あの日交わした約束がセピア色にかわっても

紫水晶羅

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内緒の遊園地

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「それにしても、身長高いね。何センチ?」
 フランクフルトを翔に持たせながら、美空が聞いた。一足先に腹ごしらえをしていた翔は、それほど腹が減っていないようだ。「おいちっ」と言いながらも、手元のフランクフルトは一向に減る気配はない。
「俺? 百七十八か九かな? ギリ百八十に届かないくらい」
 焼きそばを頬張り、紫雲が答えた。
「え? てっきり百八十あると思ってた」
「うん。よく言われる」
「だよね。手足長いからかな?」
「言われてみればそうかも。テニスやってたからかな?」
 箸を左手に持ち替えると、紫雲は右手を伸ばして見せた。
「もう百八十って言っちゃえばいいじゃん」
「いや、そこはなんか気が引けるっていうか……」
 翔に「うまいか?」と聞きながら、紫雲ははにかんだ。

「美空さんは? 何センチ?」
「私? 百五十八」
「ちっちゃ」
「ひどっ!」
 ムキになって怒る美空を笑顔であしらうと、「みーたん可愛いねぇ」紫雲が翔の顔を覗き込んだ。
「うん。みーたん、かわいい」
 口の周りにケチャップを付けながら、翔がにかっと笑った。
「もう。二人して……」
 むくれた顔で溜息を吐くと、美空はホットドックにかぶりついた。

「美空さんこそ百六十って言っちゃえばいいじゃん」
「そこはやっぱり、気が引けるっていうか……」
「一緒じゃん」
「確かに」
 二人は声を合わせて笑った。それにつられて翔もキャッキャと嬉しそうに手足をバタつかせた。
「翔! ケチャップが!」
 フランクフルトが翔の動きに合わせて左右に振られる。ボタボタ垂れるケチャップを拭きながら、紫雲が慌てふためいた。


 忙しない食事を終えると、三人はタヌキやキツネの檻を見て回った。
「ごめんね。ゆっくり食事できなくて」
 フランクフルトをなんとか完食した翔は、早く次へ行きたくてうずうずしていた。
「はやく、はやく」と急かされれば、ゆっくり食べている場合ではない。
 急いで残りのフライドポテトと鶏の唐揚げを口の中に放り込むと、二人は早々に席を立った。

「いやぁ。噂には聞いてたけど、二歳児のパワーは凄いね」
 感心したように、紫雲は翔を見つめた。
 翔はアライグマの檻の前で、一生懸命両手をこすり合わせている。どうやらアライグマがリンゴを洗っているのを真似ているようだ。
「保育園はこんなのが何人もいるんでしょ?」
「こんなのって……」
 ごめんと謝った後、「やっぱすげぇや、美空さん」愛おしそうに翔を見ながら、紫雲がふっと笑った。
「ちょっとは見直した?」
「俺はいつも尊敬してるよ。美空さんの事」
「え?」
「ちっちゃいけどね」
「そんなにちっちゃくないと思うけど?」
 ははっと笑うと、「翔ー! 写真撮ってやろうかー?」紫雲はスマホを翔に向けた。
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