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第78話、ヤシャ王国冒険者ギルド
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ヤシャ王国の初日。今日は貸し住居でのんびりすることで決まった。ライトは畳敷きの和室で座布団を枕にして横になり、リンとマリアはさっそく温泉に向かう。
一番高級な貸し住居だけあって脱衣所も広く、服を入れる籠もたくさんあった。
二人はさっそく服を脱ぎ始める。
「温泉温泉~♪」
「リン、ご機嫌ですわね」
「そりゃ温泉だし……って、マリアは温泉知らないの?」
「ええ」
この世界には湯船に浸かるという文化がない。シャワーはあるが、あとは蒸し風呂しかない。マリアと一緒に風呂に入ることはあるが、殆どがシャワーだけだ。ワイファ王国の別荘にも蒸し風呂はあったが、準備が手間なので殆ど使わなかった。
だが、ここは天然温泉だ。
住居のレンタル費用には掃除も含まれているので、いつでも好きなときに風呂に入ることが出来る。
「ふふ、湯船の素晴らしさを堪能するといいよ」
「はぁ……よくわかりませんが、リンが言うなら」
服を脱ぎ、リンはマリアをちらりと見る。
彫刻のように美しい肢体だ。胸は大きく形も美しい、腰はくびれ肌はきめ細やか……これほど美しい少女が、なぜここまで自分を慕うのか……。
「リン? わたしの身体に興味津々なのはとても嬉しいですわ!」
「ちち、違うし!」
「リンもお綺麗ですわ。すらっとしなやかで、すべすべだけど柔らかなところが……」
「ちょっ!」
マリアの手がリンの背中に伸びたのでリンは慌てて離れ、逃げるように浴場へ向かう。そして浴場のドアを開け―――。
「わぁ……」
「まぁ、これが温泉……」
岩を加工した浴槽、木々の香りがする室内、桶や椅子も完備された立派な浴場だった。リンは破顔する。
「さ、マリア。身体を洗って湯船に行くよ!」
「ええ。ではリン、わたしの身体を洗ってくださいな♪」
「やだ」
両手を広げて裸体を見せつけるマリアを、リンはバッサリ切り捨てた。
◇◇◇◇◇◇
翌日。
たっぷり休んだライトたちは、徒歩で冒険者ギルドに向かった。
昨夜はライトも温泉を堪能し、温まるとすぐに眠くなってしまった。シャワーや蒸し風呂とは違う快感だった。
「二人とも、温泉はよかったでしょ?」
「ああ。疲れが吹っ飛んだ」
「ええ。お肌もスベスベですわ」
朝食に買った『おにぎり』という軽食を齧りながら、ライトは聞いた。
「やることはワイファ王国と同じ、盗賊と賞金首を狩るぞ」
「わかった。でも、赤髪の女の子に会ったらどうする?」
「……今は引くしかない」
「同感ですわ。正直、勝てる気がしません……」
竹筒という水筒の蓋を開け、中の水を飲み干すライト。この竹筒はリンが人数分買った物だ。
「それと、勇者一行の情報だ。セエレが死んだ今、あいつらは必ず動く。特にリリカ……次に会ったら必ず殺してやる」
「…………」
竹筒を握るライトを、リンは黙ったまま見つめた。
リンが何かを言う権利はない。
「あの、お二人とも……冒険者ギルドとはこれですか?」
「あ、着いたのね」
「…………」
冒険者ギルドに到着したが、マリアとライトは首を傾げた。
妙な作りの建物だった。
屋根は三角形で不自然に反り返り、入口が巨人でも通れそうなくらい大きい。何人も出入りしているが、自分たちのように見上げる者もいた。
「うーん、立派な『神社』だねぇ」
「ジンジャ? この建物か?」
「えーと、私から見ると神社に見えるんだけどね。二人には珍しい建物にしか見えないと思う」
「全くその通りですわ……こんな建築物、初めて見ました」
門もドアもない。三人は巨大な入口から中へ。
「うわ……広い」
「天井が高いですわ……」
ライトとリンはギルド内の広さに驚く。
リンはあまり驚かなかった。代わりに、周りを見る余裕があったようだ。
