異世界チートはお手の物

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第31話 S級狩り現る

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 翌日、ガルロ新聞が販売されると、瞬く間に俺の名は全世界へと広まった。
 こんな嘘記事が出て、たぶん今頃王都ジールのギルドではエマたちが大慌てだろうな。S級狩りを倒した後ででも謝ろう。

 ちなみに新聞の一面記事としてはベイルのことが3分の2を占め、残り3分の1が俺についての記事となっている。
 内容としては昨日お願いした通り、俺がS級冒険者になったことを中心に書かれている。
 そして、俺の顔のイラストが一緒に載っている。顔が分かった方がS級狩りが俺のことを見つけやすいと踏んで、昨日の交渉の後で描いてもらったのだ。
 さらに、記事には俺がリーベの近郊のガーム平野で修行中だということも書いてもらった。これで俺の居場所もある程度伝えられるからだ。


「よし、これであとはS級狩りを迎え撃つだけだな。となればさっそくガーム平野に向かうぞ。エミリア、ミーシャ。ここでモンスターと戦って修行しつつS級狩りが現れるのを待つんだ」

「ええ。それにしても張り切ってるわね、ユウト」

「当たり前だ。人生で1番張り切っている気がするぜ」

「それは頼もしいこと」

 俺たちはガーム平野へと向かった。




 ガーム平野はかなり強いモンスターが出ることで有名らしく、冒険者たちの修行の場としては持って来いということだった。
 中でも強敵なのは現在戦っているアイアンウルフだ。鉄のように固い皮膚で全身を覆われているオオカミのモンスターで、防御力が非常に高く、また、スピードもかなり速い。

 だが、そんなアイアンウルフも俺たちの敵ではなかった。
 俺は肉弾戦で次々とアイアンウルフを打ち倒し、エミリアとミーシャはそれぞれ魔法攻撃でアイアンウルフを沈めていった。

 そんなこんなでモンスターたちを倒していき、あっという間に夕方になった。

「今日はこんなとこだろう」

「ええそうね。だいぶいい修行になったわ」

「S級狩りは現れなかったですね」

「そうだなー。まあさすがにそんなにすぐ現れはしないだろう。明日以降も気長に待つとするさ」

 俺たちは帰路につき、その日はすぐにご飯を食べ、床に就いた。


 翌日もその翌日もガーム平野で修行を続けたが、S級狩りが姿を現すことはなかった。
 そろそろ現れてもいい頃だと思うんだがなあ。もしかして新聞とか読まないやつなのか? それとも他のS級を狙っているのか?
 くそ、考えても仕方がない。明日こそ現れると信じよう。


 そして迎えた記事が出てから4日目の昼過ぎのことだった。
 ガーム平野でモンスターを探していたところ、エミリアが突然大声を出した。

「あ、あそこ!!」

 エミリアの指をさした方向に目をやると、少年が1人、蜘蛛のモンスターヘルスパイダーの大群に囲まれていた。50体はいるだろうか。これはまずそうだ。

「よしっ、助けに行くぞ2人とも!!」

「ええ!」

「はいっ!」


 俺たちは大急ぎで少年のそばへ駆け寄り、加勢に入ろうとした。しかし、直後信じられないことが起きた。

「『ライトニングストーム』」

 少年がそう唱えるとあたりに激しい雷の嵐が起こり、一瞬で50体を超えるヘルスパイダーたちを一掃してしまった。
思わずゾクリとし、鳥肌が立った。なんだこの子は。

 少年は近くで見ると思いのほか小柄だった。日本でいったら11,2歳くらいの年齢だろうか。そして黒い髪に不健康そうな白い肌。見た目はとても強そうには見えない。
 でも、感覚的に分かった。この子はめちゃくちゃ強い。この強者のみが放つ得体の知れない強烈なオーラ。ただ者じゃない。

「き、君、強いんだな。びっくりしたよ」

 俺はそう少年に話しかけてみた。
 すると、少年はうっすらと笑みを浮かべてこう言ってきた。

「ようやく見つけた」

「え?」

 少年の唐突な発言に俺は少し動揺した。
 見つけた……? この少年は俺を探していたってことか? どういうことだろうか。

「この新聞の記事を見たんだ。これ、君だよね? S級冒険者なんだよね?」

 少年は持っていたガルロ新聞の記事を指さしてそう言ってきた。その記事は4日前に出た俺がS級冒険者になったと書いている記事だった。
 この記事を見てS級冒険者を探していた……? 待て、てことはまさかこいつ!!

「お前が……、S級狩り……か?」

 俺がそう聞くと、少年は答えた。

「あははっ。世間では僕のことをそう呼んでるみたいだね。そうだよ。僕がS級狩りだ」

 なんてことだ。こんな小さな男の子がS級狩りだと……。にわかには信じられん。
 だが、この寒気がするような圧倒的なオーラを前にしてしまっては信じるしかない。やっぱりこいつがS級狩りだ。間違いない。

「いやー、次に狙うS級冒険者を探しに行こうと別の地域に移動してたら、こんな記事が出るんだもん。とってもびっくりしたよ。でも、本当に会いたかったよ、ユウト・アキヅキ君。……いや、アキヅキ・ユウト君って呼んだ方がいいかな」

「会いたかったのは俺も同じだ……って、んん?」

 ……ちょっと待て。今、なんでアキヅキ・ユウトってわざわざ言い直した? その苗字→名前の順番で呼ぶ日本人の呼び方を、レイアードに住むこいつがなぜ知ってるんだ?
 俺がよほど怪訝な顔をしていたのだろう。S級狩りが笑い出した。

「あははははっ。やっぱりそうなんだね」

「な、何がだよ……」

 俺は恐る恐る尋ねる。
 なんだろう。すごく嫌な予感がする。心臓がバクバクと破裂しそうになっている。こいつ、まさか……!!

「君も僕と同じ元は地球の日本に住んでいた異世界転移者なんだよね。アキヅキ・ユウト君」

「……………………っ!!」

 あまりのことに俺は二の句が継げなかった。
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