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第20話 ロフィラを求めて
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ベイルの知り合いの飛竜に乗り、半日ほどかけてアグニ山脈までたどり着いた俺達3人は、日が暮れかかっていたこともあって、その日は麓で野宿をした。
そして次の日の朝早くに山頂を目指すべく出発し、今は時間にして正午をまわるあたりだが、すでに8合目を越えるあたりまで来ている。
飛竜で飛んでいる時にベイルから聞いた予定では、険しい岩山でモンスターも多いから、山頂までは半日かかると言う話だったので、だいぶ早いペースである。
何故そんなにスムーズに進んでいるのかというと、理由は簡単でモンスターとほぼ遭遇していないからである。
麓の辺りでは多少モンスターと交戦したが、それ以降ずっとまったくモンスターと出会わないのだ。もちろんモンスターがいない方がありがたいのだが、それはそれで不気味というものだ。
俺はベイルに話しかけた。
「な、なあベイル。気付いてるとは思うんだが、モンスターいなさすぎじゃないか?」
「ああ、気持ち悪いくらいにいないな。何年か前にここに来た時はうじゃうじゃといたんだがなあ」
ベイルは小難しい顔をしながらそう答えた。
「やっぱ昨日話してた世界中でモンスターの動向がおかしいってのは本当って事なのかねえ」
「そのようだな。さすがに異常事態すぎるぜ、これは。ま、まあ、今回に関しては素直に喜んどこうや。ミーシャも危険な目に合わずに済んでる訳だし。なあミーシャ」
「はい。正直ホッとしてます」
確かにベイルの言うとおりだな。モンスターが大量に襲いかかってきたら、いくら俺やベイルでもミーシャを庇いながら戦うのは一筋縄ではいかない。
それになによりエミリアを少しでも早く病気の苦しみから解放してあげたいからな。スムーズに進めて異常事態様様だ。
「そういやミーシャ。お前は魔法使いのようだが、どんな魔法を使うんだ?」
突然のベイルの質問にミーシャは答えづらそうに体をもじもじさせる。まあ言いにくいだろうな。
「そ、その……、私魔法が全然使えなくて、転移魔法くらいしか使えないんです……」
しゅんとしながらそう答えるミーシャ。
「転移魔法だと? ほほう。ミーシャ、すごいじゃないか。なかなか使える奴いないんだぞ、その魔法」
「す、すごいなんてそんな……。成功率も低いですし、大したことないですよ」
「いや、転移魔法みてーな無属性魔法は普通の魔法と勝手がだいぶ違って、人によって向き不向きがはっきり出るんだ。だから成功率が低かろうが使えるのは誇っていいんだぜ。俺は無属性魔法は全く駄目だしな」
「は、はい。ありがとうございます!」
なんか前にエミリアもそんな事を言ってたな。無属性魔法か。俺もそのうち向いてるかどうか試してみたいな。
「そうだな。ミーシャが無属性魔法向きってことなら、今度重力魔法を練習してみるといい。これがマスターできたら戦いでは相当有利だぞ」
「重力魔法……ですか。分かりました。王都に戻ったら練習してみます!」
ミーシャが決意を固め、腕をグッとしたその時だった。
(ぐるるるる)
ミーシャのお腹が大きく鳴った。
「す、すみません! 実はさっきからお腹が空いてて……」
顔を真っ赤にし、手をバタバタさせながら釈明するミーシャ。その姿はだいぶ可愛らしかった。
「がっはっは! まあ気にすんな! 俺もかなり腹が減ってはきてたしな。うっし、2人とも。ここらで一旦、腹ごしらえにしようぜ」
「「さんせーい!!」」
俺達は昼食を食べ、その後10分ほど休んでから再出発した。
それから1時間ほど歩き続け、9合目を越えた頃だった。
「お! あったぞ! ロフィラだ!!」
そう言ったベイルの視線の先を見ると、そこにはピンク色の小さな花が半径2メートルほどにわたってまばらに咲いていた。
「綺麗な花ですね」
ミーシャがそう述べる。確かに綺麗だ。こんな岩山に咲いているのが不思議なくらいだ。
いやー、見つかってよかった。これでエミリアを助けられる。
ベイルは何本かロフィラを摘み取って袋にしまう。
「うし、じゃあとっとと下山しようぜ。出来れば日が暮れる前に麓に戻りたい」
「「はーい」」
俺とミーシャが返事をしたその時だった。
「グルルルル……」
お腹の鳴る音が響き渡った。
「お、おいミーシャ。さっき昼ご飯食ったばっかだぞ。また腹減ったのか?」
俺がそう言うと、ミーシャは首を横に振りながら。
「い、今のは私じゃありませんよ! ユウトさんじゃないんですか?」
「お、俺でもねーよ! となるとベイルか?」
「いいや、俺でもねーぞ」
はて? じゃあ誰の腹が鳴ったというのか。ここには俺達3人しかいないぞ。
「グルルルル」
またしても鳴った。しかもさっきより音がでかい。というか俺達の後ろから聞こえたような……?
