異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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ズボラライフ2 ~新章~

80.パーティーは毎回中止になる

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双子を人間として育てると発表した途端会場中が阿鼻叫喚の大パニックに見舞われた。私が招待した人間達は顔面蒼白で、ルーベンスさんの奥さんの内数人とコリーちゃんのお父さん、イアンさんが失神。神々も次々に倒れていき、珍獣救助隊が大活躍するという大騒動にパーティーどころではなくなった。

私はというと、ロードに双子共々控えの間に押し込まれ、暫く悲鳴の途絶えなかった会場の音をBGMに首を傾げていた。


言い訳させてほしい。

神王ってさ、仕事っていう仕事は特に無いし深淵の森からもほぼ出ないでしょ。別に神々と会うわけでもないし、服屋の仕事も人族としてやってるけど誰にも何も言われた事もないんだよ。会場中から悲鳴が上がるような大事になるなんて思わなくない? 貴族のノブレスオブリージュみたいな事もない立場の自分の子供を、人間として育てたとして何か問題でもあるのだろうか??


「ロードさーん!! ロードさんの精霊も救助隊に回ってもらってもいい!?」
「落ち着け。すぐに人数回すからトモコは人間の招待客から順に外に出せ。神々の対応はヴェリウス達がする」
「はっ 了解であります!!」

控えの間の外からはロードの冷静な指示が飛んでいる。さすが師団長。伊達ではないらしい。

暫くして会場に続く側の出入口のカーテンが開きロードが戻ってきた。

「ミヤビ、大丈夫か?」

あのロードが怒るでもなく大丈夫か聞いてきただと!?

「怒ってないの?」
「まぁ、何の相談も無しに宣言してくれた事にゃびびったが、そうじゃねぇかとは思ってたしな。しっかし神々のあの絶叫にゃあさすがのオメェも驚いただろ」

そう言って苦笑いしながら頭を撫でてくるので呆けてしまった。

「ごめんなさい……」
「俺ぁこのタイミングで伝えるのは悪ぃ事じゃねぇと思うが、ま、悪いと思うなら相談位ぇはしてくれや」

ロードの言葉に頷くが、いつものロードと違い優しすぎる気がする。もしかして偽者だろうか。

「オメェまた変な事考えてんな」

頬を引っ張られた。やっぱりこいつはロードだ。

「怒らねぇのは、事前に双子を人間として育てる事を話し合ってたからだろうが」

そういえば、双子が産まれた時に二人で話し合った事があった。

神王の子供として育った場合、人間の学校にも浮島の学校にも通えず友達も作れないのではないか。就職もままならず何だかわからないプライドだけが高くなり、わがままで横柄な子になるのではないか。そうロードに相談したのだ。ロードは確かに学校に通うのは難しい事、友人は神々が同じ年の子供を紹介する形になるのではないか、就職は神だしなぁ等と一つ一つ丁寧に教えてくれた。その結果、人間として育てた方が良いだろうという話になったのだ。

「話し合いは大切だよね」

うんうんと頷いていればまた頬を引っ張られた。

「ヴェリウスにゃあ激怒されるぜ」
「か、庇ってくれる?」
「当たりめぇだろ。可愛いつがいを守り愛でる為に俺は生まれた」
「おおっ」

何だかロードが頼もしいぞ!!

「庇ってやっから、夜はうんとサービスしてくれよ」

やっぱりロードはロードだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『ミヤビ様、私に何かおっしゃりたい事はありませんか』

第一声は絶対怒鳴り声だと思っていたヴェリウスは、逆に静かな声で私を追い詰めていた。

「す、スミマセン」
『お謝りになられる事をなされたのでしょうか』

ヴェリウスが今までになく怒っている!! 冷気が足元から漂ってきてゾクゾクする!!

「ヴェリウス、その辺で勘弁してやってくれ。オメェだってミヤビがロビンとディークを人間として育てたいって事は知ってただろ」
『神王様の血を継ぐ尊き御方を人間として育てるなど、神族が受け入れられるわけがなかろう』
「その神王様が望んでるんだ。受け入れてもらうしかねぇだろうが」
『そのような事は分かっている。だからこそタイミングというものがあるのだ』
「双子の御披露目パーティーだぜ。良いタイミングじゃねぇか」
『馬鹿者!! 受け入れがたい事象を受け入れさせるのには事前の下準備が必要なのだ!』
「んなまどろっこしい事必要ねぇだろ。面倒くせぇ」
『だから貴様は阿呆なのだ』

ロードが約束通り庇ってくれたのでヴェリウスの怒りがそれていつもの感じに戻っている。良かった。

『ふぅ……もう宣言してしまったものは仕方がない。動揺している神々も神王様のお望みであるならば受け入れる他ないだろう』
「神族側の面倒事は任せたぜ」
『ふんっ 貴様は人間共をなんとかする事だな。ミヤビ様、私は暫く留守に致しますのでくれぐれも軽率な行動はとらぬようお願い致します』

そう言ってヴェリウスはそのまま転移し、本当に数日戻っては来なかった。

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