継母の心得

トール

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第二部 第5章

545.反省



「いーち、にー、さーん……」

数を数えるノアの声をBGMに、口の端を上げる。

わたくし、初代双子王の特異魔法が何か、わかったかもしれませんわ。

「お姉様?」
「オリヴァー、全て繋がりましたわ!」
「へ?」

間の抜けような表情で、わたくしを見る弟は、サリーがここにいれば、「お嬢様にそっくりですね」と言いそうなものだった。

「もぉ、いーかぃ!」
「まーじゃじゃ、じゃよー!」
「もういーよー」
「みゃー、にゃ!」
「まだ? もう、だいじょぶ、どっち、かちら?」

あら、これはオーガごっこではなく、かくれんぼですわね。

元気いっぱいのノアたちの声に笑みが漏れる。

「お姉様、何が繋がったのですか?」
「フフッ、それはね───」

オリヴァーに説明しようとしたその時、扉が小さくノックされたのだ。

「わたち、ノア、オーガよ。だれか、いましゅか?」
「あら、ノアが来ましたわ」

ここに隠れている人がいると思ってきましたのね。

「随分可愛いオーガさんがやって来ましたのね」
「おかぁさま!」

扉を開けてあげると、ノアが嬉しそうに抱きついてくる。

「可愛いオーガさん、もしかして、殿下たちとかくれんぼしているのかしら?」
「しょうよ! わたち、オーガ」

胸を張り、自分がオーガ役なのだと教えてくれる。

「おかぁさま、おへや、さがちて、いい?」
「ええ、もちろんよ」

部屋に招き入れると、キョロキョロし、オリヴァーを見つける。すると、満面の笑みを浮かべ、「おじさま!」とオリヴァーへと駆けていく。せっかくわたくしと手を繋いでおりましたのに……などと弟に少し嫉妬してしまう。

「おじさま、アスでんか、います、か?」
「ノア、かくれんぼをしているんだよね? 僕が教えてしまったら、楽しくないよ?」
「あっ、わたち、ひとり、さがしゅ!」
「うん。頑張れノア」
「はい!」

まぁ、オリヴァーも叔父らしくなってきましたわね。

息子と弟のやり取りに、嬉しくなって目を細める。

「どこにも、いないの……」
「そうだね。他の場所にいるかもしれないね」
「……おじさま、いっしょ、ちてください」
「え? あ、そうだね。一緒に行こうか」
「はい!」

ノア!? わたくしではなく、オリヴァーと一緒に行きますの!?

「ノア、お母様は!?」
「おかぁさま、あんしぇい……、あ……、はんせい? ちないと、めっ。あかちゃん、かなちぃのよ」
「そんな……」

反省!? わたくし、反省しないといけませんの……?

この後、ノアとオリヴァーを呆然と見送りながら、わたくしは崩れ落ちたのだった。

「反省、ですわ……」


ーーーーーーーーーーーーーーー


皇城から出た一台の馬車は、ほどなくして貴族街にある屋敷の一つに入る。大粛清の際に取り潰された子爵が所有していたその屋敷は、最近どこかの富豪が購入したらしい。

屋敷の裏に回って停まった馬車は、どうやら使用人が使用する薪を届ける為に皇城へ出入りしている業者のものだ。

「お届けにあがりました」
「中に入れてくれ」
「はい」

業者は慣れたように荷物を屋敷の中へと運ぶ。

「問題なく通過できたようだな」
「はい。門番のエリックという男には、病気がちの母親がいますからね。治療を報酬に、人質でもある事をチラつかせましたら、真っ青な顔をして手を貸してくれましたよ」
「ふんっ、皇城の門番ですら、弱味はあるものだ」

業者と屋敷の従者が恐ろしい会話をしながら、大きな木箱を開けると、そこにはイザベルの父、エンツォが気を失った状態で倒れていたのだ。

「これで新素材は王のものだ───」

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