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100・フィヨルド王国へ

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 ライトは、リンとマリアのいる馬車の御者席に、空中で飛び乗った。

「っと、終わったぜ」
「び、びっくりした……怪我は?」
「見ての通りだ」

 ライトは右手をひらひらさせ、左手には戦利品である祝福弾を見せる。
 空色の弾頭の祝福弾。第四相を吸収して作った弾丸だ。
 カドゥケウスが喰えるのは人間だけ。つまり、第四相も元は人間だったのだ。果たして、どのような人生を送ったのだろうか。

「ま、第四相が元人間とかどうでもいい。この祝福弾は使えそうだ」
「そうね。で……これからどうするの?」
「そうだな……」

 ライトたちは、南のワイファ王国から東のヤシャ王国にやってきた。順当に進めば北のフィヨルド王国だろう。西のウェールズ王国を目指すには、ワイファ王国まで戻って迂回するか、ファーレン王国を突っ切る形で進まねばならない。

「北のフィヨルド王国か……確か、年中雪が降ってるんだよな」
「うん。何の装備もなしに進めば凍死するよ。たぶん、過酷さは全王国一かも」
「じゃあ、フィヨルド王国の国境まで進んで装備を整えるか。馬は大丈夫か?」
「うん。この子は寒さに強い品種だから。でも、馬用の防寒着と装備は買わないとね」
「ああ。雪だからお別れ、なんて寂しいもんな」

 さて、目的地は決まった。
 目指すのは北のフィヨルド王国。新たな大罪神器と強さを求め、ライトたちの旅は続く。
 もちろん、解決していない問題は山ほどある。
 例えば……。

「ねぇライト、シンクはどうするの?」
「…………今は放っておけ。たぶん、無傷での勝利は厳しい」
「うん。わかった……じゃあ、次の大罪神器を探すのね」
「ああ。残り四つ……仲間とはいかなくても、利用できるような奴だったらいいんだけど」

 最初に言っておく。
 ライトの期待は大きく外れる。次の大罪神器は、いい意味でも悪い意味でも強烈だった。
 そして、大罪神器だけではない、重要な出会いもある。

 フィヨルド王国への旅は、これまでにない過酷なものになる。

 ◇◇◇◇◇◇

 馬車はヤシャ王国からどんどん遠ざかる。
 目指すはフィヨルド王国への国境の町。第四相の出現で、ヤシャ王国は大騒ぎになっているだろう。城で大暴れしたライトたちを追いかける余力は残っていないはずだ。
 馬車は順調に走り、黙っていたマリアがリンに言った。

「ふふふ……リン、次の国境の町、何があるかご存じですか?」
「え? ええと……何かあるの?」
「ええ。フィヨルド王国への国境沿いの町には、温泉があるそうですの。このマップにそう書かれていますわ」
「え、いつの間にそんなのを」

 マリアの手には、ヤシャ王国のガイドブックがあった。ヤシャ城へ乗り込んだ時に見つけ、拾っておいたのだ。
 マリアはぺらぺらとページをめくり、なぜかニヤニヤしている。
 何となく察したライトはリンから手綱を受け取る。

「リン、マリアの話を聞いてやれよ」
「え、あ、うん」
「うふふ、ありがとうございます」

 ライトは前を向き、できるだけ気配を消した。

「リィン……約束、覚えてます?」
「…………えっと」
「ふふ、一晩付き合ってもらいますわ。よろしくて?」
「あ、あの、その……えと」
「大丈夫。わたしがリードしますわ。その身を委ねるだけ……」
「…………」

 リンはライトを見たが、ライトは無視した。
 約束は約束。それに、今回の件はリンに非がないわけでもない。リン自信がマリアに身体を差し出すと言った以上、ライトは口出しするつもりはなかった。

「あー、俺、宿は別でいい」
「ありがとうございます。楽しませていただきますわ」
「ちょっ、ライト!?」

 馬車は、フィヨルド王国への国境へ向けて進んでいく
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