1 / 1
静かな侵略
しおりを挟む
地球に宇宙人が現れた。彼らは非常に大きな円盤形の宇宙船に乗ってやってきた。
宇宙船は最初、ヨーロッパのとある国の上空に出現した。上空に浮いているだけで何をするでもなかったが、空を覆い隠す程大きな物体が現れたことで人々は不安に駆られた。
この事件は世界中で瞬く間にニュースになり、巧妙なフェイクニュースだの、某国の新兵器だの様々な噂が飛び交った。各国は当初お互いを疑っていたものの、やがて地球外からやってきた宇宙船だと認め、全世界で対処方法について議論を始めた。
宇宙船は出現してから一週間ほど沈黙を続けていたが、ある日突然いなくなった。そして、それと同時にヨーロッパの別の国に現れ、また一週間ほど経った後に別の国へと移動した。宇宙船はそんなことを幾度となく繰り返し、ヨーロッパからアジア、アジアから北アメリカ、南アメリカ、オセアニア、アフリカとあらゆる場所に現れた。一時期は南極や北極でも宇宙船が観測されたとのことだった。
それから一年ほどが経った。各国は調査を続けていたものの大きな成果は得られていなかった。だが、世界中の人々は宇宙船のいる生活に慣れ始め、自分の街に宇宙船が来ると喜ぶものもいた。未だに姿を表さない宇宙人だが、人々の中には彼らに攻撃の意思はないと断定し、融和こそが最善策だと声高に叫ぶものもいた。
そんなある日、宇宙船が開き、とうとう中から宇宙人が出てきた。宇宙人は人間そっくりな見た目をしているどころか、絶世の美男美女の集まりだった。英語、日本語、中国語、フランス語…。彼らは地球のあらゆる言語を話すことができ、コミュニケーションは容易だった。
宇宙人の登場に人々は盛り上がり、各国のテレビ番組が彼らを取り上げた。テレビ番組に出演した彼らは、「自分たちに攻撃の意思はなく地球の人々と仲良くしたいのだ」と訴え続け、その美しく真摯な姿にみな心が動かされた。
また、宇宙人は友好の証と言わんばかりに、地球より遥かに進歩した科学技術を分け与えた。地球を汚染しないクリーンで無限のエネルギー発生装置。地球の裏側まで一瞬で移動できるワームホールゲート。
特に、脳波で機械を操作できたり、他者との意思創通を可能とする脳機能拡張ナノマシンは素晴らしかった。手術も不要で、首の後ろに注射するだけですぐに入れることができる。人々は魅了され、我先にとナノマシンを入れたがった。
人々の中には宇宙人の技術を疑うものもいたが、その内ナノマシンがないと普通の生活も送れなくなった。仕事も買い物も、旅行に行くのもそうだった。ナノマシンを使えない人を雇うことはできないと経営者は考えるので、仕事をするにもナノマシンは必要。日常生活では買い物の注文も決済もナノマシン。旅行するためのワームホールゲートを使うにもナノマシンが必要だった。
そうして、宇宙船が現れてから10年が経った。今では宇宙人のもたらした科学技術がなければ、完全に人々は生活できなくなった。地球にいる宇宙人の数も増え、その頭の良さから国の中枢に潜り込み、代表となるものまで現れた。人々は美しく賢い宇宙人と結婚したいと考え、若者の支持するメディアではそれこそがトレンドとして描かれる。
既に地球の手綱は宇宙人に握られていた。もはやこの星に抵抗する術などない。宇宙人による静かな侵略はもう完了していたのだった。
宇宙船は最初、ヨーロッパのとある国の上空に出現した。上空に浮いているだけで何をするでもなかったが、空を覆い隠す程大きな物体が現れたことで人々は不安に駆られた。
この事件は世界中で瞬く間にニュースになり、巧妙なフェイクニュースだの、某国の新兵器だの様々な噂が飛び交った。各国は当初お互いを疑っていたものの、やがて地球外からやってきた宇宙船だと認め、全世界で対処方法について議論を始めた。
宇宙船は出現してから一週間ほど沈黙を続けていたが、ある日突然いなくなった。そして、それと同時にヨーロッパの別の国に現れ、また一週間ほど経った後に別の国へと移動した。宇宙船はそんなことを幾度となく繰り返し、ヨーロッパからアジア、アジアから北アメリカ、南アメリカ、オセアニア、アフリカとあらゆる場所に現れた。一時期は南極や北極でも宇宙船が観測されたとのことだった。
それから一年ほどが経った。各国は調査を続けていたものの大きな成果は得られていなかった。だが、世界中の人々は宇宙船のいる生活に慣れ始め、自分の街に宇宙船が来ると喜ぶものもいた。未だに姿を表さない宇宙人だが、人々の中には彼らに攻撃の意思はないと断定し、融和こそが最善策だと声高に叫ぶものもいた。
そんなある日、宇宙船が開き、とうとう中から宇宙人が出てきた。宇宙人は人間そっくりな見た目をしているどころか、絶世の美男美女の集まりだった。英語、日本語、中国語、フランス語…。彼らは地球のあらゆる言語を話すことができ、コミュニケーションは容易だった。
宇宙人の登場に人々は盛り上がり、各国のテレビ番組が彼らを取り上げた。テレビ番組に出演した彼らは、「自分たちに攻撃の意思はなく地球の人々と仲良くしたいのだ」と訴え続け、その美しく真摯な姿にみな心が動かされた。
また、宇宙人は友好の証と言わんばかりに、地球より遥かに進歩した科学技術を分け与えた。地球を汚染しないクリーンで無限のエネルギー発生装置。地球の裏側まで一瞬で移動できるワームホールゲート。
特に、脳波で機械を操作できたり、他者との意思創通を可能とする脳機能拡張ナノマシンは素晴らしかった。手術も不要で、首の後ろに注射するだけですぐに入れることができる。人々は魅了され、我先にとナノマシンを入れたがった。
人々の中には宇宙人の技術を疑うものもいたが、その内ナノマシンがないと普通の生活も送れなくなった。仕事も買い物も、旅行に行くのもそうだった。ナノマシンを使えない人を雇うことはできないと経営者は考えるので、仕事をするにもナノマシンは必要。日常生活では買い物の注文も決済もナノマシン。旅行するためのワームホールゲートを使うにもナノマシンが必要だった。
そうして、宇宙船が現れてから10年が経った。今では宇宙人のもたらした科学技術がなければ、完全に人々は生活できなくなった。地球にいる宇宙人の数も増え、その頭の良さから国の中枢に潜り込み、代表となるものまで現れた。人々は美しく賢い宇宙人と結婚したいと考え、若者の支持するメディアではそれこそがトレンドとして描かれる。
既に地球の手綱は宇宙人に握られていた。もはやこの星に抵抗する術などない。宇宙人による静かな侵略はもう完了していたのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる