青春の悪夢

Zero

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Story編

01話

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とある年の4月8日 始業式の日

 俺たちは今年、無事に3年へと進級した。東山 充、この名前で17年と数ヶ月を生きてきた。しかし、『ヒガシヤマ ミツル』とよく言われるが、本当の読み方は、『トウヤマ ミチル』である。名前を誤認されることが唯一の不満であるが、もう、慣れてしまったものだ。

俺は、春丘学園3年C組の生徒として1年を過ごす。そして、俺はその担任と深く関わることになるとは、このときは、まだ何も想像していなかった。

自宅にて…俺は大急ぎで身支度を済ませた。始業式早々遅刻してはならない。そんなことを考えてると1つのニュースが目に入った『浜松里奈 死刑囚 脱獄か』普段ニュースを気にしない俺は『脱獄』と言う言葉が気になっただけなのだろうか。浜松里奈と言えば、元女優と聞いたことがある。

学校にて3年の教室の前には人が集っている。
ミチル
 「遅いぞリュ~!クラス替えの紙、見たか?」
タツキ
 「あ、まだ見てないや!」
ミチル
 「今年もお前と同じクラスだ、ったく何でだよ~!」
タツキ
 「内心では嬉しがってるんだろ?ツンデレかよ!」
ミチル
 「うるせぇよ、」

俺と話してるのは、北野 龍生(キタノ タツキ)。小学校からの親友だ。その頃から俺は、龍生を『タツキ』ではなく、『リュウセイ』と呼び間違えた名残りが今も続いていて『リュー』、そう呼ぶようになった。

キョウカ
 「充!私も同じクラスだよ~!」
ミチル
 「京花、今年もよろしくな」
キョウカ
 「うん!こちらこそ!」

彼女は南原 京花(ミナミハラ キョウカ)。昔からの幼なじみだ。南原を『ミナミハラ』ではなく、『ナンバラ』とよく呼び間違えられる。

ミチル
 「…にしても、担任誰だろ?」
キョウカ
 「新しく来る先生らしいよ、」

クラス替えの紙の担任の箇所には、「鹿羽 勝」と記載してあった。俺は、担任の名前を見たとき「勝」の読み方が「ショウ」なのか「マサル」なのかが気になった。これは自分と同じ境遇だからなのだろうか。

チャイムが鳴り、俺たちは教室の各々の席へと座る。
そして、その教室にやって来たのは、黒い丸メガネをかけ、右手に出席簿を持った年齢30前後、髪が深い青色の男の人だった。教員でも髪染めしても良いのだろうかと考えてた。その先生が教壇に立つと、

「今日から、このクラスの担任になります。皆さんの担当教科は、数学です。よろしくお願いします。」

そう言い角度30度程のお辞儀をした。こういうタイプの先生は厳しい、怒ったら殺されるかも…などと考えていると、先生がチョークを持ち黒板に漢字で名前を書く。字はとても綺麗だった。

「シカバネ カツ。これが私の名前だ。」

俺の予想していた「ショウ」でも「マサル」でもなかったことが驚きだった。「カツ」そんな名前の人がいる。そう知った。


そして先生は、次々と出席を取っていく。そして驚いたことに、

鹿羽 先生
「トウヤマ ミチルさん。」

今まで、家族以外のどんな初対面の人にも名前を間違えられ続けてたが、フルネームを間違えずに読んだのだ。俺は、とても嬉しかった。ちゃんと自分の名前を読んでくれたことに。それは、俺だけじゃない。

「ミナミハラ キョウカさん。」

間違えて呼ばれ続けた京花の名字も間違えなかったのだ。そのとき俺は、この先生 ただ者じゃない。そう思った。

鹿羽 先生
 「副担任は深山先生です。2年の頃、お世話になられた方も多いでしょう。深山先生は諸事情で教室には来られないそうです。では、始業式を行うので廊下に出席番号順で並んでください。」

その後、始業式を無事に終え、その日は午前で下校となった。体育館から自分の教室に戻るとき、俺は先生に呼ばれた。

鹿羽 先生
 「東山さん!終わったら職員室に来てください。」
ミチル
 「…は、はい。」


タツキ
 「ミッチー!一緒に帰ろうぜ!」
ミチル
 「あ、ごめん!俺、先生に呼ばれたんだよね」
タツキ
 「何?何かやったの?」
ミチル
 「いや、何もやってないけど、」
タツキ
 「じゃあ今日は先に帰るわ!じゃあな!」
ミチル
 「バイバ~イ!」

俺は足早に職員室へと向かった。職員室のドアをノックしようとした時、中から大声がした。

「あの事件、やっぱり公表すべきです!」
その声は、担任の鹿羽先生だった。俺は、「事件って何だ?」とか「鹿羽先生は何か知ってるのか?」とかよりも「鹿羽先生って、あんな大声出すんだ」という驚きの方が強かった。

俺は職員室の外から話を盗み聞きする。鮮明には聞き取れなかったが、「3年前」「隠蔽」「犯人」という言葉は、はっきりと聞き取れた。
俺は頭の中で文を作り出す。大まかな内容は「3年前に何かしらの事件が起きたが、その事件は学校側が隠蔽している。そして、犯人は…」犯人は誰かは聞き取れなかったが、きっとこの学校の関係者なのだろう。
そんな風に考えていると、職員室のドアが開いた。

扉の前に居たのは、副担任の深山先生だった。始業式にも教室にも姿を現さなかったが、ずっと職員室に居たのだろうか。
 
 そんな深山先生の下の名前は『紲星』。これで『キズナ』と読むらしい。読めないのは、少なくとも俺だけじゃないだろう。

 因みに俺たち生徒の間では深山先生のことを『キッズ』と呼ぶ人が殆どだ。理由は、下の名前が『キズナ』だからというのに加え、無邪気な若手教員として慕われているから。

深山 先生
 「あれ?東山?もう帰ったんじゃないのか?」

いきなりピンチの場面、俺は頭が真っ白になった。
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