はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう

文字の大きさ
102 / 132

戻ってきた日常……からの

 S級危険組織連合軍『女神を崇めし者たちアドラツィオーネ』の襲撃から一か月が経過した。
 学園は、すっかりいつもの日常を取り戻していた。
 エルクたちも、学園に通い日常を満喫している。
 エルクは放課後、ガンボと一緒にショッピングモールで買い物をしていた。

「ガンボ、何買うんだ?」
「靴下と鎧下だ。訓練で破けちまったんだよ」
「鎧下って、お前の戦闘服って鎧だったっけ?」
「改造したんだよ。オレのスキルは『鋼鉄付与』だからな。装備品も硬化できるようになったし、鎧を硬化させてさらに鉄壁の防御にしてる」
「へぇ……」
「戦闘スタイルもだいぶ固まってきたしな」
 
 学園に入学して数か月。訓練、授業、実戦を得て、戦闘スタイルが変化する者も多かった。
 ガンボは、全身を硬化させた徒手空拳で戦うスタイルだったが、現在は鎧を纏い両手に盾を装備する『盾戦士ガードナー』となっていた。戦うより守るスタイルである。
 
「お前は?」
「俺は変わらずだ」
「ああ、暗殺者アサシンだよな」
「……俺、アサシンなんて言ったことないんだけどなぁ」

 エルクは、一年生最強のアサシンと呼ばれていた。
 弁解しても評判は覆らないのでもう諦めている。
 買い物を終え、二人は店を出た。

「な、買い食いしようぜ」
「おう。肉がいい」

 エルクとガンボは、買い食いしながら寮へ向かった。

 ◇◇◇◇◇

 寮に戻ると、ソアラとシルフィディがリビングでクッキーを食べていた。

「ん、おかえりー」
「おかえり、エルク! あと硬いヒト!」
「ただいまー」
「おい、いい加減に『硬いヒト』ってやめろ」

 ガンボは「ったく」と言いながら自室へ。
 エルクも自室で着替え、リビングへ。
 すると、ソアラが手紙をエルクへ差し出した。

「……これは?」
「エルク宛て。寮のポストに入ってたよ」
「またか……」

 手紙には、キネーシス公爵家の印が押してあった。
 エルクはめんどくさそうに封を開け、一応内容を確認……すぐに放り投げた。
 放り投げた手紙を、シルフィディがキャッチする。

「手紙、いいの?」
「ああ。まーた『戻って来い』の手紙だ。ったく……この一か月、二日に一通は届いてやがる」
「ね、ね、折り紙していい?」
「いいぞー」
「やったぁ! ソアラ。折り紙やろっ!」

 ソアラとシルフィディが、手紙で折り紙を始める。
 それを眺めつつ、エルクは大きく背伸びをして欠伸した。

「一か月……はぁ、平和だなぁ。『女神を崇めし者たちアドラツィオーネ』は何をしてんのかねぇ。それと……ロシュオ、サリッサも」

 エルクは、シルフィディがびりびりに破いている手紙を横目で見た。

 ◇◇◇◇◇

 一か月前……。

「久しぶりだな、エルク」
「…………」

 エルクの父、キネーシス公爵ことワルド。
 何故か、満面の笑みでエルクに会いに来た。というか、エルクが呼びだされた。
 場所は、学園の来賓室。一応、他国の貴族なので扱いが違う。
 エルクは、念動力で両腕をへし折ってやろうかと思ったが堪えた。

「何か用ですか」

 エルクは驚いた。ここまで冷え切った声が出るとは思わなかった。
 だが、ワルドはエルクの態度を無視して言う。

「喜べ。お前を公爵家に戻してやる」
「……は?」
「手続きはこちらでやっておく。エルク、これよりお前はキネーシス性を名乗ることを許す」
「…………」
「ロシュオとサリッサは残念だが、公爵家から除名するしかあるまい。テロに加担するとは……全く、実に愚かだ」
「…………」
「エルク、これからもよろしく頼むぞ」
「いや、馬鹿かあんた?」

 あ。とエルクは口を押さえそうになった。
 つい本音が出てしまった。すると、ワルドの目がピクリと動く。
 もういいか───……と、エルクはため息を吐き、ワルドを睨む。

「ロシュオの代わりですか。やれやれ、あのですね……俺とロシュオの決闘で、剣に細工をしたことについて、何か説明はありますか?」
「……何のことだ?」
「それと、俺は公爵家に戻るつもりなんて欠片もない。まぁ……言っちゃうか。俺を後継者にしてもいいですよ。ただし、公爵位を受け継いだ瞬間、ドブに捨ててやりますけどね」
「何ぃ……?」

