神崎 玲

文字の大きさ
2 / 3
~Life~

中・光と新太。

しおりを挟む
  男は立ち上がり、オペがあと何時間で終わるかを尋ねると、部屋を変えた方がいいかと聞いた。
「別にいいよ。今から話す会話は僕とおじさんの二人にしか聞こえないようにしたからさ」
  『したからさ』とは、どう意味なのか。『した』とは?  設定をした。と同じ理由なのか?  話に付いていけない。こんなガキが、あんな……。
「僕も、おじさんおじさん呼ぶのはだから、名前、教えてよ」
  男は迷いながらも口を開いた。
「相手の名前を聞く時はまずは自分から聞かないのか。特に、相手が半信半疑の時は。親に習わなかったのか?  …………ああ、そうか。お前には多分、親なんかいないだろうな」
  疲れきった顔をして言った。男の子の本心があまりにも怖かったのかーー。
「はぁい、分かったよぉ。僕の名前は……うーん、ひかる!  うん、光だよ!」
  今決めたかのような言い方で男の子は名乗った。ーー親の話の答えは何も返ってこない。
「……そうか、光か。俺の名前は月島新太つきしま  あらただ。まあ、漢字は……知らなくて良い」
「じゃあ、新太さん。僕はなんでもできるって言ったよね、だから、んだ。この意味わかる?」
  馬鹿にした様な言い方に新太は腹が立ったが、相手の地位を考えると怒鳴ることは出来なった。
「…………ああ、分かるさ。……ってことは、娘の命を救うこともできるし、オペが終わるまでのこの時間を止める事だってできるんだな?」
「そうさ。おじさん、物分りがいいね」
  今、わざと『おじさん』と言ったような気がした。だが、その事も聞き過ごし、話題に戻す。
「でも、僕はそうしない。僕にメリットが無いからね。でも、僕は新太さんの事、気に入ったからこの話をしている時間はおまけとして止めてあげるよ」
  そう言うと光は指をパチンと鳴らし、よし、と言った。本当に止まったかどうか、新太には実感が全く湧かない。ここは礼を言うべきなのか迷ったが、あえて何も言わない方を選んだ。
「新太さん、僕の話のんでくれる?  まずそこから決めないと始まらないし進まないよ」
  いつまで経っても上から目線なのが腹ただしいがここはのまなければならない所だと新太にも分かった。
「……勿論。それで君は何が欲しいっていうんだ?」
  光はムッとして答えた。
「おじさん、光って呼んでよ。その方が『皆を照らす光』みたいに聞こえてカッコいいんだ。……えっとね、僕はお腹が減ってるんだぁ。だからおじさん、娘さんの命を救う代わりに僕にご飯をちょうだい、悪くない話でしょ。お互い、得しかないよね」
  そんなんでいいのか、と思う。人の命の代わりに、自分がたらふく食う為だけの『ご飯』でも。
「光がそれでいいなら、俺は勿論オーケーするぞ」
  光はニヤリと不気味な笑いをし、その後にっこりと満面の笑みを浮かべた。なにか企んでいる様子だ。
「今の言葉、しっかり聞いたよ。月島新太」
  急にフルネームで呼ばれると鳥肌が立つ。そしてまた光は指をならし、時間を動かした。

  
  オペ室と書かれた看板の電気が消え、オペが終わる合図が出た。
「愛……!」
  ガラガラとオペ室から出てきた娘の顔を見て、新太はほっとした。
「月島さん、娘さんの手術、成功しましたよ!」
  看護師がそう言うと、愛は病室に連れていかれた。
「良かった……、本当に良かった……っ」
  声にならないぐらいの大きさで静かに、新太は泣いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

意味がわかると怖い話

井見虎和
ホラー
意味がわかると怖い話 答えは下の方にあります。 あくまで私が考えた答えで、別の考え方があれば感想でどうぞ。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...