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1806年/秋
≪第二の言葉≫
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「君が、エイミーかい?」
「さようでございます、殿下」
ピアノ奏者からの声に、俺が口を開く前に、ローザ先生が答えた。
殿下?
「君たち、ヤパンの使徒を疑うわけではないが、どうしてそう何人もの少女を僕につけようとするのだろうね?」
『何人もの』少女?
「ブラウンシュヴァイク=リューネブルク公からもご説明させていただきましたが、」
「いや、わかっているよ」
ぽろろん、とピアノを再開しながら、
「国を救うために、必要なのだろう?」
「さようでございます、殿下」
俺は、完全無視かい。
「殿下、お茶はいかがなさいますか?」
憮然としていた俺は、奥から出てきた少女に、固まった。
「ああ」
俺らへ視線を廻す殿下に、ローザ先生は、
「我々は、もう退出いたしますゆえ、お心遣いご無用でございます」
「そう、では僕の分だけでいいよ」
「かしこまりました、殿下」
下がる少女とローザ先生への俺のキツイ眼差しを、二人とも無表情に跳ね返してくれた。
「ルイを守れ?」
「そう、それが第二の言葉です」
ローザ先生は、いろいろと詰問しようとした俺より先に、その言葉を発した。
「それって?」
「ルイ・フェルディナント・フォン・プロイセン殿下。先ほどの方です」
王子様かよ。
確か、三男だっけ?
現国王の家族構成くらいは、さすがに知っている。
前世(?)の、なんとか家の分家になると怪しいのは同レベルだ。
「で?ルイ違いってことはないんですか?」
「むしろ、『この時』とヤパンの使徒が確信したのは、殿下の改名のためです」
改名?
「ヤパンの使徒の中でも、第二の言葉は、「信憑性が低い」と言われれていたのです。ルイが名前だとしたら、フランス風すぎるから」
そういえば、ルイ何世って、フランスの王様だっけ?
「だから、人名ではなく、暗喩だとか、言葉が誤って伝わっている、とも言われていました」
正直、第一の言葉「銃と盾を備えよ」も大雑把すぎると思うけど。
「そこに、殿下のルイへの改名。そして、戦争への危機。これで『この時』と確信しました」
まあ、王子様を守るのは、とりあえず納得。
第二の言葉を知る人数を増やさないようにしていたのも了解。
モロにターゲット知られたら困るよな。
それにしても、だ。
「どうしてアリスが?」
そう、あの部屋にいた少女は、アリス・ウォルフガング。
隣のクラスで、フィズボールでチームだった、アリスだった。
「アリスは、ヤパンの使徒ではありません」
俺の質問への答えとしては適切ではないが、実は一番知りたかったことをまず教えられた。
そう、ヤパンの使徒であるなら、彼女とチームで培った友情も、仕組まれたものではないか、と怖かったのだ。
だが、逆にそうでないなら、「どうして」が再燃だ。
「ウォルフガング家は、大きな商家ではありますが、大豪商と呼ぶにはまだまだ落ちます」
いやな予感がするな。
「それを打破するが、アリスの魔法の才能です」
やっぱり、そうなるか。
「魔法の才能は、出世への早道。そして、その才は子に伝わる可能性があります」
「もういい」
俺が遮る、とローザ先生は、眼を逸らしたが戻し、
「殿下をお守りするため、貴女とハンナを身近に置くよう、手配しました。そこに、」
それを聞きつけたアリスの父親が、捻じ込んできた、と。
「困ったことに、貴女たちがいっしょに、戦場にも行く、と知ったアリスが、」
説得をすべて断って、親の言い分をうまく利用して、居座っている、と。
だから、俺の顔を見ても、驚かなかったし、眼を合わそうともしなかったのか。
俺は息を大きく吸い、想像上のアリスの親父(髭面小太り短足)をボッコボコにして、息を吐いて埋葬する、と。
「アリスの防護服、急いで作らないとだな」
ローザ先生は珍しく、明らかに、ほっとした顔をしていた。
「さようでございます、殿下」
ピアノ奏者からの声に、俺が口を開く前に、ローザ先生が答えた。
殿下?
