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第32話 2人の異世界転移者
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「お、お前も日本から来た、だと……」
しばらく無言となってしまっていた俺だったが、何とか言葉を絞り出した。
「うん、そうだよ。ちょっと前まで日本で中学1年生として生きてたニシゾノ・リンヤっていうんだ。よろしくね」
笑顔でそう言ってくるリンヤ。
何がよろしくだ。俺はお前みたいな人殺しと仲良くする気はないぞ。
「なあ、てことはお前も事故で死んで、女神エレナってやつに異世界転移させてもらったって事なのか?」
「うーん。そんなやつは知らないなあ。僕はセリーナとかいう女神に転移させられてこの世界に来たんだ」
セリーナ? エレナの他にも女神がいるってことなのだろうか。
「それに僕が死んだのは事故じゃなくて自殺だしね。僕って小柄だし病弱だったからさ。クラスの不良たちに目をつけられて酷いいじめを受けたんだよ。それで耐えられなくなって自殺したら、女神セリーナとかいうやつが異世界転移させてくれたってわけさ」
なるほどな。確かエレナと初めて会った時に不幸な死をとげた人を救済するとかなんとか言ってたし、こいつもそういう理由で転移させてもらったってことなんだろうな。
となるとおそらく、いや、間違いなく俺と同じで女神からチート能力をもらってるだろうな。その力でS級たちを殺して回ってたんだろう。
「でも、もう1人僕と同じ異世界転移者がいるなんて本当に驚いたよ。なにせ女神セリーナから、異世界転移者は1つの世界に1人までっていう決まりがあるって聞いてたからね」
「……なんだと?」
どういうことだ。エレナはそんなこと言ってなかったぞ。
「なんか違う世界の人間を異世界に2人以上存在させてしまうと、その世界全体のバランスがおかしくなるらしいんだよね。下手をすると世界が崩壊する危険もあるとかで。それで女神たちは異世界転移者は1つの世界に1人までってルールを作ったみたい。だから、君と僕が今こうして存在してるのは本来おかしいんだよ」
リンヤの言うことが本当なら確かに今の状況はおかしい。何がどうなってるんだ? というか世界が崩壊ってなんだよ。いくら何でもシャレにならんぞ。
俺が思考を巡らせていると、ずっと黙っていたエミリアが声をかけてきた。
「ち、ちょっとユウト! あんたたち異世界とか女神とかさっきからなんの話を……」
「すまん、エミリア。後でちゃんと説明するから今はちょっと待ってくれないか。俺も混乱してるんだ」
俺はエミリアの質問を途中で遮った。エミリアは俺の表情からただならないものを感じたのか無言で頷き、後ろに下がった。
えーっと、何を考えてたっけか。そうだ、異世界転移者がレイアードに2人いるってことについてだ。
一体どうして2人いるんだ? それに2人存在してしまうと世界のバランスがおかしくなるとか言うけど、特に世界がおかしくなったりもしてな…………ん? 待てよ!
