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徐州の場合
だから俺は口下手だといっただろ
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「子方、子方。出陣だぞ、一週間後だ」
は? 急すぎない? と思ったけどそうでもないか。前々から兄上には準備しておけと口うるさく言われてたからな。
北方の袁紹と公孫瓚の対立で争いが始まる、陶謙様がどちらに与するかは知らんが。と耳にタコができるほど聞いた。
ええっと、陶謙はどっちに与するんだっけ。
「案ずるな、大きな戦にはならんだろう。袁紹を威嚇しにゆくだけだそうだ」
「あっ」
公孫瓚派だっけ。
負けるやん。袁紹陣営には確か曹操もいたよな。ヤバいって、ねえ。
「兄上、そ、それはダメです。袁紹に協力した方がいい……と思ったり……」
「ほほう……そう思うか。そうだな、今一度陶謙様と相談するとしよう」
ああ、やっぱり兄上は善い人だ。理由を聞かずに俺の意見を受け入れてくれる。こんな兄が欲しかった。ああ、ちなみに元一人っ子です。兄弟っていいねぇ。
「……早くしろ、子方。時間はないぞ」
「え?」
「え? じゃない。早く陶謙様にご相談しに行かなければ」
「えっと、私は……」
「言い出したのはお前だろうに」
「私も行くんですか?」
「当たり前だ」
……まぁそうだよね。当然だよね。
なんて言おうかな、どうしよう。将の質、みたいなこととか言ってみるかな。それじゃ弱いか。うーん、徐州がバランサーだよ、みたいなことかな? ……うん、それっぽい、これにしよう。
そして、謁見の時……。
「陶謙様、わが弟に策があるというので、是非に聞いて下さらぬか」
「おお、糜芳か。勇気だけでなく智謀もあるというか、是非、聞かせてくれ」
「あのあのっ、えっと……その…あの…ですね?」
はい予想通りー。はい終了ー。終わったー。もういいやもういいや、あーめんどくさいやんなきゃよかった。
ほら、曹宏がわろてる。死ねカス。……笮融なんか寝てるし。もうみんな寝ろし。許耽は……無表情。やっぱ良い奴だなぁあいつは。
「ほら、芳」
「ああ、はい、兄上。……こほん。ええっとですね、今回の出陣、よくないんじゃないかな、と思いまして」
「ほう」
「いやほら、味方は公孫瓚とか袁術とかでしょ? それで敵は曹操に袁紹。これってまずいとおもうんですよ、ね?」
極度に慌てると全部疑問形になるのが僕の悪い癖。陶謙は変な目で俺をみる。
「……なぜ、まずいと思うのだ」
「あの、ですね……。強い、と言いますか何と言いますか。とにかく勝てる戦いじゃないかなーなんて」
「あのな、糜芳よ。公孫瓚殿は幽州のみならず、冀州・兗州・青州にまで勢力を伸ばししつつある、まさに旭日の勢いだ。そして袁術殿は、領土こそ少ないが、その領地はいまの中華で最も富んでいる。これにわが徐州が乗れば向かうところ敵なしであるのだ。もうよいぞ」
なーにがバランサーだ完全にこっちが戦略的有利じゃねーか。
そうだよな普通に考えれば負けるとは思えんよなぁ。陶謙の俺を見る目がなんだか憐れみの色を帯びて来た。
やめろ! そんな目で俺を見るんじゃない! アーもう嫌だ余計なことしなきゃよかったかな……いや、ちがうぞ、こうして無駄に見えることでもやっていけば必ず未来は変わるはずだ。そう、糜芳の末路も変わる……と信じたいなぁ。
は? 急すぎない? と思ったけどそうでもないか。前々から兄上には準備しておけと口うるさく言われてたからな。
北方の袁紹と公孫瓚の対立で争いが始まる、陶謙様がどちらに与するかは知らんが。と耳にタコができるほど聞いた。
ええっと、陶謙はどっちに与するんだっけ。
「案ずるな、大きな戦にはならんだろう。袁紹を威嚇しにゆくだけだそうだ」
「あっ」
公孫瓚派だっけ。
負けるやん。袁紹陣営には確か曹操もいたよな。ヤバいって、ねえ。
「兄上、そ、それはダメです。袁紹に協力した方がいい……と思ったり……」
「ほほう……そう思うか。そうだな、今一度陶謙様と相談するとしよう」
ああ、やっぱり兄上は善い人だ。理由を聞かずに俺の意見を受け入れてくれる。こんな兄が欲しかった。ああ、ちなみに元一人っ子です。兄弟っていいねぇ。
「……早くしろ、子方。時間はないぞ」
「え?」
「え? じゃない。早く陶謙様にご相談しに行かなければ」
「えっと、私は……」
「言い出したのはお前だろうに」
「私も行くんですか?」
「当たり前だ」
……まぁそうだよね。当然だよね。
なんて言おうかな、どうしよう。将の質、みたいなこととか言ってみるかな。それじゃ弱いか。うーん、徐州がバランサーだよ、みたいなことかな? ……うん、それっぽい、これにしよう。
そして、謁見の時……。
「陶謙様、わが弟に策があるというので、是非に聞いて下さらぬか」
「おお、糜芳か。勇気だけでなく智謀もあるというか、是非、聞かせてくれ」
「あのあのっ、えっと……その…あの…ですね?」
はい予想通りー。はい終了ー。終わったー。もういいやもういいや、あーめんどくさいやんなきゃよかった。
ほら、曹宏がわろてる。死ねカス。……笮融なんか寝てるし。もうみんな寝ろし。許耽は……無表情。やっぱ良い奴だなぁあいつは。
「ほら、芳」
「ああ、はい、兄上。……こほん。ええっとですね、今回の出陣、よくないんじゃないかな、と思いまして」
「ほう」
「いやほら、味方は公孫瓚とか袁術とかでしょ? それで敵は曹操に袁紹。これってまずいとおもうんですよ、ね?」
極度に慌てると全部疑問形になるのが僕の悪い癖。陶謙は変な目で俺をみる。
「……なぜ、まずいと思うのだ」
「あの、ですね……。強い、と言いますか何と言いますか。とにかく勝てる戦いじゃないかなーなんて」
「あのな、糜芳よ。公孫瓚殿は幽州のみならず、冀州・兗州・青州にまで勢力を伸ばししつつある、まさに旭日の勢いだ。そして袁術殿は、領土こそ少ないが、その領地はいまの中華で最も富んでいる。これにわが徐州が乗れば向かうところ敵なしであるのだ。もうよいぞ」
なーにがバランサーだ完全にこっちが戦略的有利じゃねーか。
そうだよな普通に考えれば負けるとは思えんよなぁ。陶謙の俺を見る目がなんだか憐れみの色を帯びて来た。
やめろ! そんな目で俺を見るんじゃない! アーもう嫌だ余計なことしなきゃよかったかな……いや、ちがうぞ、こうして無駄に見えることでもやっていけば必ず未来は変わるはずだ。そう、糜芳の末路も変わる……と信じたいなぁ。
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