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~Life~
上・父と娘。
しおりを挟む苦しいなら僕が助けてあげる。僕はなんでもできるからね。だって僕は君らが神と呼んでいるひとの一人なのだから。でもね、カミサマに近づきすぎると罰があたるよ。気をつけてね。
「愛、愛! ああ神様、どうか愛を救ってください」
男はオペ室の前にある椅子に深く座り込み、祈っている。男には愛という娘がいた。もうすぐ十歳になり、二分の一成人式が明日行われる予定だった。
愛は五時間ほど前父と一緒に、仕事で忙しい母親にサプライズをしようと、材料を買いに行った。
「お父さん、お母さんは何が喜んでくれるかな。外でご飯食べるのもいいけど、私が自分で料理するのも、いいと思うの!」
父親に嬉しそうな声で話す娘。それに応えて相づちを打つ父親。どこの一家でもありそうな会話である。
信号が青になったと同時に親子は歩き始める。
「ねぇ、お父さん」
娘が可愛げな声で父を呼ぶ。
「なんだ?」
「お父さんはー……」
キキィーと車の音が後ろからなった。車は急カーブをし、猛スピードで娘をはねた。物が当たる鈍い音が空に響いた。
車は娘をはねても何事も無かったかのように止まらない。スピードを替えずに道路を横切る。人が叫ぶ声と、鈍い音が交互に聞こえた。
「愛っ!」
父親が手に持っていた袋を落とし、娘の名前を呼んだ。
この時は運転手を恨む事も考えられず、ただ娘を見ていた。
ーー俺が悪かった。あの時、後ろの車一台ぐらい早く気づけば、こんな事にはならなかった。ごめんな。愛、本当にごめんなー……。
「めん、なー……ご、めんな…………」
ブツブツと男はオペ室の前で呟く。娘が運ばれてきて三時間は経っていた。
「おじさん」
男は気づかない。自分が呼ばれている事を。
「お、じ、さ、ん!」
もう一度オトコを呼ぶ声がした。男はようやく我に返ったと思うと、びくびくと声の聞こえる方へ向いた。
「君はーー?」
男は、驚いた。
「んもー、ようやく気づいてくれたね。おじさん」
自分を呼んでいたのは五~六歳の小さな男の子だったのだ。
「なんだ君は。わたしは今、娘を待っているんだ。邪魔をしないでおくれ」
男の子はふーん、と言って更に男に近づいていく。
「おじさん」
男は振り向かない。ただ床をぼーっと眺めている。
「お、じ、さ、んっ!」
やはり返事が無い。
「おじさん、僕知ってるよ」
男の子の言う事がさっぱり分からず、苛立つ気持ちが抑えられない。だが、不思議と無視しようとした決意が直ぐに消え去った。
「何を?」
男は聞いた。聞いてしまったのだ。
「全てをだよ。だからあの娘の残りの命だって知ってるよ」
馬鹿らしい。自分が真剣に悩んでいるというのに、このガキはアニメの名ゼリフを言い始めるとは。ちょっと黙ってくれないか、と言おうとした瞬間、
「あ、おじさん今信じてなかったでしょー。最初は皆そうなんだよ。信じてくれたっていいのに」
と、ヘラヘラした口調で男の子は言う。 もう、付き合ってはいられない。そう考え、反対側にある椅子に座り込んだ。男の子はポカンとし、一瞬間を置き、すぐに男の方へと近づいた。
「おじさん、無視しないでよ。このままだとあの娘、死んじゃうよー。僕の話を聞く気は無いのかい?」
子供の言う事にさすがに我慢出来なかったのか、男はガタンと椅子から立ち上がり、男の子を睨みつけた。
「馬鹿なこと言わないでくれ! なぜお前の様なガキがわたしの娘の命を左右する資格があるというんだ! え? ないだろ、お前は神の子でも無いし、一流の医者でも無いんだ! だからとっとと失せてくれ、気が散るんだ……、目障りなんだよ!」
はあはあと荒い息を切らせながら男は言い切った。
「……おじさん、今、僕の事、馬鹿にしたね? いいんだね? それで。別に僕はあの娘が死んでもいいって言うんだったら何も言わないよ。でも僕はおじさんにチャンスをあげてるんだ。分からないのかい? もう一度聞くよ。僕の話を聞く気は無いのかい?」
男は男の子にじっと見つめられた。
その瞬間、男は震え上がった。
「うわぁー!」
病院に男の声が響き渡った。
「どうしたんですか!」
看護師が心配して駆けつけた。
「あ、パパ、悪い夢でも見ちゃったみたい。お姉さん、ごめんね。気にしなくていいよ」
「そ、そう……。お父さん、娘さんの事で心配だったのね。僕、お父さんの事頼んだよ」
「はぁい」
看護師はそう言い、笑を浮かべると自分の持ち場へ去っていった。
「お、お前は何なんだ、一体! 化物!」
「やだなぁ、化物だなんて。僕は列記とした人間さ」
外見はね、とボソッっと言った。
「ようやく話を聞いてくれるようになったみたいだね。よし、本題に入ろうか」
男の子(?)はそう言い、薄気味悪い笑を浮かべた。
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