「あ、見て。依頼掲示板みつけた」
「よし、さっそく行くぞ」
「そうですわね」
と、依頼掲示板に向かおうとした時だった。
突如、ギルド内に妙な音が鳴り響いたのだ。
「なんだ? ってかこの音気持ち悪い」
「これ、法螺貝だね。リアルで吹く人いるんだ……」
「ホラガイ? リンは博識ですわねぇ」
ブォォォと、法螺貝の音が鳴り響くと、ギルド内にいた冒険者たちが受付カウンターに注目する。そこには、法螺貝を吹く着物を着て腰に刀を差した髭面の男がいた。
「緊急依頼の発令だ! 青銅以上の冒険者は強制参加! いいか、これはギルドの依頼だ、強制参加の依頼だ! 拒否は許されねぇ、いいか強制参加だぞ!」
と、叫んでいた。
強制参加依頼は、依頼主が冒険者ギルドの依頼のことで、町にいる手の空いた冒険者は必ず受けないとならない。もし仮に知りつつも受けなかったら、冒険者資格の剥奪もあり得る。
ここまでするということは、よっぽど困った事態なのか。
青銅以上の冒険者が、受付カウンターにゾロゾロ集まる。
「わ、私もだよね……」
「ほら行くぞ、青銅冒険者のリン」
「リンと一緒ならどこまでも!」
ライトはニヤニヤしながらリンの背を押し、マリアはリンの腕にじゃれつく。
リンは、集まった青銅以上の冒険者の後ろにコソッと立つ。
「よく来た。知ってるモンもいると思うが自己紹介だ。オレはこの冒険者ギルドの長イゾウだ。さっそくだが緊急の依頼だ。ヤシャ王国郊外の森に『スキイロクラゲ』の群れが確認された」
スキイロクラゲ。
ライトは二人を見るが首を振る。聞いたことのない魔獣だった。
ギルド長のイゾウは言う。
「もうわかっただろう、『第四相』のバケモノ、『海月翁』ジェリー・ジェリーが現れた。城には伝えたがまずは冒険者たちで対処せよとのお達しだ」
第四相、『海月翁』ジェリー・ジェリー。
来て早々の大物に、ライトは思わずにやけていた。
一番高級な貸し住居だけあって脱衣所も広く、服を入れる籠もたくさんあった。
二人はさっそく服を脱ぎ始める。
「温泉温泉~♪」
「リン、ご機嫌ですわね」
「そりゃ温泉だし……って、マリアは温泉知らないの?」
「ええ」
この世界には湯船に浸かるという文化がない。シャワーはあるが、あとは蒸し風呂しかない。マリアと一緒に風呂に入ることはあるが、殆どがシャワーだけだ。ワイファ王国の別荘にも蒸し風呂はあったが、準備が手間なので殆ど使わなかった。
だが、ここは天然温泉だ。
住居のレンタル費用には掃除も含まれているので、いつでも好きなときに風呂に入ることが出来る。
「ふふ、湯船の素晴らしさを堪能するといいよ」
「はぁ……よくわかりませんが、リンが言うなら」
服を脱ぎ、リンはマリアをちらりと見る。
彫刻のように美しい肢体だ。胸は大きく形も美しい、腰はくびれ肌はきめ細やか……これほど美しい少女が、なぜここまで自分を慕うのか……。
「リン? わたしの身体に興味津々なのはとても嬉しいですわ!」
「ちち、違うし!」
「リンもお綺麗ですわ。すらっとしなやかで、すべすべだけど柔らかなところが……」
「ちょっ!」
マリアの手がリンの背中に伸びたのでリンは慌てて離れ、逃げるように浴場へ向かう。そして浴場のドアを開け―――。
「わぁ……」
「まぁ、これが温泉……」
岩を加工した浴槽、木々の香りがする室内、桶や椅子も完備された立派な浴場だった。リンは破顔する。
「さ、マリア。身体を洗って湯船に行くよ!」
「ええ。ではリン、わたしの身体を洗ってくださいな♪」
「やだ」
両手を広げて裸体を見せつけるマリアを、リンはバッサリ切り捨てた。
◇◇◇◇◇◇
翌日。
たっぷり休んだライトたちは、徒歩で冒険者ギルドに向かった。
昨夜はライトも温泉を堪能し、温まるとすぐに眠くなってしまった。シャワーや蒸し風呂とは違う快感だった。
「二人とも、温泉はよかったでしょ?」
「ああ。疲れが吹っ飛んだ」
「ええ。お肌もスベスベですわ」
