はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう

文字の大きさ
128 / 132

女神とエルク

「ん~?」
「ピピーナ様?」

 ガラティン王国へ向かう途中の上空で、ピピーナは停止した。
 ピアソラ、リリィ、ロロファルド、ラピュセルは「?」を浮かべる。
 だが、ピピーナは気付いた……何かが来る。
 
「え、まさか」
「……きた」
「やっぱりねぇ」
「……試練なのですね」

 四人も気付いた。
 何かが高速で接近してくる。
 漆黒のカラスが、ピピーナたちの前で急停止した。

「……ピピーナ」
「あら、エルクじゃない! ふふ、久しぶり~」

 ピピーナはニコニコしながら手を振る。
 エルクは悲し気にピピーナを見つめ……ふと、眉を潜める。
 
「ん? どうしたの? わたしの顔に何か付いてる?」
「待て……ピピーナ?」
「ん? なになに、どうしたの?」

 エルクは、ピピーナを見つめ……信じられない者を見るような眼で言った。

「待て。お前……誰だ?・・・
「はぁ?」
「お前、ピピーナじゃない。お前……何だ?」
「いやいや、何言ってんの?」

 ピピーナは、わけがわからないと言うように笑う。
 エルクは、ピアソラに聞く。

「おいお前、こいつは誰だ!?」
「誰って、あはは。ピピーナ様でしょ?」
「ロロファルド!!」
「きみ、大丈夫?」
「そこのお前!!」
「ピピーナ様……」
「ラピュセル!!」
「どうやら、あなたは精神がおかしくなったようですね」

 神官たちも、気付いていない。
 エルクは確信した。

「こいつは……ピピーナじゃない!! お前ら、何を呼び寄せた・・・・・・・!?」
「はいはいは~い。ね、あたしがピピーナじゃないって何ぃ? あたしは、ピピーナだよ!!」
「違う。お前……何なんだ」
「むぅ、エルクってば変!! もう、わけわかんない」
「…………」

 話にならない。
 ともかく、こいつはピピーナじゃない。と、エルクは結論付けた。
 チートスキルをもらい、即別れた神官とは違う。
 エルクは、何年もピピーナと共に過ごした。そのエルクが、ピピーナを見間違えるはずがない。

「エルク。あんまり変なこと言うと、おしおきしちゃうからね!!」
「やってみろ。お前はピピーナじゃない!! これ以上、ピピーナを汚すんじゃねぇ!!」

 エルクは両手を広げ、念動力を解放した。

 ◇◇◇◇◇

「止まれ」
「なんで?」
「えっ」

 念動力でピピーナを拘束した。が……ピピーナは平然と、笑顔で近づいてきた。
 エルクの念動力による拘束が、通用しない。
 ギョッとするエルクに、ピピーナは人差し指をエルクに突きつける。

「えいっ」
「!?」

 恐るべき衝撃がエルクを襲う。
 空中に浮かんでいたエルクは、恐ろしい速度で地面に叩きつけられた。

「あ、がっ……!?」

 念動力で全身を覆っていたからこそ防御できた。が、エルクの防御を貫いた。
 吐血───……まともにダメージを受けた。
 すると、ピピーナが降り立つ。

「まったく。わたしを疑うなんて、エルクはダメな子!!」
「このっ……」

 エルクは周辺の木々を全て念動力で地面から抜き、ピピーナに向けて飛ばす。
 だがピピーナは、人差し指をピッと向けただけで、木は全て停止する。

「無駄。ふふ、全てのスキルはわたしが与えたんだよ? スキルの攻撃が、わたしに通用するはずないじゃん?」
「くっ……だったら!!」

 エルクは両手のブレードを展開。『念動舞踊』でピピーナに急接近し、ピピーナの喉を切り裂く。
 だが、ブレードは空を切る。
 ピピーナは、ほんの数センチ動いただけでブレードを躱した。
 完全に見切っている。

「この、この、このっ……!!」
「ん~……くぁぁ」

 ピピーナは欠伸しながら回避している。
 当たる気がまるでしない。
 次元が違う。八割の力でも、勝てる気がしない。
 エルクは攻撃を止め、バックステップで距離を取る。

「この、喰らえぇぇぇぇぇぇっ!!」

 渾身の『念』を飛ばし、動きを止める。

「お?」

 ピタリと、一瞬だけピピーナが止まった。
 だが、すぐに何事もなかったようにスタスタ歩きだす。
 エルクの目の前で止まる……エルクは、右腕を突き出したまま動けなかった。
 逆に、念動力で止められたのである。

「む、だ」
「…………ッッッ!!」
「エルクは、この先にある王国に住んでるんだよね?」
「……!!」
「罰としてぇ……そこ、壊しちゃいます」
「!?」
「大事なものがなくなれば、それはすっごい『罰』だよね」
「お……ま……え……ッ」
「じゃあ……行ってらっしゃぁ~い♪」
「───ッ!!」

 エルクは、念動力で念吹き飛ばされた。

 ◇◇◇◇◇

 ガラティーン王立学園、正門前広場。
 ここに、学園の全校生徒が集結していた。
 全校生徒を前に、戦闘服に着替えたポセイドンが立つ。

『わしが言うのは一つだけ……誰も死ぬな。これは、何に置いても優先すべきことである!!』

 普段のおちゃらけた感じが全くない。
 教師陣も、全員が戦闘服を着ている。
 王国内にいる冒険者、傭兵、騎士たちも、アドラツィオーネを迎える準備ができている。
 来るなら、来い。
 ガラティン王国は、完全な戦闘態勢に入っていた。
 
「……む?」

 ポセイドンは気付いた。
 こちらに向かって、何かが飛んできた。

「全員、戦闘態せ───……」

 何かが正門に激突した。
 それは、漆黒の少年だった。
 全校生徒が、見た。
 最初に叫んだのは───……ヤトだった。

「……エルク!?」

 ボロボロになったエルクが、学園の正門に激突し、気を失っていた。
感想 36

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています