46 / 90
内緒の遊園地
6
しおりを挟む「それにしても、身長高いね。何センチ?」
フランクフルトを翔に持たせながら、美空が聞いた。一足先に腹ごしらえをしていた翔は、それほど腹が減っていないようだ。「おいちっ」と言いながらも、手元のフランクフルトは一向に減る気配はない。
「俺? 百七十八か九かな? ギリ百八十に届かないくらい」
焼きそばを頬張り、紫雲が答えた。
「え? てっきり百八十あると思ってた」
「うん。よく言われる」
「だよね。手足長いからかな?」
「言われてみればそうかも。テニスやってたからかな?」
箸を左手に持ち替えると、紫雲は右手を伸ばして見せた。
「もう百八十って言っちゃえばいいじゃん」
「いや、そこはなんか気が引けるっていうか……」
翔に「うまいか?」と聞きながら、紫雲ははにかんだ。
「美空さんは? 何センチ?」
「私? 百五十八」
「ちっちゃ」
「ひどっ!」
ムキになって怒る美空を笑顔であしらうと、「みーたん可愛いねぇ」紫雲が翔の顔を覗き込んだ。
「うん。みーたん、かわいい」
口の周りにケチャップを付けながら、翔がにかっと笑った。
「もう。二人して……」
むくれた顔で溜息を吐くと、美空はホットドックにかぶりついた。
「美空さんこそ百六十って言っちゃえばいいじゃん」
「そこはやっぱり、気が引けるっていうか……」
「一緒じゃん」
「確かに」
二人は声を合わせて笑った。それにつられて翔もキャッキャと嬉しそうに手足をバタつかせた。
「翔! ケチャップが!」
フランクフルトが翔の動きに合わせて左右に振られる。ボタボタ垂れるケチャップを拭きながら、紫雲が慌てふためいた。
忙しない食事を終えると、三人はタヌキやキツネの檻を見て回った。
「ごめんね。ゆっくり食事できなくて」
フランクフルトをなんとか完食した翔は、早く次へ行きたくてうずうずしていた。
「はやく、はやく」と急かされれば、ゆっくり食べている場合ではない。
急いで残りのフライドポテトと鶏の唐揚げを口の中に放り込むと、二人は早々に席を立った。
「いやぁ。噂には聞いてたけど、二歳児のパワーは凄いね」
感心したように、紫雲は翔を見つめた。
翔はアライグマの檻の前で、一生懸命両手をこすり合わせている。どうやらアライグマがリンゴを洗っているのを真似ているようだ。
「保育園はこんなのが何人もいるんでしょ?」
「こんなのって……」
ごめんと謝った後、「やっぱすげぇや、美空さん」愛おしそうに翔を見ながら、紫雲がふっと笑った。
「ちょっとは見直した?」
「俺はいつも尊敬してるよ。美空さんの事」
「え?」
「ちっちゃいけどね」
「そんなにちっちゃくないと思うけど?」
ははっと笑うと、「翔ー! 写真撮ってやろうかー?」紫雲はスマホを翔に向けた。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる