫雲が立っていた。

「美空さん、今日誕生日でしょ?」
「そうだけど……」
「二人でお祝いしよ?」
 小さなケーキの箱を掲げ、紫雲がにっこり微笑んだ。
「ありがとう。でも、どうして?」
「だって、誕生日に一人だと寂しいでしょ?」
「あ……」

 そういえば紫雲は以前、誕生日に母親がいなくて寂しい思いをしたと言っていた。
 その言葉を思い出し、美空は複雑な笑みを浮かべた。

「今日父さん、遅番で来られないって言ってたからさ」
「もしかして、晴斗さんの代わりに?」
「そ。晴斗二号」
「もう。紫雲君ったら……」
 思わず吹き出し、「入って」美空は紫雲を招き入れた。

「ご飯は?」
「食べたい」
「ふふっ。わかった。生姜焼きでいい?」
 冷蔵庫にケーキを仕舞う代わりに、美空は豚肉を取り出した。
「いいよ何でも。俺、美空さんの料理、何でも好き」
「何でもって……。ハンバーグとオムライスしか作ってないじゃん」
「だいたいわかるよ。まあ、心配しなくても、これからいっぱい作ってもらうし」
「ほんと、調子いいんだから」
「あはは」

 美空の手から豚肉を受け取ると、「何か手伝うことある?」紫雲が聞いた。
「うーん。特に無いかな? 焼くだけだし」
「そっか。じゃあ、また上行ってていい?」
「いいけど……。またアルバム見るの?」
「はは。内緒」
「もう! 変なもの見ないでよ?」
「何? 見られちゃマズいものでもあんの?」
「無いよ、そんなの」
「じゃあいいじゃん」
 悪戯っぽく笑うと、紫雲は勢いよく梯子を登って行った。


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