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第二巻:夏は、夜
夏+夜≒夢
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坂井のその後だが、まず建物不法侵入は、形山が被害届を取り下げたこともあり、示談となった。
その条件も、事務所の懲戒解雇と接触禁止の軽い物だった。
坂井は、憑き物が落ちたように素直に、それらを受け入れ、弁護士経由で謝罪を伝えてきた。
どうやら、地方の実家へ戻り、家業の雑貨屋を手伝っているようだ。
ある日、弁護士が検閲した上で、形山に手紙が届いた。
それには、地元で知り合った年下の男性と結婚すること。
晩婚な上、相手は子連れの再婚のため、身内のみの式だけで、披露宴は行わないこと。
そして、形山の幸せを心から願う言葉で、最後は締めくくられていた。
「ちっきしょう!先を越された!裏切り者がっ!」
叫び声に驚いた茜が社長室を覗くと、なぜか笑顔で泣いていたらしい。
「先輩、起きて!やっと暗くなったから、花火はじめるよ!」
揺さぶられた衝撃と声が響き、目が覚めた。
あみの顔が、キスできそうなほど近い。
「ああ、夢を、見ていたんだ」
「うん?どんな?」
「・・・あみが、元気に焼きソバを食べていた」
「・・・もうちょっと、ロマンティックな場面にして」
別荘管理事務所で安売りをしていた花火を買い占め、最後の夜に予定していたのだが、あの状況だったので、持ち帰っていた。
それを八月中に事務所の駐車場で消費しよう、と夕方に集まったのだが、まだまだ夏を主張して陽が落ちず、待っていたのだ。
そうなれば、やることは一つ。
誰かが、何かの番組でもらったが置いて行って、雨曝しになっていたデッキチェアを拭いて酒盛りを始めた。
事務所に所属した津々木のマネジャーを、仕事が俺と被ることも多いので、とりあえず茜が兼任している。
局で番組の打ち合わせをしている彼を迎えに行く直前に、「読め」と科学雑誌を預けていったが、薄明かりでは目に良くない、と放置した。
少しだけ風が涼しく、それが少しだけ物悲しくもある。
そんな物思いにふけっているうちに、昼間の講義の疲れと酔いもあって、うとうとしてしまったのだろう。
バシューっと噴き出す音と閃光。
「先輩、みてみて!」
「あみりん、振り回さないで!」
あみが手に持った花火を俺に見せようとして、ミホが華麗に火花を避けている。
それを、配信できるかわからないながらも、事務所移転を正式に発表した大谷が、スマホで撮影していた。
画角外で、形山が、ロケット花火を手に持ったまま点火しようとしているのを、志桜里が必死に止めている。
危ないのもあるが、音と飛んだ先で近所迷惑だからやるな、それ。
「『カップ焼きソバ風』の試作品です」
レイチェルとなぜかメイド服の仕方が、お盆で運んできた。
夏祭りの象徴のようなソースが香る。
メイド喫茶で「メイドの手料理」企画で振る舞う料理の試作品らしい。
どうやら、いささか腕前が心配な娘でも調理可能なように発案して、腕前がとてもとても心配な志方が実験台としてつくったらしい。
駐車場に、車がキッと音をたてて止まった。
運転席から、茜が転がり出てくる。
「間に合いましたか?」
「すみません、打ち合わせがオシて遅れました」
助手席から津々木も合流したが、こちらはノンビリしたもので、むしろ茜は、そんなに花火したかったのか?
