独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう

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第六章 雪景色と温泉

雪景色

 数日、ヒコロクの牽引で進むと……少しずつ寒くなってきた。
 さらに、窓から見える景色。街道こそ綺麗に除雪されているが、山や森などは真っ白だ。
 窓を開けると冷たい空気。肺に入り込むとキンキンに冷えた空気のおかげで吐く息が白い。
 俺は、年甲斐もなく窓から身体を出して言った。

「はは、雪だ!! すげえ……真っ白だな!!」
「おっさん、寒いー」
「ん、ああ悪い」

 窓を閉める。
 ロッソ、アオ、ブランシュはあまり興味なさそうだ。

「お前ら、雪だぞ。もっとこう……喜ばないのか?」
「寒いだけじゃん。アタシはそんなに興味ないなー」
「わたくしもですわ」
「……寒いの、あんまり好きじゃない」
 
 三人娘には不評だな。
 ちなみにヴェルデは自分の馬車にいて、後ろから付いて来る。
 和解の道を歩み出したのはいいけど……まだ勇気が出ないのか、三人に謝罪することができない。
 なんとなく顔に出たのか、ロッソが言う。

「おっさん、ヴェルデと何かあったでしょ」
「え……あ、いや」
「まあ、詳しくは聞かない。アタシ……ううん、アタシらとしては、ケジメ付けてくれればいいだけだしね」
「……つまり、ちゃんと謝ればいい、ってことか?」
「さあね。なあなあにするつもりないし、関わってくるなら嫌々相手するだけ」

 アオ、ブランシュは何も言わない。
 とりあえず……全く可能性がないって感じじゃないな。

 ◇◇◇◇◇◇

 それから何日か街道を走った。
 驚いたのは、雪景色がどんどん深くなるが、街道は綺麗な状態のままだ。除雪の後がしっかりのこっていることから、優秀な除雪部隊がいるのだろう。
 そして、ようやく見えてきた。

「おじさん、見えて来た」
「ん? おお、ついに来たか!!」

 アオが窓を指差すので開けて外を見ると、大きな町が見えてきた。
 驚いた。硫黄の香りがするぞ!! それに、まだ町まで遠いけど、湯気があちこちから立っているのが見える……すごいぞ、温泉の町レレドレ!!

「おっさん、臭い……」

 え、俺……臭い? 加齢臭? と思ったら、硫黄の香りだった。
 少しだけショックを受けたけど、すぐ勘違いと気付く。
 窓を閉め、俺はソファーに寄りかかった。

「いやあ、温泉の町レレドレだ。ふっふっふ……まずは宿を確保して、明日は不動産ギルドに行こう。グロリアの紹介状もあるし、いい物件あるといいなあ」
「おじさま、嬉しそうですわね」
「まあな。ブランシュ、お前も別荘買うんだろ?」
「ええ、いい物件を期待していますわ」

 こうして、俺たちの馬車は『温泉の町レレドレ』へ。
 正門前でロッソが冒険者カードを見せると驚かれていた。ここでも『鮮血の赤椿スカーレット・カメリア』の名は有名らしい。
 街中は……すごいな。

「すごいな。温泉街って感じだ」
「坂道じゃん……しかも臭いし」

 不満そうなロッソ。
 だが、俺は大満足だった。
 道は全て石畳で、建物は全て焦げ茶色の木造。恐らく硫黄の効果でこんな木の色になったのかな……かなり味のある建物だ。
 あちこちから湯気が昇り、けっこうな数の宿屋がある。
 上り坂が多く、荷車が少し斜めに傾いた。だが、ヒコロクは全く意に介さずに引いてくれる。

「……細い道、路地も多いし、坂道ばかり。屋根も上りやすそうだし、暗殺者の視点で見れば隠れる場所の宝庫かも」
「物騒なこと言うなよ……」

 温泉街で殺人事件とか、昔のサスペンスじゃあるまいし。
 トータルで評価するなら、『異世界風温泉街』ってところだ。土産屋も多いし、散策が楽しみだ。
 すると、ヒコロクが止まった。