「おい、リンヤ! お前はいつこの世界に来たんだ!?」
「え? どうしたんだい急に大声出して」
「いいから答えろ!」
「そうだなあ。まあだいたい1か月半くらい前かなあ」
俺と同じ時期だ……。そうか……そういうことだったのか。
最近世界中のモンスターたちの動向がおかしいとベイルは言っていた。俺もヴェノムオークやらブラックマンドラゴラだったりそこにいるはずのないモンスターに何回も遭遇した。
これらが全部俺たち2人が転移してきた影響で世界のバランスが崩れ始めたせいだと考えれば、すべて説明がついてしまう。
ということはだ。これはまだ序の口で、これからこの世界はもっと狂ってしまう可能性もあるってことだ。まずいぞこれは。
「あ、そうだ。ねえ、ユウト君。僕は君を探していたんだけど、なんでだと思う?」
俺が事態の深刻さに絶望していると、リンヤがそんなことを聞いてきた。なんでだと? そんなの決まってるじゃないか。
「なんでって、S級冒険者の俺を殺すためだろ?」
「あははっ、そうだよね。まあそう考えるのが自然か。違うんだ。僕は君と仲良くなりたいくて探してたんだ。どう? 僕と手を組まない?」
「何?」
俺と仲良くなりたい? 手を組みたい? なんの冗談だよおい。
「僕と組んでさ、この世界を支配しちゃおうよ。僕と君が組んだら誰もかなう奴なんかいない。むかつく奴や歯向かってくる奴はみんな殺してさ、好き放題しながら一生を過ごすんだ。きっとすっごく楽しいと思うなあ。ね、魅力的な話でしょ?」
とんでもない提案をしてきやがった。
いろいろ言いたいことはあったが、正直言う気も失せるくらいのくだらない提案だったので、俺はずっとしたかった質問を1つすることにした。
「なあ、答える前に1つ聞かせてくれ。どうしてS級の奴らを殺して回ってるんだ?」
「うーん、なんだろう。まあ暇つぶしかなあ。あと、せっかくすごい力をもらったし、強いやつ相手に自分の力を試したかったって感じ?」
あっけらかんとした様子でそう答えた。人を殺した罪の意識などまったくないようだ。
そして、やはりチートはもらっているようだった。
いじめられっ子が突然強い力を手にして喜んじゃって暴走した結果がこれってことか。しょうもねえ。本当にしょうもねえ。
「そうか……。それを聞けて良かったよ。これで安心しててめえをぶちのめせる」
「ぶちのめす? ふーん、そういうこと。じゃあ、交渉は決裂ってことでいいのかなあ?」
少しだけ残念そうな顔をしながら、リンヤがそう確認してきた。
当たり前だ。世界を支配とか興味ないし、何よりベイルをあんな目にあわせた張本人と組むわけがない。
「ああ、答えはNOだ。お前となんか死んでも手は組まねえよ。この人殺し野郎」
「そっか……。君となら結構仲良くやれそうだと思ったんだけどな。……じゃあ、悪いけど死んでもらおうかな」
リンヤの目に明らかな殺意が宿った。
「へっ、やってみろよ。できるもんならな」
さあ、敵討ちの時間だ。
しばらく無言となってしまっていた俺だったが、何とか言葉を絞り出した。
「うん、そうだよ。ちょっと前まで日本で中学1年生として生きてたニシゾノ・リンヤっていうんだ。よろしくね」
笑顔でそう言ってくるリンヤ。
何がよろしくだ。俺はお前みたいな人殺しと仲良くする気はないぞ。
「なあ、てことはお前も事故で死んで、女神エレナってやつに異世界転移させてもらったって事なのか?」
「うーん。そんなやつは知らないなあ。僕はセリーナとかいう女神に転移させられてこの世界に来たんだ」
セリーナ? エレナの他にも女神がいるってことなのだろうか。
「それに僕が死んだのは事故じゃなくて自殺だしね。僕って小柄だし病弱だったからさ。クラスの不良たちに目をつけられて酷いいじめを受けたんだよ。それで耐えられなくなって自殺したら、女神セリーナとかいうやつが異世界転移させてくれたってわけさ」
なるほどな。確かエレナと初めて会った時に不幸な死をとげた人を救済するとかなんとか言ってたし、こいつもそういう理由で転移させてもらったってことなんだろうな。
となるとおそらく、いや、間違いなく俺と同じで女神からチート能力をもらってるだろうな。その力でS級たちを殺して回ってたんだろう。
「でも、もう1人僕と同じ異世界転移者がいるなんて本当に驚いたよ。なにせ女神セリーナから、異世界転移者は1つの世界に1人までっていう決まりがあるって聞いてたからね」
「……なんだと?」
どういうことだ。エレナはそんなこと言ってなかったぞ。
「なんか違う世界の人間を異世界に2人以上存在させてしまうと、その世界全体のバランスがおかしくなるらしいんだよね。下手をすると世界が崩壊する危険もあるとかで。それで女神たちは異世界転移者は1つの世界に1人までってルールを作ったみたい。だから、君と僕が今こうして存在してるのは本来おかしいんだよ」
リンヤの言うことが本当なら確かに今の状況はおかしい。何がどうなってるんだ? というか世界が崩壊ってなんだよ。いくら何でもシャレにならんぞ。
俺が思考を巡らせていると、ずっと黙っていたエミリアが声をかけてきた。
「ち、ちょっとユウト! あんたたち異世界とか女神とかさっきからなんの話を……」
「すまん、エミリア。後でちゃんと説明するから今はちょっと待ってくれないか。俺も混乱してるんだ」
俺はエミリアの質問を途中で遮った。エミリアは俺の表情からただならないものを感じたのか無言で頷き、後ろに下がった。
えーっと、何を考えてたっけか。そうだ、異世界転移者がレイアードに2人いるってことについてだ。
一体どうして2人いるんだ? それに2人存在してしまうと世界のバランスがおかしくなるとか言うけど、特に世界がおかしくなったりもしてな…………ん? 待てよ!
