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68・海賊と海坊主①
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翌日。
なぜか顔の赤いマリアとリンを連れ、ライトたちは冒険者ギルドにやってきた……が、ギルド内は喧騒に包まれていた。
「どういうことだ!」「第一相が消えた……」
「くそ、どこかに潜んでるに違いない!」「捜索隊を結成しろ!」
「文献を調べろ、第一相の能力は『影』だ!」「ええい、ギルド長はどこだ!」
三人は顔を合わせ、思い出した。
『きゅうん?』
「ま、マルコシアスのこと……すっかり忘れてた」
「そういや、討伐隊も結成されてたな。こいつが昼寝してた穴倉に向かったはいいがもぬけの殻で、周囲一帯を捜索してる感じか」
「まさか、この小さな狼がマルコシアスだなんて、言っても信じるわけありませんわね」
「ど、どうしよう……この混乱、私たちのせい、だよね?」
「そんなわけあるか。どんな形にしろ、八相の脅威を取り除いたのに違いはない。時間が経てば落ち着くだろうよ」
「そうですわね。それに、少しラッキーですわ。ほら」
マリアが指さしたのは依頼掲示板。
掲示板の依頼は早い者勝ちで、早朝になると貼りだされ、冒険者たちが我先にと依頼を奪い合うのが常だが、マルコシアス騒動のおかげで、掲示板の依頼はほぼ手付かずの状態だった。
「確かにラッキーだな。第一相マルコシアスがどこに潜んでるかわからないのに、少人数パーティで出歩くなんてしないってことか」
「ふふ、オオカミちゃん、あなたのおかげですわ」
『ぐるるるるっ……』
「こらマルシア、仲良くしなさい」
「おい、依頼掲示板を見ようぜ」
ライトたちは、掲示板に向かって歩き出した。
◇◇◇◇◇◇
掲示板には、たくさんの依頼が貼られていた。
ライトは掲示板を覗きつつ、賞金首を探す。
「さて、盗賊退治……」
「リン、これなんてどうです? A級山賊団『槍牙』討伐」
「そうが? 名前からして槍使いっぽい……って、いきなりA級はちょっと……マルコシアスみたいに不測の事態になる可能性もあるよ?」
「うっ……そこを突かれると痛いですわね」
「おい、これはどうだ? S級賞金首『四肢狩り』の討伐だ」
「ライト、言ったそばから何言ってんの?……って、S級ってかなりやばいじゃん」
わいやわいやと騒ぎながら、依頼を物色する。
高ランクの賞金首ばかりを探すライトに、同じく高ランクばかりの盗賊退治ばかりを探すマリア。なまじ強力な力を持つだけに厄介だった。
「あのねー……確かに二人はマルコシアスを瞬殺できるくらい強いけど、冒険者の資格を持ってるのは私だけなんだよ? それにまだ石級だから、最高でもC級の依頼しか受けられないって」
「じゃあC級賞金首」
「ではC級盗賊退治を」
「…………あんたら二人、やっぱり仲いいでしょ」
結局、ワイファ王国に出現するC級賞金首『海坊主』と、この近海に現れるC級海賊団『群青団』の討伐依頼を受けることにした。
早速、リンは頭を抱える。
「あのさマリア……海賊って海に出るんだよ? 昨日泳げるようになったばかりなのに」
「知ってますわ。海賊は商船を狙うみたいですので、乗り込んで護衛しましょう」
「……ライト、この海坊主って」
「依頼書を見ろ、この海坊主は『群青団』に雇われてる賞金首だ。海賊ともども一網打尽にすればお得だろ」
「……はぁ、わかったわよ」
「依頼主はワイファ王国港にいる商人ですわね。さっそく行きましょう」
「そうだな」
ライトとマリアは、さっさとギルドから出てしまった。
リンはため息を吐きつつも、なんだかんだで仲良くしていライトとマリアを見て微笑んでいた。
『きゅう?』
「ん、そうだね。依頼書をギルドに提出しなきゃ」
リンは、マルシアを抱えたまま、二枚の依頼書を持って受付へ向かった。
◇◇◇◇◇◇
三人は、大型商船のあるワイファ王国港にやってきた。
港には一隻の商船が停泊しており、乗組員が荷の積み下ろしをしていた。
