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第三章
光魔法ってやり方によってはエグい攻撃魔法になりかねないよ
しおりを挟む「足枷を取ってあげないとね」
エルフの所へ行こうとすれば、筋肉の檻が強固に行く手を阻む。
「いや、動けないんですけど…」
「オメェが行く必要はねぇ。トモコかヴェリウスがやってくれる」
ロードは何故か私をあのエルフに近づけたくないらしい。
別に綺麗な男の人が好きで興味を持っているわけではないのだが、疑われているのだろうか。
「言ってんだろ。オメェの心変わりは疑っちゃいねぇって。ただ、他の男につがいを近付けたくねぇんだよ。ま、人族…鬼神の本能だな」
「人族や鬼神って大変だね…」
嫉妬一つ取っても、相手を殺しちゃう位感情が振り切れてしまうって言ってたしな。
「まぁ、行き過ぎてるかもしれねぇが、他の種族だって大して変わんねぇだろ。どんな種族であれ、大なり小なり嫉妬はするしよぉ」
「まぁ確かに」
ロードの言い分に納得していると、ガシャガシャと鎖が鳴る音がしてきたのでエルフの彼の方へ目を移す。
トモコが一生懸命足枷を取ろうとしている姿が見えるが、手の平には小さな火球浮かんでいる。
「トモコ、何やってるの??」
「この足枷をこれで焼き斬ろうと思って」
「そんなもんぶつけたら足枷どころか足そのものが炭に変わるわ!!」
明らかにやってはダメな事をやろうとしているトモコに叫び、止めに入った。
何をやっているんだこの子は。
「え~じゃあ、光魔法に切り換えてレーザーで足枷を切るよ~」
あ~光を増幅して発射したらレーザーだからね。光って電磁波らしいから、電子レンジとかも光魔法で出来るかも…波長を変えれば赤外線や紫外線にも…っておい!!
「レーザーも危なくないかな!? 足ごと切ったとかスプラッタな結果はいりませんよ!?」
『トモコよ、レーザーとは何なのだ? また新たな魔法か?』
今!? ヴェリウス今なの!?
「ああ…神よ…っ このような辱しめを受けてもなお、私に生き続けろと…っ そう仰るのですね……」
呆然としていたエルフの彼が天を仰ぎ、涙を流しながらスポットライト(窓から差し込む光)を浴びて嘆いている。
皆好き勝手にやり過ぎてもうどうにも収まらない状態だ。
「何という試練…っ 楽にはさせぬと……っ」
悲劇的な1人芝居は、周りの個性的な神々のせいで喜劇の様相を見せている。
その美しい涙はトモコのレーザー発射を受けて、誰一人注目する事もなかったし、麗しい声で紡がれる台詞はヴェリウスの『おおっ』という感嘆の声にかき消されているのだ。
「……可哀想すぎる…」
「そうか? 俺ぁ自分に酔ってる滑稽な男に見えるが」
滑稽に見えるのは、滑稽な神々のせいであろう。そしてあれは自分に酔っているんじゃない。神々に感謝の念を捧げているだけなのに、こっちの姿が見えないから、違う方向に向けて感謝を捧げるハメになっただけなのだ。
可哀想だからそんな穿った見方をしてはいけない。
「ーー…だから光魔法は回復だけじゃなく攻撃面でも使い勝手の良い魔法なの」
光魔法の有用性についてヴェリウスに語っているトモコと、嬉しそうに聞き入っているヴェリウスを見ていると、エルフの彼に同情してしまうのも無理はないだろう。
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