俺は、氷水の入ったバケツから手探りで缶ビールを取り出す。
この夏、あの別荘へ集った全員が無事で、また集合できたことに、感謝の意を込めて、缶を開けた。
バシューっと激しい炭酸の音をたてて、噴き出したビールが俺を濡らす。
「きゃー」
「タオルタオル」
「先輩、何してるのよ!」
大騒ぎの中、俺の足に、何かが当たった。
見る、と黒い子猫が、身体を擦りつけていた。
なんだ、そこにいたのか。
おかえり。
夢を、見ていたんだ。
どこかで、科学雑誌が、滑り落ちる音がした。
初めて、栗本薫氏著「猫目石」を読んで、理解はできても叫びたかった高校生の自分へ
その条件も、事務所の懲戒解雇と接触禁止の軽い物だった。
坂井は、憑き物が落ちたように素直に、それらを受け入れ、弁護士経由で謝罪を伝えてきた。
どうやら、地方の実家へ戻り、家業の雑貨屋を手伝っているようだ。
ある日、弁護士が検閲した上で、形山に手紙が届いた。
それには、地元で知り合った年下の男性と結婚すること。
晩婚な上、相手は子連れの再婚のため、身内のみの式だけで、披露宴は行わないこと。
そして、形山の幸せを心から願う言葉で、最後は締めくくられていた。
「ちっきしょう!先を越された!裏切り者がっ!」
叫び声に驚いた茜が社長室を覗くと、なぜか笑顔で泣いていたらしい。
「先輩、起きて!やっと暗くなったから、花火はじめるよ!」
揺さぶられた衝撃と声が響き、目が覚めた。
あみの顔が、キスできそうなほど近い。
「ああ、夢を、見ていたんだ」
「うん?どんな?」
「・・・あみが、元気に焼きソバを食べていた」
「・・・もうちょっと、ロマンティックな場面にして」
別荘管理事務所で安売りをしていた花火を買い占め、最後の夜に予定していたのだが、あの状況だったので、持ち帰っていた。
それを八月中に事務所の駐車場で消費しよう、と夕方に集まったのだが、まだまだ夏を主張して陽が落ちず、待っていたのだ。
そうなれば、やることは一つ。
誰かが、何かの番組でもらったが置いて行って、雨曝しになっていたデッキチェアを拭いて酒盛りを始めた。
事務所に所属した津々木のマネジャーを、仕事が俺と被ることも多いので、とりあえず茜が兼任している。
局で番組の打ち合わせをしている彼を迎えに行く直前に、「読め」と科学雑誌を預けていったが、薄明かりでは目に良くない、と放置した。
少しだけ風が涼しく、それが少しだけ物悲しくもある。
そんな物思いにふけっているうちに、昼間の講義の疲れと酔いもあって、うとうとしてしまったのだろう。
バシューっと噴き出す音と閃光。
「先輩、みてみて!」
「あみりん、振り回さないで!」
あみが手に持った花火を俺に見せようとして、ミホが華麗に火花を避けている。
それを、配信できるかわからないながらも、事務所移転を正式に発表した大谷が、スマホで撮影していた。
画角外で、形山が、ロケット花火を手に持ったまま点火しようとしているのを、志桜里が必死に止めている。
危ないのもあるが、音と飛んだ先で近所迷惑だからやるな、それ。
「『カップ焼きソバ風』の試作品です」
レイチェルとなぜかメイド服の仕方が、お盆で運んできた。
夏祭りの象徴のようなソースが香る。
メイド喫茶で「メイドの手料理」企画で振る舞う料理の試作品らしい。
どうやら、いささか腕前が心配な娘でも調理可能なように発案して、腕前がとてもとても心配な志方が実験台としてつくったらしい。
駐車場に、車がキッと音をたてて止まった。
運転席から、茜が転がり出てくる。
「間に合いましたか?」
「すみません、打ち合わせがオシて遅れました」
助手席から津々木も合流したが、こちらはノンビリしたもので、むしろ茜は、そんなに花火したかったのか?
俺は、氷水の入ったバケツから手探りで缶ビールを取り出す。
この夏、あの別荘へ集った全員が無事で、また集合できたことに、感謝の意を込めて、缶を開けた。
バシューっと激しい炭酸の音をたてて、噴き出したビールが俺を濡らす。
「きゃー」
「タオルタオル」
「先輩、何してるのよ!」
大騒ぎの中、俺の足に、何かが当たった。
見る、と黒い子猫が、身体を擦りつけていた。
なんだ、そこにいたのか。
おかえり。
夢を、見ていたんだ。
どこかで、科学雑誌が、滑り落ちる音がした。
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