【完結】cat typing ~猫と麦酒~第10回ドリーム小説大賞奨励賞

まみ夜

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贈物、まで

三誓

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 亡くなった僕の両親は、旅行が好きで、また日帰りでのお出かけも好きだった。
 電車や車で、結構離れた場所のお祭りやイベントに、よく連れて行ってもらった記憶がある。
 まあ、ビールが飲めなくなるので、なるべく電車を使いたがったようだが。
 彼らは、人の良さそうな雰囲気と顔立ち、また若く見えたせいか、出先でよく声をかけられたそうだ。
 曰く、旅行先で、道を尋ねられる。
 もちろん、わからないので、ガイドブックで調べたりする。
 気がつく、と自分たちの目的地の開場時間に間に合わなかったりしたそうだ。
 香港の夜に九龍城砦で、日本人に道を聞かれたときは、真顔で「旅行者」と断り、真面目に「観光客」とか書かれたTシャツを探したらしい。
 ボラれるので、諦めたようだが。
 曰く、旅行先で、カメラを渡され、写真を撮るように、お願いされる。
 一組撮る、と私たちも我々も、と添乗員のように撮らされる。
 気がつく、と自分たちは一枚も写真を撮らないで旅が終わったりしたそうだ。
 京都で、修学旅行の集団に迫られたときは、真顔で「違う学校でも集合写真一枚」を撮り、真面目に、写真を配れるよう住所のリストをつくり、コピーして渡したらしい。
 うかつにも、自分たちの住所も教えてしまい、学生から礼状や、PTAからの他校交流の感謝状や、挙句の果てには写真きっかけで結婚します招待状の後、子供の写真入り年賀状まで届いて、閉口したらしいが。
 曰く、旅行先で、歩いているとお菓子を貰う、食事をしていると奢ってもらったり、食べきれないからと料理をもらったりしていた。
 気がつく、とポケットでビスケトが砕けてチョコが溶け、新しいお菓子が創造されていたり、旅行中に食費をほとんど使っていなかったりしたそうだ。
 明石の居酒屋で、隣席になった老夫婦に、明日は記念日なので一緒に食事を、と誘われたときは、真顔で「他人」と断り、真面目に、彼らの息子夫婦に連絡して、金婚式の宴会をセッティングしたらしい。
 家族水入らずでしてほしいので、宴会に参加する気はなく、手配を済ませて昼間のうちに移動しようとしたが、駅のホームで捕まり、感謝の万歳三唱をされて、逃げるように神戸への電車に乗ったらしいが。
 僕の両親は、ロードムービーでも撮っていたのか?
 といったことが多々あり、両親は、お出かけ三つの誓いを制定した。
・道を聞かれない
・写真を撮らされない
・食べ物をもらわない
 しかし、そう誓ったものの、僕が産まれたことで、誓い破りに拍車がかかったようだ。
 家族連れだから現地の人だろう、と道を聞かれる。
 父親が、母親と僕の写真を撮っている、と三人で撮りますよ、とカメラを奪われる。
 お子さんに、とおまけやサービスでデザートなど食べ物をもらう。
 後に、誓いの二つ目は、
・写真を撮らされない、撮られない
 となった。
 三つの誓いは、お出かけの度に、父親が「また達成できなかった」と嘆くのを母親と笑う、という家族の秘密だったのだ。
 両親が亡くなってから、すっかり忘れていた。
 猫オバチャンに写真撮られたり、ミカンおまけしてもらったり、オミギリ奢ってもらったり結構、破ってるなあ。
 でも、破っていることが、僕が両親に似た雰囲気の証明のようで、まだ両親と繋がりがある気もして、嬉しかった。
 ビルは、食べ物じゃないから、もらっても誓い破りに、入らないよね?
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