驚愕

かじ たかし

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 太陽が跳ね返る熱と背中からの容赦のない光が、体を焦げつけている。まだ朝も早いとゆうのに気温は手加減を知らない。勤め出してから初めての休日だが、目覚ましをセットしなくても目が勝手に覚めてしまい洗車場へと向かったのだった。工場での勤務は基本的にカレンダー通りの休みであり、夏にとっては常に予定のない週末になってしまう。つい先日楓の番号を知りはしたが、未だに連絡を入れる勇気は湧かず放置していた。あまり深く考えたくない事もあり趣味の車磨きに走った。
洗車後の予定も全くなく、時間を持て余すのも嫌だったので隅々まで入念に洗う。ボディ全体にワックスをかけ、室内の掃除機も行い時計を見ると午前11時前だった。DVDをレンタルしようと思いレンタルビデオ屋に足を運ぶ事にした。ただでさえ孤独なのだからしんみりする映画には興味が湧かず、ひたすらアクションのコーナーを物色する。その時後ろから肩を叩かれ振り向くと見慣れた顔があった。
「1人寂しく映画鑑賞か」ニヤニヤしながら問うてくる。
真也だった。首元がよれた白のTシャツに黒んずだグレーの短パンとゆう出で立ちだった。恐らく寝起きなのだろう、目ヤニも少し付いていた。
「おまえこそこんな時間から何してんだよ」
「まあ毎日暇でしょうがねえよ。コンビニ行こうとしたら夏の車が見えたから」
「お互い様だな」鼻で笑った。
店内で立話も煙たがられると思ったので、煙草でも吸おうと夏は退店を促し揃って何も借りずに外に出る。
「最近パチンコとか行ってねえの?」煙草を取り出し真也が言った。
「それが最近仕事を始めたんだよ。短期のバイトなんだけどな」真也はライターを忘れたらしく火を点けてやる。
「そうなのかよ。で何の仕事なんだ」軽く手を挙げ礼をし訝しげに聞いてくる。
「エアコンとかを作る工場だよ。真っ当な仕事だろ。だから勤め始めて初の休みなんだよ」ドヤ顔で言った。無職の真也には例え短期と言えどもマシな方だと内心思っているのだ。
「面白くなさそうな仕事だな。俺なら初日で辞める自信があるな」
「真也には間違いなく向いてないな」そりゃそうだと鼻で笑った。
「そんな事より最近出会った女が中々の上物でよぉ。この間飯行ってもうちょっとでって所で邪魔が入っちまって」店員と思われる女性が灰皿を掃除しにきて、訝るように横目でこっちを見ている。構わず真也は続ける。「夏はなんかねぇのかよ。職場で若い女とかいるだろ。工場だからいねぇか」1人で話し1人で納得している。
「それがいるんだよ。連絡先も手に入れた、ただ俺には掛ける勇気が真也と違ってないんだけどな」メッシュの帽子を被り直す。「俺はいつまでも人と関わるのが怖いんだ」肩を落とし俯く。
「まだそんな事言ってんのかよ」知らぬ間に根元まで灰になった煙草をポイ捨てしようとしたが、留まり灰皿に向かっていく。「じゃあこうしようぜ、俺がこの間の女に頼んでコンパを開いてもらうってのはどうだ」いい考えだと思っているのだろう、少し声が大きくなっていた。先程の女店員に聞かれたくないなと思い、見回したが姿はなく少しホッとする。
「あの女なら周りも上等なのが揃ってるに違いない」と真也。
「俺緊急して何も喋れなくなるよ、その仕事場の子でさえ目もまともに見れないし」
「大丈夫だよ。俺も隣にいるし盛り上げるからさ。それより他に1人誰か呼べる奴いるか」すっかりコンパを開催する方向で話を進める。
「今の職場の人でいいならいけそうだけどな」佐藤の事が頭に浮かんだ。真也の誰とでも打ち明けられる性格が羨ましいと心底思った。このコンパで一皮剥けるのもいいなとも思った。
「その職場の人で問題ないよ。てかその人はモテそうな人なのか」
「そんな感じの人には見えないけどな」勝手に見下し少し罪悪感を抱く。
「なら尚更バンザイだよ。パッとしない奴がいる方が俺達が引き立てられるからな」
「そんなもんなのか」どこからこの自信が湧いてくるんだと思いながら、自分が知らない世界に踏み込んでいる気分になった。こんな事ならいっそ明日にでも行きたいとウズウズした。悪魔でも自分の狙いはコンパに来る女ではなく、楓にアプローチを掛ける練習をするとゆう事を忘れかけている。
もう一本煙草をくれと強請ってくる真也に嫌々渡し、DVDのレンタルもする気もなくなりコンパ用の服を新調しようとショッピングモールに出掛ける事にした。する事もないらしく真也も同席する。まだ決まった訳でもないのに夏はコンパの事しか頭に無かった。
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