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第二巻:夏は、夜
照×でれ
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『犯人が確定した以外の複数事案は、同一犯の可能性は限りなく低いですが、もしそうだと仮定した場合、ターゲットはマスターと推測されます』
事務所のポテトチップスの袋に盗聴器をしかけた犯人がわかり、一安心な雰囲気だが最近、起きたトラブルのほとんどが、実は未解決のままだ。
それで少し、整理している。
偶然としか言いようのない俺の楽屋の停電や天井板が落ちたり、更には、収録がノイズだらけでお蔵入りしたり、キャシーの救急車搬送騒動など、不運なトラブルも多かった。
あみを『メイド喫茶で働かせろ』という脅迫?メールは、実際にあみが働いた後、リアクションはなく、放置というか、未解決だ。
あみとレイチェルを狙った傷害犯との関与も疑われたが、少年Aは否定しているらしい。
事務所にしかけられた盗聴器の犯人は捕まったが、社長宅へ彼は入ったことなく、未解決だ。
もっとも、社長が中古で購入する以前のマンション住人へのしかけだったのかもしれないが。
茜の元ヒモからの脅迫は解決したが、力を借りた金本からの断れないオカルト番組への出演要請が、未解決ともいえる。
志桜里のASMR動画への『何か写ってる・聞こえる』は、解析では問題ないようだが、使っていたノートパソコンのクラッキングは未解決だ。
ただ、腕試しっぽい感じらしく、何をターゲットにしていて、再び来るのかもわからない。
そのせいで、それを監視しているAIのリサをスマホからアンインストールできず、俺へのロリ疑惑の原因となっている。
どうせ消せないなら、少しは役に立ってもらおう、とトラブルの分析を手伝わせているのだ。
「俺をターゲットと推定した根拠は?」
『共通の関係者が、マスターということです』
「その偶然の確立は?」
『六十六点六六六六パーセントです』
ほぼ偶然じゃないか。
つまりは、いたとしたら別々の犯人が、別々の目的での犯行になる。
とはいえ、未解決なのは、どれも俺の知り合いへの明白な害意があってとは限らず、あまり気にする必要はないのかもしれない。
「ご主人様、できあがりました」
実は、リサと分析していたのは、暇つぶしだ。
志桜里のASMRだが、顔だし映像で配信するのは、今後の展開を考えると無理があるということで、イラスト画面で行うこととなり、それを有能なメイド、レイチェルが描き終わるのを、学食でアイスコーヒー飲みながら、待っていたのだ。
志桜里のASMRは、シチュエーションとして、『先生』に耳かきなどを行う。
そのため先日、バイノーラルマイクを膝枕して、オイルマッサージをしたら、タオルを敷いていたが、多めのオイルでスカートを汚してしまった。
今後は、シャンプーなどもやりたいようだが、リアルの映像では、音を出すための舞台裏が見えてしまい、少々萎える。
マイクを膝枕してのオイルマッサージも、囁くために屈みこんで、固定カメラ一台では、ほぼ頭頂しか見えていない。
しかも、オイルマッサージの回では、「なにか写ってる」的なコメントもあり、画像解析等で問題なかったのだが、じゃあもうイラスト画面で、想像して、聴いてもらおう、それこそASMRだ、俺はそれが好きだ、となったのだ。
いや、ASMRって、聴くものですよね?
まあ、耳かきや耳ふーを、顔出しでたまにやるのも、それはそれでマンネリにならなくて良いだろう。
レイチェルが描いたイラストは、制服の志桜里が、白耳3Dioを両手で胸の前にもっているバストショットだった。
「・・・ちょっと、ロリっぽく描けてないか?」
「ご主人様の好みに合わせております」
AIリサの容姿は、俺の最新のし好からというキャッチフレーズで、ツインテール中学生ニーハイミニスカ学園制服だ。
それで、俺へのロリ疑いの風当たりがキツい。
そういえば、レイチェルのメイド服も、あみがメイド学で学んだところの甘ロリに変わったらしく、少女的な要素が強くなっているらしい。
俺が、嫌な顔をしたせいだろう、レイチェルは、こほんと咳払いをした。
「ロリっぽくではなく、ご主人様が、カワイイ物がお好きなご様子なので、それに合わせました」
なにそれ?
「例えば、ミホ様が新しく鞄につけた『カワイイ』小さなヌイグルミを『いつになく目敏く』見つけられたり、志桜里様が熱いおうどんをふーふーしている『カワイイ』仕草を『いつになく優しく』見ていらっしゃったりされますので」
よく見てるな。
そして、『いつになく』って決して『いつも』の俺を褒めてないよな?