何やら嫌な予感がした俺達が一斉に後ろを振り向くと、巨大なドラゴンが俺達を睨んでいた。
そして次の日の朝早くに山頂を目指すべく出発し、今は時間にして正午をまわるあたりだが、すでに8合目を越えるあたりまで来ている。
飛竜で飛んでいる時にベイルから聞いた予定では、険しい岩山でモンスターも多いから、山頂までは半日かかると言う話だったので、だいぶ早いペースである。
何故そんなにスムーズに進んでいるのかというと、理由は簡単でモンスターとほぼ遭遇していないからである。
麓の辺りでは多少モンスターと交戦したが、それ以降ずっとまったくモンスターと出会わないのだ。もちろんモンスターがいない方がありがたいのだが、それはそれで不気味というものだ。
俺はベイルに話しかけた。
「な、なあベイル。気付いてるとは思うんだが、モンスターいなさすぎじゃないか?」
「ああ、気持ち悪いくらいにいないな。何年か前にここに来た時はうじゃうじゃといたんだがなあ」
ベイルは小難しい顔をしながらそう答えた。
「やっぱ昨日話してた世界中でモンスターの動向がおかしいってのは本当って事なのかねえ」
「そのようだな。さすがに異常事態すぎるぜ、これは。ま、まあ、今回に関しては素直に喜んどこうや。ミーシャも危険な目に合わずに済んでる訳だし。なあミーシャ」
「はい。正直ホッとしてます」
確かにベイルの言うとおりだな。モンスターが大量に襲いかかってきたら、いくら俺やベイルでもミーシャを庇いながら戦うのは一筋縄ではいかない。
それになによりエミリアを少しでも早く病気の苦しみから解放してあげたいからな。スムーズに進めて異常事態様様だ。
「そういやミーシャ。お前は魔法使いのようだが、どんな魔法を使うんだ?」
突然のベイルの質問にミーシャは答えづらそうに体をもじもじさせる。まあ言いにくいだろうな。
「そ、その……、私魔法が全然使えなくて、転移魔法くらいしか使えないんです……」
しゅんとしながらそう答えるミーシャ。
「転移魔法だと? ほほう。ミーシャ、すごいじゃないか。なかなか使える奴いないんだぞ、その魔法」
「す、すごいなんてそんな……。成功率も低いですし、大したことないですよ」
「いや、転移魔法みてーな無属性魔法は普通の魔法と勝手がだいぶ違って、人によって向き不向きがはっきり出るんだ。だから成功率が低かろうが使えるのは誇っていいんだぜ。俺は無属性魔法は全く駄目だしな」
「は、はい。ありがとうございます!」
なんか前にエミリアもそんな事を言ってたな。無属性魔法か。俺もそのうち向いてるかどうか試してみたいな。
「そうだな。ミーシャが無属性魔法向きってことなら、今度重力魔法を練習してみるといい。これがマスターできたら戦いでは相当有利だぞ」
「重力魔法……ですか。分かりました。王都に戻ったら練習してみます!」
ミーシャが決意を固め、腕をグッとしたその時だった。
(ぐるるるる)
ミーシャのお腹が大きく鳴った。
「す、すみません! 実はさっきからお腹が空いてて……」
顔を真っ赤にし、手をバタバタさせながら釈明するミーシャ。その姿はだいぶ可愛らしかった。
「がっはっは! まあ気にすんな! 俺もかなり腹が減ってはきてたしな。うっし、2人とも。ここらで一旦、腹ごしらえにしようぜ」
「「さんせーい!!」」
俺達は昼食を食べ、その後10分ほど休んでから再出発した。
それから1時間ほど歩き続け、9合目を越えた頃だった。
「お! あったぞ! ロフィラだ!!」
そう言ったベイルの視線の先を見ると、そこにはピンク色の小さな花が半径2メートルほどにわたってまばらに咲いていた。
「綺麗な花ですね」
ミーシャがそう述べる。確かに綺麗だ。こんな岩山に咲いているのが不思議なくらいだ。
いやー、見つかってよかった。これでエミリアを助けられる。
ベイルは何本かロフィラを摘み取って袋にしまう。
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「グルルルル……」
お腹の鳴る音が響き渡った。
「お、おいミーシャ。さっき昼ご飯食ったばっかだぞ。また腹減ったのか?」
俺がそう言うと、ミーシャは首を横に振りながら。
「い、今のは私じゃありませんよ! ユウトさんじゃないんですか?」
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はて? じゃあ誰の腹が鳴ったというのか。ここには俺達3人しかいないぞ。
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