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第二部 第4章
530.知らず知らずの緊張
しおりを挟む『エンツォに、ちかづくなー!』
ロギオン国王の監視をしていたアカは、お気に入りの人間のピンチに飛び出した。
「シモンズ伯爵、良かったら中庭で菓子でも摘みながら話さないか?」
『おかし!? アカも、おかしたべるー!』
しかし、最近妖精たちは、『おかし』『おやつ』『スイーツ』という言葉にすこぶる弱くなっていたのだ。
楽しい事も大好きだが、美味しいものにも目がないというのが妖精の性質だった。
「君の娘さんの話をしようではないか」
「!? イザベルに、何をしたのですか……っ」
『きょーの、おかし、なにー?』
アカの頭の中は、今日のお菓子でいっぱいなのだ。
「気になるのならば、付いてくるといい」
「……わかりました」
『おかし、きになるー!』
アカがお菓子を思い浮かべてヨダレを垂らしている間に、お気に入りの人間は危険な人物に連れて行かれようとしていた。
『ハッ! エンツォ、それ、ウソー! ベルぶじー!』
やっとその事に気付いたアカだったが、残念ながら誰にも姿が見えないので、エンツォやロギオン国王が止まる事はなかった。
『た、たいへん! テオに、おこられるー!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テオ様は自信満々に、お父様は大丈夫だと言い切ったが、すでに手を打っているという事だろうか。それなら……
「テオ様、もしかしてお父様には、アカたちが……?」
今ここにいない妖精の名前を出せば、アカとはなんだろうか? というように王女様は首を傾げる。彼らには悪いのだが、さすがに妖精の事は教える事は憚られる。
「いや、キノコは関係ない。勝手にロギオン国王を監視しているようだがな」
「か、勝手……?」
妖精は自由だから、そういう事もあるのでしょうけれど……。アカもアオも、わたくしたちの為に頑張ってくれていますもの。戻って来たら褒めてあげなくちゃ。
「とにかく、安心していい」
テオ様は、なぜ大丈夫なのかも教えてくださらなかった。そうなってくると、余計気になるものだ。
わたくしのお父様ですもの。心配して当然ですわ。
「お姉様、一体何事か、詳しく教えてください!」
「おかぁさま、おじぃさま、あぶない……?」
オリヴァーとノアまで心配そうにこちらを見てくるではないか。
「オリヴァー、ノア……」
口を開いたと同時だった。扉が開き、「にょあ!」と可愛い顔を覗かせたにゃんこ坊やに、空気が緩む。
「ぺーちゃん、おっきしましたのね」
「にゃ!」
「よーてーたん」
にゃんこのように返事をする、ぺーちゃんの後ろから姿を現したフロちゃんが、わたくしに駆け寄ってきたので、抱きとめた。
「あらあら、フロちゃんったら、髪をこんなに跳ねさせて」
寝癖の付いた後ろ髪を、手櫛ですくが、しっかり癖がついていて直らない。
直毛だと、寝癖も目立ちますわね。これは一度水で湿らさないと……
二人を連れてきたマディソンを見れば、首を横に振るではないか。
きっと直す暇もなく、起きてすぐ駆けてきましたのね。
ご飯だと、慌ててやってくるフロちゃんとぺーちゃんが想像できて、身体から少し力が抜けた。
わたくし、お父様の話で前前世を思い出して、知らず知らずに緊張しておりましたのね……。
緊張が解れたからか、周りの人顔が目に入ってくる。
皇帝陛下や皇后様、オリヴァー、ミランダにマディソン、そしてイーニアス殿下に、なによりわたくしにはノアとテオ様がいるではないか。
「テオ様が大丈夫だと仰るのなら、信じますわ」
「ベル……、ああ。君が心配するような事には絶対にならない。私がさせはしない」
テオ様の言葉が、わたくしをこんなにも安心させてくれる。
「あの人は……、王になる前はあんな風ではなかったのに───」
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