「おい、リンヤ! お前はいつこの世界に来たんだ!?」
「え? どうしたんだい急に大声出して」
「いいから答えろ!」
「そうだなあ。まあだいたい1か月半くらい前かなあ」
俺と同じ時期だ……。そうか……そういうことだったのか。
最近世界中のモンスターたちの動向がおかしいとベイルは言っていた。俺もヴェノムオークやらブラックマンドラゴラだったりそこにいるはずのないモンスターに何回も遭遇した。
これらが全部俺たち2人が転移してきた影響で世界のバランスが崩れ始めたせいだと考えれば、すべて説明がついてしまう。
ということはだ。これはまだ序の口で、これからこの世界はもっと狂ってしまう可能性もあるってことだ。まずいぞこれは。
「あ、そうだ。ねえ、ユウト君。僕は君を探していたんだけど、なんでだと思う?」
俺が事態の深刻さに絶望していると、リンヤがそんなことを聞いてきた。なんでだと? そんなの決まってるじゃないか。
「なんでって、S級冒険者の俺を殺すためだろ?」
「あははっ、そうだよね。まあそう考えるのが自然か。違うんだ。僕は君と仲良くなりたいくて探してたんだ。どう? 僕と手を組まない?」
「何?」
俺と仲良くなりたい? 手を組みたい? なんの冗談だよおい。
「僕と組んでさ、この世界を支配しちゃおうよ。僕と君が組んだら誰もかなう奴なんかいない。むかつく奴や歯向かってくる奴はみんな殺してさ、好き放題しながら一生を過ごすんだ。きっとすっごく楽しいと思うなあ。ね、魅力的な話でしょ?」
とんでもない提案をしてきやがった。
いろいろ言いたいことはあったが、正直言う気も失せるくらいのくだらない提案だったので、俺はずっとしたかった質問を1つすることにした。
「なあ、答える前に1つ聞かせてくれ。どうしてS級の奴らを殺して回ってるんだ?」
「うーん、なんだろう。まあ暇つぶしかなあ。あと、せっかくすごい力をもらったし、強いやつ相手に自分の力を試したかったって感じ?」
あっけらかんとした様子でそう答えた。人を殺した罪の意識などまったくないようだ。
そして、やはりチートはもらっているようだった。
いじめられっ子が突然強い力を手にして喜んじゃって暴走した結果がこれってことか。しょうもねえ。本当にしょうもねえ。
「そうか……。それを聞けて良かったよ。これで安心しててめえをぶちのめせる」
「ぶちのめす? ふーん、そういうこと。じゃあ、交渉は決裂ってことでいいのかなあ?」
少しだけ残念そうな顔をしながら、リンヤがそう確認してきた。
当たり前だ。世界を支配とか興味ないし、何よりベイルをあんな目にあわせた張本人と組むわけがない。
「ああ、答えはNOだ。お前となんか死んでも手は組まねえよ。この人殺し野郎」
「そっか……。君となら結構仲良くやれそうだと思ったんだけどな。……じゃあ、悪いけど死んでもらおうかな」
リンヤの目に明らかな殺意が宿った。
「へっ、やってみろよ。できるもんならな」
さあ、敵討ちの時間だ。
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