とりあえず、勘違いがあるようだから、メイドに言っておこう。
「レイチェル、メイド服は、前の方が、俺好みだ。戻せ。まあ、時々はそれも『カワイイ』から良いけど」
「・・・かしこまりました、ご主人様」
彼女は、今までに見たことのないくらい口角を上げ、スカートをつまみ、片膝を折って、一礼した。
メイドのお世話は、学園内だけ、とのルールらしいので、学園を出て謹慎中ながら裏からメイド喫茶へサポートしに行くレイチェルと別れた。
ウチの事務所とタレント業務の委託をしたら、そのルールはどうなるのか、そして、茜とのお世話合戦が怖い。
あみは仕事で、志桜里は先に事務所へ向かっているので、俺はひとりで、事務所に来た。
今日は、志桜里のASMRの録音の立ち合いなのだ。
幸い、タキシード姿を餌にせずとも、あんな間接痴漢騒ぎがあったのに、ASMRを続ける気になっているようだが、俺の立ち合いは、絶対のようだ。
むしろ、イラスト画面になって顔が映らなくなった分、俺へ視線が、固定されている。
とはいえ、既に配信が目的というより、彼女が俺の『声』ではなく、この録音を聴いて眠れる、というのだから拒むわけにはいかない。
無事、サテンの手袋を使った耳マッサージの録音も終わり、クラッキングもなくアップロードもでき、俺は茜の車で、自分の部屋へ送られている最中だ。
寛容に見えて、どうにも俺が、誰のASMRを聞いても嫉妬しているらしいマネージャーに聞いてみる。
事務所の『専務』としても、従業員への心のケアは重要だ。
「俺が、志桜里のASMRの録音に立ち会ってて、嫉妬してるのか?」
「マネージャーとしては、まったく、」
なら、安心だ。
「茜、個人としては、沢田先生が他の女を抱いているのを見せつけられて、しかもそれを斡旋させられて、耐えてるプレイです」
どこが、「まったく」なんだ?
新人のころは、もっと違う意味で素直だった気がするのだが、優秀になるということは、ナニかを犠牲にさせてしまうのかもしれないな。
車が、俺の部屋の側で止まった。
「おやすみなさい、沢田先生」
「あー、コーヒーでも飲んでいくか?」
「デレた!」
いや違うし、でも優しい同僚としては、いろいろと心配しているのだよ。
「疲れて眠そうだから、帰りに事故られても困ると思ったんだが」
しかし、聞いていないのか、スーツの上から、自分の身体を触って確認し、
「・・・今日のパンツ、かわいかったかな?」
「元気そうだから、帰れ」
事務所のポテトチップスの袋に盗聴器をしかけた犯人がわかり、一安心な雰囲気だが最近、起きたトラブルのほとんどが、実は未解決のままだ。
それで少し、整理している。
偶然としか言いようのない俺の楽屋の停電や天井板が落ちたり、更には、収録がノイズだらけでお蔵入りしたり、キャシーの救急車搬送騒動など、不運なトラブルも多かった。
あみを『メイド喫茶で働かせろ』という脅迫?メールは、実際にあみが働いた後、リアクションはなく、放置というか、未解決だ。
あみとレイチェルを狙った傷害犯との関与も疑われたが、少年Aは否定しているらしい。
事務所にしかけられた盗聴器の犯人は捕まったが、社長宅へ彼は入ったことなく、未解決だ。
もっとも、社長が中古で購入する以前のマンション住人へのしかけだったのかもしれないが。
茜の元ヒモからの脅迫は解決したが、力を借りた金本からの断れないオカルト番組への出演要請が、未解決ともいえる。
志桜里のASMR動画への『何か写ってる・聞こえる』は、解析では問題ないようだが、使っていたノートパソコンのクラッキングは未解決だ。
ただ、腕試しっぽい感じらしく、何をターゲットにしていて、再び来るのかもわからない。
そのせいで、それを監視しているAIのリサをスマホからアンインストールできず、俺へのロリ疑惑の原因となっている。
どうせ消せないなら、少しは役に立ってもらおう、とトラブルの分析を手伝わせているのだ。
「俺をターゲットと推定した根拠は?」
『共通の関係者が、マスターということです』
「その偶然の確立は?」
『六十六点六六六六パーセントです』
ほぼ偶然じゃないか。
つまりは、いたとしたら別々の犯人が、別々の目的での犯行になる。
とはいえ、未解決なのは、どれも俺の知り合いへの明白な害意があってとは限らず、あまり気にする必要はないのかもしれない。
「ご主人様、できあがりました」
実は、リサと分析していたのは、暇つぶしだ。
志桜里のASMRだが、顔だし映像で配信するのは、今後の展開を考えると無理があるということで、イラスト画面で行うこととなり、それを有能なメイド、レイチェルが描き終わるのを、学食でアイスコーヒー飲みながら、待っていたのだ。
志桜里のASMRは、シチュエーションとして、『先生』に耳かきなどを行う。
そのため先日、バイノーラルマイクを膝枕して、オイルマッサージをしたら、タオルを敷いていたが、多めのオイルでスカートを汚してしまった。
今後は、シャンプーなどもやりたいようだが、リアルの映像では、音を出すための舞台裏が見えてしまい、少々萎える。
マイクを膝枕してのオイルマッサージも、囁くために屈みこんで、固定カメラ一台では、ほぼ頭頂しか見えていない。
しかも、オイルマッサージの回では、「なにか写ってる」的なコメントもあり、画像解析等で問題なかったのだが、じゃあもうイラスト画面で、想像して、聴いてもらおう、それこそASMRだ、俺はそれが好きだ、となったのだ。
いや、ASMRって、聴くものですよね?