船に続く桟橋に、鬚の生えた恰幅のよい男性がキョロキョロしているのを見て、リンはその男性に声をかける。
「あのー、もしかして依頼主のポルテさんですか?」
「ん、ああ。もしかして冒険者か!?」
「はい。依頼を受けた冒険者リンです。こちらは仲間のライトとマリアです」
「おぉ! 来てくれ…………子供か」
大型商船を所持する商人ポルテ。
このワイファ王国でも指折りの大商人だが、ケチな性格が災いして従業員の評判はあまりよくない。この海賊船からの護衛依頼も安い報酬で依頼したため、C級依頼という扱いになったことに気が付いていなかった。
「はぁ……きみ、等級は?」
「え、す、石級ですけど」
「…………はぁ~」
「…………」
ポルテは、露骨に大きいため息を吐いた。
「やれやれ、第一相マルコシアスが現れたからと冒険者ギルドはてんやわんや、魔獣に怯えて他の商会は休みだし……『ポルテ商会はどんな時でも船を出す』がモットーだから、こんな状況でも営業する根性を見てもらう絶好の機会だけど……まさか護衛が石級とは」
「…………」
「…………」
ライトとマリアの眉がピクッと動き、それを素早く察知したリンは慌てて言う。
「だ、大丈夫です! この二人も私もかなり手練れですので! 冒険者に登録したばかりですが、腕に問題はありません!」
「……まぁ、いないよりマシか。もうすぐ出航だから乗って。海に出て東のレイ島に向かうから、道中の護衛を頼むよ」
「はい、お任せください!」
「…………」
「…………」
リンは頭を下げ、ライトとマリアは無言だった。
別に二人は冒険者ではない。依頼主にゴマをする意味などないのだ。
ポルテ支持のもと荷物の搬入が終わり、船は出港準備が整った。
三人は看板に集まり、海を眺める。
「二人とも、もうちょっと愛想よくしてよ」
「知らん。俺の目的は祝福弾だ。依頼に関してはリンに任せる」
「わたしも、戦闘経験を積みたいので……申し訳ありませんが、そういうことはリンにお任せしますわ」
「……はぁ」
『きゃんっ!』
リンの味方は、現状ではマルシアだけだった。
なぜか顔の赤いマリアとリンを連れ、ライトたちは冒険者ギルドにやってきた……が、ギルド内は喧騒に包まれていた。
「どういうことだ!」「第一相が消えた……」
「くそ、どこかに潜んでるに違いない!」「捜索隊を結成しろ!」
「文献を調べろ、第一相の能力は『影』だ!」「ええい、ギルド長はどこだ!」
三人は顔を合わせ、思い出した。
『きゅうん?』
「ま、マルコシアスのこと……すっかり忘れてた」
「そういや、討伐隊も結成されてたな。こいつが昼寝してた穴倉に向かったはいいがもぬけの殻で、周囲一帯を捜索してる感じか」
「まさか、この小さな狼がマルコシアスだなんて、言っても信じるわけありませんわね」
「ど、どうしよう……この混乱、私たちのせい、だよね?」
「そんなわけあるか。どんな形にしろ、八相の脅威を取り除いたのに違いはない。時間が経てば落ち着くだろうよ」
「そうですわね。それに、少しラッキーですわ。ほら」
マリアが指さしたのは依頼掲示板。
掲示板の依頼は早い者勝ちで、早朝になると貼りだされ、冒険者たちが我先にと依頼を奪い合うのが常だが、マルコシアス騒動のおかげで、掲示板の依頼はほぼ手付かずの状態だった。
「確かにラッキーだな。第一相マルコシアスがどこに潜んでるかわからないのに、少人数パーティで出歩くなんてしないってことか」
「ふふ、オオカミちゃん、あなたのおかげですわ」
『ぐるるるるっ……』
「こらマルシア、仲良くしなさい」
「おい、依頼掲示板を見ようぜ」
ライトたちは、掲示板に向かって歩き出した。
◇◇◇◇◇◇
掲示板には、たくさんの依頼が貼られていた。
ライトは掲示板を覗きつつ、賞金首を探す。
「さて、盗賊退治……」
「リン、これなんてどうです? A級山賊団『槍牙』討伐」
「そうが? 名前からして槍使いっぽい……って、いきなりA級はちょっと……マルコシアスみたいに不測の事態になる可能性もあるよ?」
「うっ……そこを突かれると痛いですわね」
