白百合の狂犬騎士

かなは

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第1章 ブラッディー・ウルフのオスフィオス

10 その隠れた冒険者のルール

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野営拠点を視認できる距離にて2人は火を起こすための枝を探す。
「ねぇ、フィロー。あれが噂のブラッディーウルフ?なんかイメージ違うんだけど。あんたこの前会ったのよね?」
ソウルは噂に聞くあのブラッディーウルフが人を助けるなんてイメージがなかった。
噂に聞くブラッディーウルフはもっと自分のラベルより下の人間を見下し、今回だって囮に使われそのまま見捨てられても可笑しくなかった。

「…トムさんが言ってた。本当は噂に聞く奴と違うって。1回でいいからあの人と組んでみろって」
「あんたが今日可笑しかったのってトムさんからなんか聞いたから?」
薪になる枝を拾いつつフィローはその問いに黙ってコクリと縦に首を振った。
「お前さ、誰にも言うなよ」
フィローはソウルにそう言って釘を指しアルトムから話されたオスフィオスの話をぽつりぽつりと語り出した。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※



アビスを仮拠点の外に待機させ警戒をさせた。
「あの、何故私達を助けていただいたのですか?」
オスフィオスが解体作業の準備をしているとマウニは思わずポツリと零していた。
マウニもソウルと同様噂とあまりにも違うオスフィオスに戸惑っていた。
「逆に見捨てる理由が無いだろう?」
「ですが、あの場で私達を囮にすることも出来たはずです。それならこんなにも貴方はモンスター避けを使用しなくても良かったのでは?」
囮、その言葉にオスフィオスは10秒ほど腕を組み瞼を閉じて考えた。
「そう言うなら君たちはあの時点で十分囮だった。それにあの場でもし食い散らされてる途中に仕留めたとして君たちの死体の処理は誰がする?死体を処理したとして、私はギルドに報告しなくてはいけなくなる」
冒険者が冒険者を食い物にしない為にいくつか制度がある。
1つは青ラベルの人間が駆け出しの白ラベルに知識や技術を指導する制度。

もう1つは冒険者の手の甲にはどの支部に所属しているかのシンボルとなる紋章がそのラベルの色毎に刻まれている。
「君も知っているだろう?」
オスフィオスはそう言って自らのグローブをするりと取った。
そこには青い色のオスフィオスたちが所属している支部の紋章が刻まれていた。

「この紋章には探査魔法が掛けられている。冒険者がクエスト遂行中死んでしまった場合最後にどこに居たか調べれるようにだ。
    
冒険者の亡骸を見つければ回収し、遺品がないか確認する。貴重な魔道具や装備はギルドが管理する。
もし縁者がいるのであれば差し支えないものはその縁者に行くようになる。

さて、ここからが今回の本題だ。不審死、つまりは冒険者が冒険を陥れ死に追いやった場合が無いかもギルドは当然調査する。

そうなった場合共にクエストを受けた者、近くでクエストを受けていた者も調査される。

そしてこれはあまり知られていないことだが
       

この紋章は冒険者の視覚情報を通したクエスト中の映像が記録されるようになっている。」

その言葉にマウニは一瞬息が止まった。
ギルドが冒険者を監視しているとは思わなかったのだ。
「偽造なんて言うのは出来ない。そのクエスト中はずっと所属している支部に映像が届けられているからな」
「ギルドは私達をずっと見張っているんですか?」
マウニは震えが止まらない体で、虚ろになる目でオスフィオスを見つめた。

「そんなに暇じゃないさ。
   映像を見るのは冒険者の信号が途絶えた時
   だけだ」
だから四六時中ずっとみている訳では無いと説明するオスフィオスに少しだけマウニは肩の力を抜いた。
「話は戻すがそんな状態で私が君たちを見捨てたとしよう。するとどうなると思う?」
「…調査されて…降格、ですか?」
「それだけじゃない。最悪ギルドからの追放処分。加えてそれ以降まともに職にはありつけない可能性が高くなる」
そんな高すぎるリスクは追わないとオスフィオスは名言した。

「でもやむを得ない場合も、ありますよね?その場合はどうなるんですか?」
「勿論そこは加味される。例えば今回、君たちと私の立場が逆だった場合、君達が私を置いて逃げたとしても何かを問われることは無い。寧ろ冒険者として正常な判断だ」
異常想定遭遇(イレギュラーエンカウント)。
想定外のモンスターとの遭遇や自分の手に負えないモンスターに遭遇した場合見捨てて逃げたとしてもそれは正当防衛として処理される。

「立ち向かうのは勇敢だ。冒険者は時に無理をしないといけない。だが自分の身の丈以上のことをするのは無謀だ。無謀は人を、仲間を殺す。無理はしてもいいが無謀なことはするな」
必要とあらば逃げるのも大事だ。

オスフィオスはマウニの目を真っ直ぐ見てソレだけを言うと解体作業の準備を再開した。
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