まあ、耳かきや耳ふーを、顔出しでたまにやるのも、それはそれでマンネリにならなくて良いだろう。
レイチェルが描いたイラストは、制服の志桜里が、白耳3Dioを両手で胸の前にもっているバストショットだった。
「・・・ちょっと、ロリっぽく描けてないか?」
「ご主人様の好みに合わせております」
AIリサの容姿は、俺の最新のし好からというキャッチフレーズで、ツインテール中学生ニーハイミニスカ学園制服だ。
それで、俺へのロリ疑いの風当たりがキツい。
そういえば、レイチェルのメイド服も、あみがメイド学で学んだところの甘ロリに変わったらしく、少女的な要素が強くなっているらしい。
俺が、嫌な顔をしたせいだろう、レイチェルは、こほんと咳払いをした。
「ロリっぽくではなく、ご主人様が、カワイイ物がお好きなご様子なので、それに合わせました」
なにそれ?
「例えば、ミホ様が新しく鞄につけた『カワイイ』小さなヌイグルミを『いつになく目敏く』見つけられたり、志桜里様が熱いおうどんをふーふーしている『カワイイ』仕草を『いつになく優しく』見ていらっしゃったりされますので」
よく見てるな。
そして、『いつになく』って決して『いつも』の俺を褒めてないよな?
とりあえず、勘違いがあるようだから、メイドに言っておこう。
「レイチェル、メイド服は、前の方が、俺好みだ。戻せ。まあ、時々はそれも『カワイイ』から良いけど」
「・・・かしこまりました、ご主人様」
彼女は、今までに見たことのないくらい口角を上げ、スカートをつまみ、片膝を折って、一礼した。
メイドのお世話は、学園内だけ、とのルールらしいので、学園を出て謹慎中ながら裏からメイド喫茶へサポートしに行くレイチェルと別れた。
ウチの事務所とタレント業務の委託をしたら、そのルールはどうなるのか、そして、茜とのお世話合戦が怖い。
あみは仕事で、志桜里は先に事務所へ向かっているので、俺はひとりで、事務所に来た。
今日は、志桜里のASMRの録音の立ち合いなのだ。
幸い、タキシード姿を餌にせずとも、あんな間接痴漢騒ぎがあったのに、ASMRを続ける気になっているようだが、俺の立ち合いは、絶対のようだ。
むしろ、イラスト画面になって顔が映らなくなった分、俺へ視線が、固定されている。
とはいえ、既に配信が目的というより、彼女が俺の『声』ではなく、この録音を聴いて眠れる、というのだから拒むわけにはいかない。
無事、サテンの手袋を使った耳マッサージの録音も終わり、クラッキングもなくアップロードもでき、俺は茜の車で、自分の部屋へ送られている最中だ。
寛容に見えて、どうにも俺が、誰のASMRを聞いても嫉妬しているらしいマネージャーに聞いてみる。
事務所の『専務』としても、従業員への心のケアは重要だ。
「俺が、志桜里のASMRの録音に立ち会ってて、嫉妬してるのか?」
「マネージャーとしては、まったく、」
なら、安心だ。
「茜、個人としては、沢田先生が他の女を抱いているのを見せつけられて、しかもそれを斡旋させられて、耐えてるプレイです」
どこが、「まったく」なんだ?
新人のころは、もっと違う意味で素直だった気がするのだが、優秀になるということは、ナニかを犠牲にさせてしまうのかもしれないな。
車が、俺の部屋の側で止まった。
「おやすみなさい、沢田先生」
「あー、コーヒーでも飲んでいくか?」
「デレた!」
いや違うし、でも優しい同僚としては、いろいろと心配しているのだよ。
「疲れて眠そうだから、帰りに事故られても困ると思ったんだが」
しかし、聞いていないのか、スーツの上から、自分の身体を触って確認し、
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