 ワルドの目は、もう笑っていない。
 エルクも、目の前にいる男に不快感しかない。

「終わってんだよ。あんたと俺はもう他人だ」
「貴様……それが父に対する」
「父親じゃない。俺を殺そうとしたくせに……気付かないのか? 俺、かなり我慢してる」

 エルクは、右手を来賓室に飾られている花瓶へ向ける。すると花瓶がエルクの手元に引っ張られ、空中で静止……バキバキと砕け、圧縮されていく。
 それを見て、ワルドがギョッとする。

「あんたを握りつぶしたい。そうだな……例えば、『玉』を一個、握り潰してやろうか? それくらいなら死にはしないだろ……まぁ、地獄の苦しみだろうけどな」
「!?」

 ワルドの身体が硬直し、ゆっくりと前のめりになる。
 エルクはワルドに顔を近づけ、静かに言った。

「今は見逃してやる。だけど、覚悟しておけよ……キネーシス公爵家は、俺が潰す。まずは『女神を崇めし者たちアドラツィオーネ』を潰して、その後にキネーシス公爵家だ」
「っっっ!!」

 ワルドは、声が出せなかった。
 エルクの目は、本気だった。

「じゃ、そういうことで」

 エルクは退室し、学園を出て寮に向かう途中で念動力を解除した。
 寮に帰る道中、エルクはポツリと呟いた。

「ロシュオ、サリッサも、あいつからすればただの道具だったか。憐れだな……」

 エルクは、ほんの少しだけ二人に同情した。

 ◇◇◇◇◇

 夜になり、寮の夕食時間となった。
 基本的に、食事は全員で取る。今日は大きなオークステーキだった。
 食事を終え、コーヒータイムとなり……ソフィアが立ち上がった。

「では、諸連絡があります」

 学園からのお知らせは、ソフィアを通じて話される。
 
「『女神を崇めし者たちアドラツィオーネ』の襲撃から一か月。ガラティン王国周辺では、『女神を崇めし者たちアドラツィオーネ』による騒動は何も起きていません。脅威は去ったと判断しました」
「おお、そりゃよかったぜ。な、メリー」
「兄さん、ソフィア先生の話を遮らないように」
「へいへい」

 メリーに怒られたニッケス。ソフィアはくすっと笑う。

「もうすぐ中間試験があります。各自、しっかり勉強をするように。それと、エルクくん」
「……こういう時に名指しで呼ばれると、嫌な予感しかしないんですけど」
「ふふ、そうですか?」
「……で、なんです?」
「はい。学園側からエルクくんに、特別依頼が入りました」
「……特別、依頼?」

 特別依頼。
 依頼は、冒険者にするのが一般的だ。
 魔獣討伐、希少な素材の入手、護衛などが殆どだ。特別依頼というのは、貴族や国家が高位冒険者を名指しで指名する依頼のことだ。
 当然、エルクは疑問に思う。

「あの、俺……F級なんですけど。特別依頼って、BとかA級の冒険者が選ばれるんじゃ」
「普通はそうですね。でも、学園からの依頼ですから」
「は、はぁ……」
「当然、報酬も出ます。報酬はなんと、『中間試験の免除』です!!」
「え、マジで!? やります!!」
「あ、ずっけぇぞ!!」
「テメー、ふざけんな!!」

 ニッケスとガンボがブーイング。だがエルクは聞いていない。
 ソフィアは指を口に当て「シーっ」とすると、二人は黙る。
 そして、続けた。

「学園側の依頼は、手紙の運搬です」
「手紙? 運ぶんですか?」
「ええ」
「でも、手紙とかは運輸ギルドが運ぶんじゃ……えっと、ペリカンだっけ」
「あら、ギルド長をご存じでしたか」
「いや、名前だけですけど」
「ちょっと危ない手紙なので……それと、相手方が『手紙を送るなら使者に送らせろ』と言って来たのよ」
「えー……なんだそれ」
「というわけで、エルクくん」

 ソフィアは咳払いし、真面目な顔で言う。

「ガラティーン王立学園からの特別依頼です。エルクくん、機密書類をヤマト国政府代表櫛灘家当主、ビャクヤ・クシナダ様に届けなさい」
「「!!」」
「や、ヤマト国!? え、遠くないですか!?」
「大丈夫。一瞬で行けるから」
「……いやな予感」

 カヤとヤトが息を吞んだ気配を感じたが、エルクは触れなかった。
感想 36

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。