「おい、これはどうだ? S級賞金首『四肢狩り』の討伐だ」
「ライト、言ったそばから何言ってんの?……って、S級ってかなりやばいじゃん」
わいやわいやと騒ぎながら、依頼を物色する。
高ランクの賞金首ばかりを探すライトに、同じく高ランクばかりの盗賊退治ばかりを探すマリア。なまじ強力な力を持つだけに厄介だった。
「あのねー……確かに二人はマルコシアスを瞬殺できるくらい強いけど、冒険者の資格を持ってるのは私だけなんだよ? それにまだ石級だから、最高でもC級の依頼しか受けられないって」
「じゃあC級賞金首」
「ではC級盗賊退治を」
「…………あんたら二人、やっぱり仲いいでしょ」
結局、ワイファ王国に出現するC級賞金首『海坊主』と、この近海に現れるC級海賊団『群青団』の討伐依頼を受けることにした。
早速、リンは頭を抱える。
「あのさマリア……海賊って海に出るんだよ? 昨日泳げるようになったばかりなのに」
「知ってますわ。海賊は商船を狙うみたいですので、乗り込んで護衛しましょう」
「……ライト、この海坊主って」
「依頼書を見ろ、この海坊主は『群青団』に雇われてる賞金首だ。海賊ともども一網打尽にすればお得だろ」
「……はぁ、わかったわよ」
「依頼主はワイファ王国港にいる商人ですわね。さっそく行きましょう」
「そうだな」
ライトとマリアは、さっさとギルドから出てしまった。
リンはため息を吐きつつも、なんだかんだで仲良くしていライトとマリアを見て微笑んでいた。
『きゅう?』
「ん、そうだね。依頼書をギルドに提出しなきゃ」
リンは、マルシアを抱えたまま、二枚の依頼書を持って受付へ向かった。
◇◇◇◇◇◇
三人は、大型商船のあるワイファ王国港にやってきた。
港には一隻の商船が停泊しており、乗組員が荷の積み下ろしをしていた。
船に続く桟橋に、鬚の生えた恰幅のよい男性がキョロキョロしているのを見て、リンはその男性に声をかける。
「あのー、もしかして依頼主のポルテさんですか?」
「ん、ああ。もしかして冒険者か!?」
「はい。依頼を受けた冒険者リンです。こちらは仲間のライトとマリアです」
「おぉ! 来てくれ…………子供か」
大型商船を所持する商人ポルテ。
このワイファ王国でも指折りの大商人だが、ケチな性格が災いして従業員の評判はあまりよくない。この海賊船からの護衛依頼も安い報酬で依頼したため、C級依頼という扱いになったことに気が付いていなかった。
「はぁ……きみ、等級は?」
「え、す、石級ですけど」
「…………はぁ~」
「…………」
ポルテは、露骨に大きいため息を吐いた。
「やれやれ、第一相マルコシアスが現れたからと冒険者ギルドはてんやわんや、魔獣に怯えて他の商会は休みだし……『ポルテ商会はどんな時でも船を出す』がモットーだから、こんな状況でも営業する根性を見てもらう絶好の機会だけど……まさか護衛が石級とは」
「…………」
「…………」
ライトとマリアの眉がピクッと動き、それを素早く察知したリンは慌てて言う。
「だ、大丈夫です! この二人も私もかなり手練れですので! 冒険者に登録したばかりですが、腕に問題はありません!」
「……まぁ、いないよりマシか。もうすぐ出航だから乗って。海に出て東のレイ島に向かうから、道中の護衛を頼むよ」
「はい、お任せください!」
「…………」
「…………」
リンは頭を下げ、ライトとマリアは無言だった。
別に二人は冒険者ではない。依頼主にゴマをする意味などないのだ。
ポルテ支持のもと荷物の搬入が終わり、船は出港準備が整った。
三人は看板に集まり、海を眺める。
「二人とも、もうちょっと愛想よくしてよ」
「知らん。俺の目的は祝福弾だ。依頼に関してはリンに任せる」
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途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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