継母の心得

トール

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第二部 第3章

394.秘密の会合と荒れてしまったお肌

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やっと新素材の名称も決まり、トップ会談の様相を呈するこの会合も終わりを迎えるかと思いきや、皇后様はこの際だと言わんばかりに、新素材……ベリッシモを活用しての産業やグランニッシュ帝国としての今後の展開、レール馬車や公園、そしてベリッシモから派生したゴムやプラスチックなどの話し合いまで始まってしまったのだ。

「お姉様、ますます僕が呼ばれた意味がわかりません! 僕はまだアカデミーに通っている身ですよ!?」
「通常は当主のみ参加が許されるような会合ですものね……」

わたくしも、同じく呼ばれた意味がわかりませんわ。と、弟と共に戸惑いを隠せないでいた。

会議はあり得ないスピードで色んな事が決まっていく。その様子に、皇后様とテオ様、ウォルトの優秀さが理解できた。意外にも父もそれについていけている事は、本当に驚きましたわ。

「───それと、さっきのイザベル様の化粧品『レース・アルカーナ』に関しては、教会云々は無かった事にしましょう。クレオ大司教は信用に値する人かもしれないけれど、エンプティの件も解決していない今、教会にこれ以上の富と権力を与えるべきではないわ」

わたくしが勝手に考えていた事をつい口走ってしまった為に、議題にまでなってしまいましたわ。
まだクレオ大司教に伝えていなくて良かった……。

「私も同意見だ」
「異論はありません」
「娘が申し訳ありません……」

テオ様とウォルトが頷く中、お父様が申し訳なさそうに呟く姿に、こちらが申し訳なくて、ちょっと落ち込みましたわよ。

一年近く前のあの冬の日に、ノアの為に出来た化粧水が、ブランド名まで付いてとうとう売り出されるのね───


◆◆◆


~ ある冬の出来事 ~


「───の、ノアのお肌が、荒れておりますわ!!」

冬場は肌が乾燥しやすい季節。それはよくわかっておりますが、ディバイン公爵家に来てからは、私にエステ隊がついておりますので、特に気になってはおりませんでしたの。

ですが、今ノアと手を繋いだら、カサッとしておりましたのよ! よく見たらほっぺもカサついておりますし……っ

私の可愛い息子のお肌が、乾燥しているなんて!!

「か、カミラ、これはどういうことなのかしら!?」
「奥様……実は、ここ二日間ほど、ノア様のお食事に偏りが出ているんです。皇宮で甘いもの、そして帰ってからも甘いもの、あげく昨夜は揚げ物でしたから……。申し訳ありません!」

いつもはお野菜もたくさん食べておりますものね。食生活が急に乱れたから、肌の水分量が不足してしまったのだわ!

「カミラは悪くありませんわ。皇宮に行っておやつをお断りは出来ませんし、帰ってからはわたくしが強請られるまま与えてしまったのですもの……っ、だけど大変ですわ……ミランダ、料理長に今日は豚肉と豆類、卵と野菜を中心にしたメニューにするよう伝えてちょうだい」
「かしこまりました。奥様」
「カミラは、綺麗なお水を用意してもらえるかしら。後、先日石鹸作りをした時にヤシの実やオリーブの油脂から抽出したとろっとしていたアレ、持ってきてちょうだい」
「は、はい!」

ノアはキョトンとして、首を傾げるばかりで、自分の肌が荒れている事に気付いていないようだ。

「ノア、ほっぺた痒くないかしら?」
「ん~……あのね、しゅこぉし、かいかいよ」

やっぱり痒いのね……。
私が悪いのよ。甘いものや揚げ物を食べさせてしまったから……。気をつけてあげられるのは私だけなのに!

「ノア、ごめんなさい。そのかいかいはね、お母様が、おやつをあなたの欲しがるままに与えてしまったから……」
「おかぁさま、わりゅい、ないのよ。よちよち」
「ノア……」

肌の乾燥ごときと大袈裟に思われるかもしれないけれど、食生活の乱れは後々大きな病気に繋がりますもの。気を付けなくてはいけないわ。

それに、ノアのぷにぷにマシュマロ肌は、人類の宝よ!

「奥様! 持ってきました!! これですよねっ」

カミラが持ってきたのは綺麗な水と、ヤシの実やオリーブの油脂から抽出した、いわゆるグリセリンというものだ。
水100CCに対して、グリセリンを5~10CCを混ぜるだけで化粧水が出来る。
精製水が良いとも言われるが、浄水でも大丈夫なのだ。
精製水だと日持ちがしないのと、準備に時間がかかるというのもあるので、今回は浄水にしてもらった。

手作り化粧水のイベントに参加した事があったから、知っておりましたのよ。

ここにローズマリーをウォッカなどのアルコール度数の強いお酒につけて、1~2週間置き、エキスを抽出したものを精製水で薄め加えると、より効果の高い化粧水となるのだけれど、肌に合わない人もいるので、水とグリセリンだけのものが一番良いのではないかと、個人的には思っている。

「さぁノア、このお水をお顔やおててに付けましょうね」
「? おみじゅ、ちゅけりゅの」

そう言って目を閉じるので、ほっぺたと手に付けてあげる。

「ちゅめたーい」

キャッキャと喜び、はしゃぐので、思わず笑ってしまいましたわ。

そういえば、帝都の近くにある、皇族も御用達の保養地では、温泉が湧くと聞きますわ。そちらへノアを連れて行ってみようかしら。温泉は肌にも良いですものね。

「かいかい、ないの!」
「暫くの間は、お風呂の後にこのお水をつけるようにしましょうね」
「はーい!」

ノアにエステはまだ早いけれど、天然由来の化粧水やシアバターなら赤ちゃんでも使えますわ。

「……そういえば、聖水にグリセリンやハーブエキスを混ぜるとどうなるのかしら?」

毒消し効果がある聖水なら殺菌作用も高そうですし、アレルギーになるようなものも抑えてくれたりしないかしら……。

あら、ちょっと試してみるのもよさそうですわ。

なんて、軽い気持ちで後日試してみたのだけれど、私の肌がびっくりするほど綺麗になったので、聖水に様々な植物のオイルを混ぜて使う事にはまっていたのだけれど、ある日……、

「お、奥様……っ、ありがとうございます!! 奥様からいただいた化粧水で、火傷の跡が消えたんです!!」
「私も、アトピーの後が消えました!!」

使用人たちにもサンプルを使用してもらったら、思わぬ効果が現れたから驚いた。

「え、火傷跡やアトピーにも効くんですの……??」
「はい! これで何の憂いもなく、彼からのプロポーズに返事が出来ます! 本当にありがとうございます……っ」

え、えぇ……!?
火傷やアトピーの跡が消えるということは、つまり、傷が治るって事ですの!?

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