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1806年/冬

競技会≪チーム≫

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「それでは、競技会の説明をします」
 ローザ先生が、教壇に立っている。
 この学園は、全国から魔法の才能を持つ子供が集められている学校の一つだ。
 つまり、他にも同じような学園がある。
 そして、互いに最先端を自称していため、微妙にカリキュラムが異なる。
 その上、自分らのカリキュラムが最優秀だとも自称している。
 なので、カリキュラムの優秀さを示したい。
 ようは、学園同士の順位争いだ。
 それに、子供を巻き込むって、大人として、どうなんだ?
 しかし、カリキュラムによって、どう成長しているか測りたいのは、わかる。
 そこで、競技会だ。
「知ってい人もいるかもしれませんが、一年生はフィズ・ボールを行います」
 縦横約三十メートルのフィールド(バスケットのコート幅が倍になったくらい)の中心に高さ約四メートルのポールを立て、その上に乗せたボールを割る競技だ。
 攻守交替制で三分づつ、三名チーム同士が戦う。
 もちろん、魔法使用可だ。
 というより、魔法が使えないと成立しない競技だ。
「一チーム三人での競技ですので、これからチーム分けをしてもらいます」
 三人か、誰もが隣席で同室の子と二人組みだから、中々難しいな。
 俺も、ハンナといっしょの方がいいから、バラけてくれる奴を探すか。
「ハンナさん、エイミーさんには、お話があります」
 なんだ?
 俺、なんかやったか?
 やばい、身に覚えがありすぎる。
 どれが、バレた?
 ハンナも俺を疑いの目で見ている。
 俺も目が泳いでいることだろう。
「お二人とも、前へどうぞ」
 呼ばれて、おとなしく教壇の前に立つ。
 クラス中の注目を浴びているのが、居心地悪い。
「お二人には、申し訳ないのですが、隣のクラスの方とチームを組んでいただきます。このクラスも、三人で組むと、一人足りないのです」
 お、そういえば三で割り切れない人数だ、が割り算も九九もまだ習っていないので、知らない顔しておこう。
「先生、どなたとなのでしょうか?」
 ハンナが聞くが、俺は隣のクラスの名前まで知らないから、聞いてもなあ。
「アリス・ウォルフガングさんです」
『おおー』
 クラスが沸く。
 え?
 誰?
 ハンナも驚いた顔をしていた。
 もしかして、知らないの俺だけ?
 俺が、あまりに情けない顔をしていたからだろうか、ハンナが教えてくれた。
「魔法の授業で、すっごく優秀って言われてた人だよ」
 あ?
 ああー。
 なんでも一発でコンパイルしてたって天才児のことか。
 天才って、高飛車っぽそうな、奴だったら困るな。
 そんなのと組むのって、大変なんじゃないのか?
 面倒くさい。
 っていうか、どうして、俺とハンナとなんだろう?
「アリスさんかあ、憧れちゃうよねえ」
 ハンナの目が、ハートになっている。
 え?
 そういう反応なの?
 クラスも、
「アリスさんとなんて、うらやましい」
「できることなら、代わりたいですわ」
 じゃあ、代わってくれ。
 俺は、まだ見ぬアリスに、ちょっと嫉妬した。

「ハンナさん、エイミーさん、こちらがアリス・ウォルフガングさん。アリスさん、こちらがハンナ・チェスタさん、エイミー・ロイエンタールさんです」
 クラスでのチーム分けが行われている最中、俺たちは廊下で、ローザ先生に紹介されていた。
「こんにちは、ハンナ・チェスタです。よろしくね。ハンナって呼んでね。アリスって呼んでいい?」
 こくり、と頷くアリス。
 無口系か?
 アリスは、ストレートのプラチナブロンドスをおかっぱにして、小柄で肌が透けるように白かった。
「エイミー・ロイエンタールだ、よろしく」
「アリス・ウォルフガング」
 えーと、俺も人のこと言えないが、会話が続かないぞ。
 ハンナは、いろいろと話したいようだが、初対面で遠慮しているし、ローザ先生、温かく見守ってないで、介入してくれ。
 俺の心の声が聞こえたわけでもないのだろうが、
「それでは、競技の練習のときは、三人で仲良くお願いします」
 その言葉で、その場は解散となり、各々のクラスへと戻った。
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