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第二部 第4章
492.窓に映る影
しおりを挟む庭の遊具で子供たちが遊ぶ所を、オリヴァーと眺めていた午後、
「よーてーたん、ふりょちょ、あっち」
フロちゃんがわたくしの右手を、
「おかぁさま、わたちと、あっちいくのよ」
ノアがわたくしの左手を掴み、二人が同時に反対の方向へ進む。
こ、これは……大岡裁きの逆バージョン!?
「お姉様、モテモテですね」などと弟は紅茶を飲みながら笑って見ているだけで、助けようとはしない。
「かぁちゃ、ぺぇちゃ、ちゅべぃあー!」
ドレスを掴むぺーちゃんも加わって、三方向に引っ張られておりますわ! ぺーちゃん、「ちゅべぃあー」って、もしかしてすべり台の事かしら?
「三人とも、ちょっとお待ちなさい。お母様は分裂できませんわ。ジャンケンして、勝った人の所から回りましょう」
「ぁい! じゃーけん」
「はい! わたち、かちゅのよ」
「にゃ!」
子供たちは素直に円になって、ジャンケンし始める。その様子が可愛くて、ニヤニヤが止まりませんわ。
「ふりょ、かーち!」
「まけちゃったの……」
「にゃ……」
フロちゃんが勝ちましたのね。グーにした手を掲げて、勝利を宣言しておりますわ。ノアとぺーちゃんはがっくりしておりますわね。
「よーてーたん、ふりょ、かっちゃ!」
「そうですわね。じゃあ、フロちゃんの行きたい方から回りましょう」
「ぁーい!」
フロちゃんはニコニコと、わたくしを自分の連れて行きたい所へ誘う。後ろからは、ノアとぺーちゃんが二人、手を繋いで、さっきの落ち込みはなんだったのかというように、ご機嫌にお喋りしながらついてきていた。
「よーてーたん、いっちょ、ぶーりゃこ!」
ブランコの前で、フロちゃんに一緒に乗りましょうと誘われるが、お腹の大きくなったわたくしと、二人乗りは難しそうなので、揺らしてあげる事にする。
フロちゃんはまだ小さいから、落ちないようにゆっくり揺らしてあげないといけませんわね。
「そーれ」
「しょれー!」
足を高く上げようとするフロちゃんに、笑みが漏れる。
「あらあら、フロちゃんったらお転婆さんですわね」
「おちぇーばぁ?」
「とっても元気、という意味ですわ」
「ふりょ、げーき!」
可愛い聖女様ですわ。
視線をフロちゃんからノアに移すと、ノアとぺーちゃんは、ハンモックタイプのブランコで、カミラとマディソンに揺らしてもらって楽しんでいた。
ハンモックタイプだと、赤ちゃんも乗れるから、ぺーちゃんも楽しそうに遊んでおりますわね。作って良かったですわ。
「おかぁさま~」
「かぁちゃ!」
手を振る天使たちに振り返しながら、フロちゃんのブランコを揺らしていたその時だ、
「あれ? お姉様……誰かが、こっちを見ていますよ」
「え?」
「ほら、あそこの部屋の窓から……」
オリヴァーの言葉に、一度ブランコを止め、弟が指差す方を見ると、ある部屋の窓に人影が見えた。
「奥様、あの部屋はエリス王女がいらっしゃる客室です」
ミランダがそっと耳打ちしてくれる。頷き、もう一度その部屋を見るが、人影はなくなっていた。
「……お姉様、ロギオン王国の王女を保護されたとは聞きましたが、本当に大丈夫なんですか? ロギオン王国はあまり良い噂を聞きません」
心配そうにわたくしを見る弟に、首を横に振る。
「王女様にご挨拶させていただいたのだけれど、静かな方でしたわ。何かを企むような方には、とても見えなかったのだけれど……」
「お姉様は、警戒心をお母様のお腹の中に置いてきてしまっていますからね」
ちょっと、酷い言いようですわよ? サリーまでオリヴァーの後方で頷かないでちょうだい。
「ミランダ、君はお姉様と共に行動しているよね? ロギオン王国の王女を見て、どう思ったか聞かせてもらってもいいかな?」
「はい、オリヴァー様。私も奥様と同様に、何かを企んでいるようには見えませんでした」
そうですわよね。ディバインの影の一人であるミランダが言うのだから間違いありませんわ。
「ミランダが言うのなら、問題ないか……」
オリヴァーがミランダの言葉に安堵していた所で、「一つ、よろしいでしょうか」と、音もたてずに前に出てきたサリーが、真顔で片手を上げたのだ。
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