【完結】cat typing ~猫と麦酒~第10回ドリーム小説大賞奨励賞

まみ夜

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番外編:梅雨時

梅雨時の馬鹿共

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「元気ないですね?」
 平日の開店時間前、アニキの他にお客様はいない。
 そのアニキも一人、ざく切りキャベツ(温)を齧るばかりで、物静かだ。
 既婚者のアニキに、師匠の婚約は関係ない、と思うのだけど。
 無くなりつつあったキャベツの塩ダレを、サービスで取り換えながら聞くが、返事がない。
 僕は、いろいろ突っ込むのもよくないな、と思って、立ち上がった。
 その耳に、
「彼氏ができたみたいで」
 意外な言葉が入ってきたのだ。

 師匠の婚約話は、アニキの娘、カスミちゃんの耳にも入っていた。
 よせばいいのに、彼氏はいるのか、という話題になった。
 親とはいえ、セクハラ扱いで勘当されても仕方ないというのに、カスミちゃんは素直に「・・・百田さんカッコいいと思う」と答えたそうだ。
「それ、彼氏じゃないですよね?」
 それでなくても、九十九さんという彼女立候補者が出てきて、微妙な時期だというのに。
 この親馬鹿が絡む、と碌な事にならない。
 当然、そうなった。

「来月から、週に二回ほど、ウチの店舗でトレーニングを担当してくれることになった、九十九さんです」
「初めまして、このお店に通う機会も増えると思いますので、よろしくお願いします」
「初めまして。このお店の経営母体で働いております」
 さすがアニキ、僕との複雑な関係を簡潔に説明して尚且つ、ソツのない挨拶だ。
 とても、親馬鹿とは思えない。
 ちなみに、九十九さんは、来月からのレッスンスケジュール作りを手伝う、という名目でジムに通い、百田さんに猛攻を仕掛けているらしい。
 すでに、外堀である妹の千秋さんも攻略済で、仲良くなっているらしいが、彼女の全てを貫く拳も全てを気づかない朴念仁の盾の前に、その鋭さを発揮できずにいるようだ。
 九十九さん、きっと菊池さんと仲良くなれそうだな、などと現実逃避してしまう。

 その間に、雰囲気を悟ったアニキは、百田さんへの誤解を解いたらしいが、その反動か、「娘に彼氏が」問題を口にしてしまう。
 朴念仁百田さんもそれを聞き、「妹に彼氏が」問題を吐露してしまった。
 僕は、非常事態、と慌ててアボカドをレモン汁とでのトロトロペーストをマヨネーズ代わりにした「アボガドディップのポテトサラダ」を運んでいった。
 が、娘(妹)を嫁にやらん的な会話は止まらない。
 そのまま、テーブルから立ち去るわけにもいかず、おろおろしている、と静かに聞いていた九十九さんが、タンっと音を立てて、ヒューガルデンのグラスをテーブルに置いた。
 しん、と静まる男性陣。
 九十九さんは、百田さんの手を取り言った。
「好きです、付き合ってください」
 唐突ではあるが豪速直球に、さすがの朴念仁の盾も貫かれたか、と思ったが、
「今は、考えられないので。すまない」
 と断りやがった。
 九十九さんは、乱れず立ち上がり、
「それでも諦めません」
 と宣言し、僕に一礼して、足早に帰っていった。
 気まずそうに、ボソボソと、
「今の断り方はどうかな」
「娘さんだったら、付き合い許します?」
「いや、それでも妹さんがフラれたら?」
 などとやり取りする馬鹿共に、
「後を追え、とは言いませんが、もう帰って反省しましょう、ね?」
 とお店から叩き出し、千秋さんとアニキの奥様に、即行メールした。
 フルボッコにされてしまえ。

 後日、当店は、「まともな男性客が少ない」とのクレームを受けたが、否定する材料がなく全面降伏の姿勢をとっている。

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番外編の解説(作者の気まぐれ自己満足と忘備録的な)

「梅雨時の」とあったら(以下略)

「梅雨時の婚約」で、お客様「たち」に、どんな影響が出るかな、と考えた、三部作完結編です。
(いつ三部作に?)
(首藤大先生のるりるり三部作も三話目の予告のときに、三部作って言ってたよ?)
(機動戦艦ナデシコの話題についてこれる人いると思うの?)
当初、菊池さんしか考えていなかったのですが、意外と他にも波紋が広がってそうだな、と男性キャラの中でもお年頃の娘を持つ、アニキにご登場いただきました。
というよりアニキって、いつからこんなポンコツになったんでしょうか。

菊池さん推しとしては、いい友達ができそうで、幸せなんじゃないでしょうか(他人事)。

番外編なのに、新キャラの片想いとか、どうするんだ、って気もしますが。
まあ、そもそも続くかどうかがわからないのが、番外編の醍醐味ですよね?

また、機会がありましたら、このお店にお付き合いくださいませ。
(梅雨時のって、もっと話数少ない予定だったよね?)
(婚約話で広がったね?)
(人間関係大丈夫?)
(朴念仁だから?)
(どうするんだろうねえ?)

まみ夜
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