「お、到着ね」
「町の中心ですわね」
「馬車置いて、宿を取ろう」

 さっそく馬車から降りて……俺は呼吸が止まりそうになった。

「うわ、なにこれ……すっごい湯気」
「臭いですわね……」
「……うええ」
「……す、すごい。これは……げ、源泉か?」

 町の中央に、巨大な岩場があった。
 柵で覆われ、岩場から温泉が噴き出している。まるで湯畑……すごすぎる。
 温泉の町レレドレ。その名にふさわしい光景……もうマジで決めた。貯金がなくなろうとここにある別荘を俺は買う!!
 感激していると、ヴェルデたちも馬車から降りてきた。

「う……鼻が曲がるわね」
「いずれ病み付きになるぞ!! いやあ、最高だな!!」
「あなた、何を興奮してるの……?」
「おーい、宿はこっちだよー!! おっさん、あ~……ヴェルデも」
「ん、ああ。今行くぞ」
「え、ええ……」

 ロッソたちは、町の中央にあるデカい木造宿へ。
 ヴェルデは返事こそしたが、俺と話して以来、ロッソたちと積極的に話をすることがなくなっていた。どうやら謝罪のタイミングを伺っているみたいだ。
 ロッソたちが宿に入り、俺はヴェルデに聞く。

「決心、付いたのか?」
「……その、タイミングがつかめなくて」
「焦らなくていい。それに……きっとロッソたちも受け入れてくれるさ」
「……ええ」

 俺はヴェルデの方をポンと叩くと、ヴェルデは少しだけ微笑んだ。

「さ、温泉の町レレドレだ。温泉温泉!!」
「……嬉しそうね」

 俺はヴェルデと、マイルズさんとシュバンの四人で宿へ入るのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 宿は三部屋確保できた。
 二人部屋が三つ……これは少しまずいかな。

「アタシ、アオ、ブランシュ……で、ヴェルデ。おっさん、取り巻き二人かあ」

 すると、マイルズさんとシュバンが言う。

「お嬢様、私とシュバンは、近くの安宿を取りますので……明日、お迎えに上がります」
「え、ええ……」
「じゃあ、俺は一人部屋で、四人だけど……」

 ロッソたちを見ると……ロッソが言う。

「アタシとヴェルデ、アオとブランシュでいいでしょ」
「あ……その、私は」
「はい決まり。おっさん、これカギね。夜飯どうする?」
「あー、せっかくだし近くを散策して、メシ屋探して食うか」

 ヴェルデには悪いが、ヴェルデにばかり構っていられん。
 さっそく部屋へ。

「……おお」

 すごい……というか、驚いた。
 なんと畳。畳である。
 俺の知っているタタミと微妙に違う。縫い目が少し違うだけで、イグサの香りといい畳で違いない。
 そして土足厳禁……ちゃんと靴を脱いで畳へ。
 テーブル、座布団、湯沸かし魔道具にお茶セット、茶菓子……マジか温泉まんじゅうじゃねぇか!! うおおテンション上がる!!
 押し入れには布団もあるし……マジで旅館、旅館ですよ旅館!!
 
「東方の文化は日本っぽい気がしていたが……これは期待できるな。まあここ北だけど。それより……そう、温泉だ!!」

 そう、この高級宿……温泉がある!!
 というか、どの宿も温泉は普通にある。ここは一階に大浴場があり、自由に入れるのだ!!
 部屋を探したが浴衣はなかった……残念。
 なので、俺は服屋に依頼して事前に作っておいた『なんちゃって甚平』を着て一階の大浴場へ。
 少し期待したが……残念、のれんはなかった。
 男湯、と書かれたドアを開けて中へ。広い脱衣所で服を脱ぎ、さっそく浴場へ。

「おおおおお……!!」

 岩風呂だ!! 
 でっかい岩風呂がど真ん中にあり、四方が洗い場になっている。
 人もけっこういる。獣人、背中に羽の生えた翼人や、爬虫類系の亜人……もう感激。
 硫黄の香りも強い。これは肌によさそうだ。
 身体を洗い、俺は湯舟へ。

「おお~……ぅぅ」
 
 トロトロの湯だ。粘りというか、糸が引きそうなくらい粘っこい……が、不思議と嫌な感じはない。
 湯に浸かっていると、身体の内側からポカポカしてくる。

「……これはあたりだ」

 温泉の町レレドレ……絶対、絶対に妥協しない別荘を買うぞ。
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