「君たち、ヤパンの使徒を疑うわけではないが、どうしてそう何人もの少女を僕につけようとするのだろうね?」
『何人もの』少女?
「ブラウンシュヴァイク=リューネブルク公からもご説明させていただきましたが、」
「いや、わかっているよ」
ぽろろん、とピアノを再開しながら、
「国を救うために、必要なのだろう?」
「さようでございます、殿下」
俺は、完全無視かい。
「殿下、お茶はいかがなさいますか?」
憮然としていた俺は、奥から出てきた少女に、固まった。
「ああ」
俺らへ視線を廻す殿下に、ローザ先生は、
「我々は、もう退出いたしますゆえ、お心遣いご無用でございます」
「そう、では僕の分だけでいいよ」
「かしこまりました、殿下」
下がる少女とローザ先生への俺のキツイ眼差しを、二人とも無表情に跳ね返してくれた。
「ルイを守れ?」
「そう、それが第二の言葉です」
ローザ先生は、いろいろと詰問しようとした俺より先に、その言葉を発した。
「それって?」
「ルイ・フェルディナント・フォン・プロイセン殿下。先ほどの方です」
王子様かよ。
確か、三男だっけ?
現国王の家族構成くらいは、さすがに知っている。
前世(?)の、なんとか家の分家になると怪しいのは同レベルだ。
「で?ルイ違いってことはないんですか?」
「むしろ、『この時』とヤパンの使徒が確信したのは、殿下の改名のためです」
改名?
「ヤパンの使徒の中でも、第二の言葉は、「信憑性が低い」と言われれていたのです。ルイが名前だとしたら、フランス風すぎるから」
そういえば、ルイ何世って、フランスの王様だっけ?
「だから、人名ではなく、暗喩だとか、言葉が誤って伝わっている、とも言われていました」
正直、第一の言葉「銃と盾を備えよ」も大雑把すぎると思うけど。
「そこに、殿下のルイへの改名。そして、戦争への危機。これで『この時』と確信しました」
まあ、王子様を守るのは、とりあえず納得。
第二の言葉を知る人数を増やさないようにしていたのも了解。
モロにターゲット知られたら困るよな。
それにしても、だ。
「どうしてアリスが?」
そう、あの部屋にいた少女は、アリス・ウォルフガング。
隣のクラスで、フィズボールでチームだった、アリスだった。
「アリスは、ヤパンの使徒ではありません」
俺の質問への答えとしては適切ではないが、実は一番知りたかったことをまず教えられた。
そう、ヤパンの使徒であるなら、彼女とチームで培った友情も、仕組まれたものではないか、と怖かったのだ。
だが、逆にそうでないなら、「どうして」が再燃だ。
「ウォルフガング家は、大きな商家ではありますが、大豪商と呼ぶにはまだまだ落ちます」
いやな予感がするな。
「それを打破するが、アリスの魔法の才能です」
やっぱり、そうなるか。
「魔法の才能は、出世への早道。そして、その才は子に伝わる可能性があります」
「もういい」
俺が遮る、とローザ先生は、眼を逸らしたが戻し、
「殿下をお守りするため、貴女とハンナを身近に置くよう、手配しました。そこに、」
それを聞きつけたアリスの父親が、捻じ込んできた、と。
「困ったことに、貴女たちがいっしょに、戦場にも行く、と知ったアリスが、」
説得をすべて断って、親の言い分をうまく利用して、居座っている、と。
だから、俺の顔を見ても、驚かなかったし、眼を合わそうともしなかったのか。
俺は息を大きく吸い、想像上のアリスの親父(髭面小太り短足)をボッコボコにして、息を吐いて埋葬する、と。
「アリスの防護服、急いで作らないとだな」
ローザ先生は珍しく、明らかに、ほっとした顔をしていた。
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