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第二部 第2章
356.ピクニックだ
しおりを挟むやはり枢機卿は、フロちゃんが聖女だという事を知っていたのだわ! でも、どうして……? 今もわたくしたちが柱の影に隠れていた事がわかっていた。しかも人数や、誰が隠れているかまで……それが、枢機卿の特異魔法ですの?
「……聖者はここ50年は現れておりませんわ。それに、フローレンスはまだ3歳ですもの。祝福の儀すら受けていない幼子を、聖女だなどと、そのような事、認めるわけにはまいりません」
とにかく、枢機卿はフロちゃんが聖女だと、わたくしたちが知っているとは思っていないはず。何とか誤魔化さないと。
「ディバイン公爵夫人、これは『神託』です」
神託ですって!?
「聖女フローレンスは、当然教会で保護すべきでしょう。もちろん、親御さんにはすでに了承済みですので、あなたが口を挟む事ではないのですよ」
了承!? 娘を目の中に入れても痛くないと体言しているようなあのドニーズさんが、了承するわけがないでしょう! 幼子を親から奪うそれが、神の意思だとでもいうの!?
「神託などと、それこそ聖者が受けるものですわ。枢機卿猊下、その神託は、どなたがお受けになりましたの? その神託を受けた方こそ、聖者なのではなくて」
「いいえ。神託は聖者でなくとも、授かる事はあるのですよ」
「ディバイン公爵夫人はご存知ないようですが」と、子供を堂々と誘拐しようとしている最低な人が、それでもなお穏やかな笑みを浮かべているなんて……、わたくしには不穏な笑みにしか見えませんが、この人は一体何を考えておりますの……?
「しかし、ここであなたと問答をする時間は、残念ながらありません。礼拝堂も、この悪天候ですから閉めさせていただきますので、皆様は早々にお帰りください」
先程の様子から、枢機卿はどこかへフロちゃんを連れ出そうとしていた。もし、ここでわたくしたちが追い出されては、フロちゃんを取り返す事が出来なくなる……。
「枢機卿猊下、この悪天候で追い出されてしまっては、わたくしたちも立ち往生してしまいますわ」
「そのような事はないでしょう。何しろこの悪天候の中、教会にやって来たのですから」
ああ言えばこう言うとはこの事ですわね! わたくしもよくお父様に、「イザベル、君は口が達者だから、気をつけないといけないよ」と言われた経験がありますけれど、この人も絶対言われていますわね。
「すうききょう、もうしわけないが、すこしのあいだ、こちらにとどまりたいのだ」
その時、イーニアス殿下がわたくしの後ろからひょっこり出てきたではないか。
「殿下……っ、いけませんわ」
「イザベルふじん、だいじょうぶだ」
イーニアス殿下は威風堂々と現れ、枢機卿と女性を見据えた。
「……これはイーニアス第二皇子殿下。祝福の儀以来でございますね」
「うむ。そのせつは、せわになった」
この堂々とした様、皇后様にそっくりですわ!
「今回は、ディバイン公爵夫人とお越しのようですが、このような悪天候に何故、護衛も連れず、教会にいらしたのですか?」
やはり、柱の影に居る者が殿下の護衛ではないという事もわかっていますわ……まさか枢機卿猊下の特異魔法は……っ
「うむ、あかいとり……ぁ、これはないしょだったのだ……」
途中までは凛々しいお顔でしたのに、今は困った顔で後ろを振り向いておりますわ。「アスでんか、がんばって」とノアの声援にまた凛々しいお顔に戻りましたけれど。
「えっと……あ! ピクニックだ!」
「は?」
イーニアス殿下……、いえ、お可愛らしいのですけれどね。
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