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第21話 クルーエルドラゴンとの死闘

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「クルーエルドラゴン!!」

 ベイルがそう叫ぶ。
 へえ、こいつはクルーエルドラゴンって言うのか。
 全長30メートルはありそうな巨大な体躯。そこについた大きな翼。そして、全身を覆う黒くて硬そうな鱗。見るからに強そうである。

「ひいっ」

 ドラゴンのあまりの迫力にミーシャが尻もちを突く。無理もない。流石にこれはちと怖い。

「おいベイル。こんなのがいるなんて聞いてないぞ」

「俺だって聞いてねえよ。おそらく例のモンスターの動向がおかしいてやつだろう。こんなとこにいるはずねえからな。こりゃまいったな」

 もしかして、山を登ってくるときにモンスターが全然いなかったのは、こいつが山に住みついたからだろうか。

「やっぱ強いのか?」

「ああ、シャレにならん強さだ」

「で、でも前にドラゴンを倒したことあるってエミリアが言ってたような」

「ああ、あるさ。だが、そのドラゴンの数倍は強いのが、今目の前にいるクルーエルドラゴンなんだ。倒すとしても数日はかかるだろう。当然今はそんな時間はない」

「マジか……」

ベイルでもそんなにかかるのかよ。こりゃやばいのが出てきたもんだ。
 さて、この窮地をどう切り抜けるか。

「グオアアアアア!!!」

 しばらく俺達を睨んでいたクルーエルドラゴンが咆哮とともに翼を大きく広げ浮上し、俺達に襲いかかって来た。やべえ。

「とりあえず下山しながら戦うぞユウト! 時間が惜しいし、逃げてればそのうち諦めてくれるかもしれねえ!」

「オーケイ。行くぞミーシャ」

 俺は地面にへたり込んでいたミーシャをおんぶして走り出す。ベイルも後に続く。
 するとクルーエルドラゴンは逃がすまいと、その口を大きく開きブレスを放ってきた。

「よけろ!!」

 ベイルの声に反応し、俺は即座に真横に移動し、放たれた黒いブレスをかわした。

「グオオオオ!!」

 引き続いて今度は口から大きな火球を放ってくるクルーエルドラゴン。その火球はベイルめがけて物凄い速度で一直線に飛んでいく。

「ふんっ!!」

 避け切れないと判断したベイルは、両手でその火球を受けた。

「うおおおおお!!!」

 そして気合いで火球の軌道をなんとか変える。軌道が変わり、遠くへと飛んで行った火球はやがて小さな山にぶつかり、山の3分の1くらいが消し飛んだ。何てバカげた威力だ。

「ちいっ! やりやがるぜ。少し牽制を入れとくか。とうっ!!」

 ベイルはそう言ってクルーエルドラゴンの体に思い切り蹴りをぶちかました。ズゴォン!!という凄まじい音が鳴り、クルーエルドラゴンは一瞬ひるむ。

「よし! 少しは効いたようだ。さあ、今のうちに少しでもう奴との距離を引き離そう」

「ああ」

 しかし、そこまで引き離すことも出来ないうちに再びクルーエルドラゴンが羽ばたき、俺達に牙をむく。
 さっきよりさらに大きな火球を今度は俺とミーシャ向けて放ってきた。

「くっ!! 『ライトニングバレット』!!」

 俺は上級雷系魔法の『ライトニングバレット』を火球にぶつけ、なんとかレジストする。

「ふいー、なんとか打ち消せたか。良かったー」


 その後もしばらく逃げつつの攻防が続き、6合目までは降りて来られた。
 しかし、クルーエルドラゴンは一向に俺達を諦める気配はない。何というしつこい奴だ。しつこい男は嫌われるんだぞ、クルーエルドラゴンさんよ。まあオスなのかどうかは分からんけど。

「グオオオオ!!!」

 クルーエルドラゴンのブレス攻撃がまたしても俺たちを襲う。そしてそのブレスは今まで以上に広範囲高火力だった。

「このっ!! 『インテンススプラッシュ』!!」

 俺は渾身の力で魔法を放ち、なんとかレジストした。爆音と振動が響き渡る。
 あー、しんどい。あとどれだけ攻撃を凌げばいいんだ。俺が軽く肩を落としたその時だった。

「ユウト! まずいぞ上だ!!」

「上?」

 激しい戦闘による振動のせいで山の一部が崩れたのか、直径5メートルはありそうな大岩が上から転がり落ちてきた。このままだと俺とミーシャのいる場所を直撃しそうなので俺は回避に移る。
 だが、俺は足元の小岩にうっかり躓いてしまう。

(やべっ!!)

 大岩が目の前に迫る。やばい、このままじゃ俺もミーシャもペチャンコだ。

「えいっ!!」

 しかし、直撃する直前にミーシャが咄嗟に転移魔法を大岩に使う。大岩は見事に転移し、俺とミーシャは直撃を免れた。

「危なかったー。ナイスだミーシャ!」

「いえ、どういたしまして。上手くいって良かったです」

「ん? でも大岩の転移先はどこなんだ? ミーシャ、どこに飛ばした?」

「わ、分かりません。無我夢中だったので……」

 分からない……か。ミーシャのことだから数千キロ先に飛ばしたりしててもおかしくはないな。どっかの民家とかに直撃してないことを祈る。

「グギャアアアア!!」

 だが、その心配は完全に俺の杞憂だったようだ。
 クルーエルドラゴンの悲鳴にも似た咆哮が聞こえたのでそちらを見ると、ちょうど大岩がクルーエルドラゴンの脳天に直撃するところだった。どうやら偶然クルーエルドラゴンの真上に転移させていたらしい。

 大岩の直撃によって、クルーエルドラゴンは脳震盪を起こしたようで、そのまま地面に墜落し、起き上がるも大きくふらついている。

「しめた!! ユウト! ミーシャ! 今のうちに撒くぞ!!」

「おう!! でも念には念をだ。『アルティメットフレイム』!!」

 俺は最大限の魔力を込めてクルーエルドラゴンの右翼に魔法を撃ち込み、右翼を吹き飛ばすことに成功した。

「うおっ! やるなユウト!!」

「よし、これで飛んで追ってくることもできなさそうだ。 さあ逃げろ!!」

 俺達は脱兎のごとく山を駆け下りるのだった。
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