朝食に買った『おにぎり』という軽食を齧りながら、ライトは聞いた。
「やることはワイファ王国と同じ、盗賊と賞金首を狩るぞ」
「わかった。でも、赤髪の女の子に会ったらどうする?」
「……今は引くしかない」
「同感ですわ。正直、勝てる気がしません……」
竹筒という水筒の蓋を開け、中の水を飲み干すライト。この竹筒はリンが人数分買った物だ。
「それと、勇者一行の情報だ。セエレが死んだ今、あいつらは必ず動く。特にリリカ……次に会ったら必ず殺してやる」
「…………」
竹筒を握るライトを、リンは黙ったまま見つめた。
リンが何かを言う権利はない。
「あの、お二人とも……冒険者ギルドとはこれですか?」
「あ、着いたのね」
「…………」
冒険者ギルドに到着したが、マリアとライトは首を傾げた。
妙な作りの建物だった。
屋根は三角形で不自然に反り返り、入口が巨人でも通れそうなくらい大きい。何人も出入りしているが、自分たちのように見上げる者もいた。
「うーん、立派な『神社』だねぇ」
「ジンジャ? この建物か?」
「えーと、私から見ると神社に見えるんだけどね。二人には珍しい建物にしか見えないと思う」
「全くその通りですわ……こんな建築物、初めて見ました」
門もドアもない。三人は巨大な入口から中へ。
「うわ……広い」
「天井が高いですわ……」
ライトとリンはギルド内の広さに驚く。
リンはあまり驚かなかった。代わりに、周りを見る余裕があったようだ。
「あ、見て。依頼掲示板みつけた」
「よし、さっそく行くぞ」
「そうですわね」
と、依頼掲示板に向かおうとした時だった。
突如、ギルド内に妙な音が鳴り響いたのだ。
「なんだ? ってかこの音気持ち悪い」
「これ、法螺貝だね。リアルで吹く人いるんだ……」
「ホラガイ? リンは博識ですわねぇ」
ブォォォと、法螺貝の音が鳴り響くと、ギルド内にいた冒険者たちが受付カウンターに注目する。そこには、法螺貝を吹く着物を着て腰に刀を差した髭面の男がいた。
「緊急依頼の発令だ! 青銅以上の冒険者は強制参加! いいか、これはギルドの依頼だ、強制参加の依頼だ! 拒否は許されねぇ、いいか強制参加だぞ!」
と、叫んでいた。
強制参加依頼は、依頼主が冒険者ギルドの依頼のことで、町にいる手の空いた冒険者は必ず受けないとならない。もし仮に知りつつも受けなかったら、冒険者資格の剥奪もあり得る。
ここまでするということは、よっぽど困った事態なのか。
青銅以上の冒険者が、受付カウンターにゾロゾロ集まる。
「わ、私もだよね……」
「ほら行くぞ、青銅冒険者のリン」
「リンと一緒ならどこまでも!」
ライトはニヤニヤしながらリンの背を押し、マリアはリンの腕にじゃれつく。
リンは、集まった青銅以上の冒険者の後ろにコソッと立つ。
「よく来た。知ってるモンもいると思うが自己紹介だ。オレはこの冒険者ギルドの長イゾウだ。さっそくだが緊急の依頼だ。ヤシャ王国郊外の森に『スキイロクラゲ』の群れが確認された」
スキイロクラゲ。
ライトは二人を見るが首を振る。聞いたことのない魔獣だった。
ギルド長のイゾウは言う。
「もうわかっただろう、『第四相』のバケモノ、『海月翁』ジェリー・ジェリーが現れた。城には伝えたがまずは冒険者たちで対処せよとのお達しだ」
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来て早々の大物に、ライトは思わずにやけていた。
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#ヒラ俺
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今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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