異世界チートはお手の物

スライド

文字の大きさ
35 / 37

第33話 ユウトVSリンヤ

しおりを挟む
「エミリア、ミーシャ。できるだけ離れてろ。こんなに近くにいたんじゃたぶん巻き込んじまう」

「わ、分かったわ。気をつけなさいよ」

「はいっ。ユウトさん、必ず勝ってください」

「おう」

 エミリアとミーシャが安全圏まで離れたことを確認し、俺は構える。

「準備はいいようだね。さて、じゃあ僕からいかせてもらうよ」

 そう言い終えた刹那、爆音にも似た音とともにリンヤの姿がかき消え、気が付くと俺の目の前に立っていた。

「なっ!?」

「まず一発」

「――――――ッ!!」

 リンヤが俺の顔めがけて右ストレートを放つ。俺は何とか反応し、攻撃をかわそうとしたのだが――――。
 駄目だ速い! 避け切れねえ!!

 俺は避け切るのを諦め、顔面にパンチをくらった。
 しかし、ただでくらった訳ではない。身体を後ろへと反らし、衝撃を逃がしながら攻撃を受けることで、ダメージを最小限にとどめたのだ。そうしなければここで勝負が決していただろう。
 なんてスピードだよおい。
 今の一撃だけではっきり分かる。やっぱりこいつは格が違う。

「やるねえ。避け切れはしなかったみたいだけど、僕のパンチをまともに食らわなかったのは君が初めてだよ。今まで戦ったS級の奴らはみんなもろにくらっちゃって拍子抜けだったんだ。これは本気が出せそうだよ」

 リンヤはまだ全力というわけではなく、俺との戦いをしばらく楽しもうとしている感じだ。
 舐めやがって。その油断が命取りになることを教えてやる。

「今度はこっちからいくぞ」

 俺は思い切り地面を蹴りリンヤとの距離を一瞬で縮めると、即座にしゃがみ足払いをした。
 それをリンヤは軽くジャンプし、難なく避ける。
 しかし、そこは俺の読み通り。ジャンプして一瞬隙ができたところに俺は魔法を発動した。

「『エアショット』!!」

 空気の弾丸を発射する魔法『エアショット』により、リンヤは上空へと吹き飛んだ。
 そこへすかさず俺はさらに魔法を叩き込む。

「『ロックマシンガン』!!」

 無数の岩を相手に叩きつける上級魔法『ロックマシンガン』
 空中で無防備な状態の今のリンヤには効果抜群だろう。さあ、どうする。

「『ダンシングサンダー』」

 無数の岩が直撃する寸前でリンヤはそう唱え、直後発生した無数の雷ですべての岩を消し飛ばしてしまった。マジかよ。

「危ないことするなあ、ユウト君はー。ちょっとだけ焦ったよ」

 なんて奴だ。運動能力、反応速度、判断力、そして魔力。すべてが桁違いだ。S級たちが次々とやられるのも納得だな。手強すぎる。

「次は僕の番でいいかな?」

「――――うおっ!!」

 リンヤはまたしても弾丸のような速さで俺との間合いを一瞬で埋め、拳を放ってきた。
 しかし、今度はしっかり反応し、完璧にかわす。
 そして、攻撃後に少し隙ができていたリンヤに、俺はカウンターのパンチを放った。

 だが、そんなものを易々とくらうリンヤではなく、即座に身を翻し、俺のパンチをするりとかわす。
 そして今度はわずかな隙が俺にできてしまい、そこにリンヤは上段蹴りをかましてきた。
 俺は間一髪でなんとかそれをかわした。のだが、少しバランスを崩してしまった。

「しまっ――――!!」

 その隙をリンヤが見逃すはずもなく、俺の胸のあたりにリンヤの拳が突き刺さる。

「ぶはっ!!!」

 くらった瞬間、すさまじい衝撃が全身に伝わった。特に胸のあたりへのダメージは凄まじかった。俺は骨折なんか人生でしたことないが、間違いない。あばら骨が何本か折れたのが分かった。
 俺は20メートル鉾ほど吹き飛ばされ、痛みでそのまま地面にうずくまってしまった。

 くっ、こんなに痛いものなのか……!
 考えてみれば、この世界に来てから戦闘でまともに攻撃をくらったことなんかほとんどなかったもんな。あるとしたらベイルと戦った時くらいか。
 いや、でもこれはベイルの攻撃以上にすげえ威力だ。立ち上がれねえ……。

「ふう。どうやら勝負あったみたいだね。ちょっと拍子抜けだけど、この世界に来てから出会った奴の中では君が1番強かったし、まあ満足かな」

 うずくまる俺の前で勝ち誇るリンヤ。くそ、舐めやがって。

「じゃあとどめを刺そうかな。さて、どうや――――――ッ!!!」

「うらあっ!!!」

 もう俺が完全に動けないものと思い込み、油断していたのだろう。
 爆速で放たれた俺の蹴りにリンヤは反応することができず、攻撃をもろに顔面にくらった。
 その衝撃でよろけたリンヤの顎に、俺は思い切りアッパーをかました。

「うぐっ!!」

 そして体勢が完全崩れたリンヤの脳天に、俺は渾身の力でかかと落としを叩き込んだ。
 リンヤはその猛攻に耐え切れず、地面にうずくまってしまった。

「どうしたリンヤ、その程度か? こっちこそ拍子抜けだな。俺はようやく体が温まってきたとこだってのによ」

 うずくまるリンヤに俺は吐き捨てるようにそう言った。
 さすがにイラっと来たのか、リンヤの眉がピクリと動いた。
 リンヤはなんとかその場から起き上がる。いよいよ本気になったようだ。

「あははっ、さすがだよユウト君。君を殺しちゃうのは本当に惜しいよ」

「へっ、そうかい。さあ、続きと行こうぜ。楽しいのはここからだ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

処理中です...