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2章 ミュラー青春の謳歌
丸太でビーチ
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常夏の猛烈な太陽の日差し、日焼けに沁みる潮風、足の裏を焼く砂浜。
流れる汗をぬぐいもせず、日光に肌を焼かれながらミュラーは立っていた。
ひたすら立ち続けていた。
微動だにせず直立不動を強いられていた。
丸一日、それを強制されていたのだ。
飛びそうな意識をミュラーは気合で保つ。
そこは海洋都市ベガスの誰もいない美しいビーチだった。
来た時こそ花畑越しに見える砂浜に感動したものだが、それも一瞬のこと。
ミュラーはすぐ地獄を見ることになった。
裸足で灼熱の砂浜に起立したまま、一切動かないこと。
ミュラーはそれを強要されていた。
少しは輝く海を眺める余裕があった先ほどまでとは違い、もはや流れる汗が熱さのみならず疲れによる冷や汗にすら感じられてきた。
「休め!」
その号令で、素早く閉じた足を開く。
そのつもりだった。
新しく踏んだ砂が熱くて、思わず引っ込めてしまう。
すると罵声が飛んだ。
「またミュラーあんたね!!! このウジムシが!!!! ペットの犬だってできることよ!!! こんな簡単なこともできないの!?!? あんたは犬以下ね!!!」
鬼軍曹の罵倒が容赦なくミュラーの自尊心を傷つける。
そして大の大人ほどある丸太を投げつけられた。
「それ持って浜辺10往復!!! 掛け声と足を揃えなさい!!!!」
ふらふらになりながら丸太を担ぎ、駆け足をする。
再び罵倒が浴びせられる。
「ちょっと、あんた元軍人なのよね? 全然足が揃ってないわよ! 経歴詐称してるの?!」
鬼軍曹が丸太を振りまわして、ミュラーの頭を叩きながら責め立てる。
「返事はどうしたの!!!!」
「サーノーサー!!」
ミュラーは声を張り上げて答えた。
しかし暴力は止まらない。
ミュラーのみぞおちに丸太のフルスイングが叩きこかれる。
内臓の悲鳴を抑え、歯を食いしばった。
「声が小さいのよ!!!!」
ミュラーは涙混じりに腹の底から声を出す。
「サーィェッサー!!!!!!」
「なに男のクセに泣いてんのよ、気持ち悪い。泣いたら許されるとでも思ってんの!? この根性無しが!!! あんただけなのよ、できないのは!!!!」
鬼軍曹の容赦ない罵声がミュラーのハートを粉々に打ち砕く。
そして粉々になったハートを容赦なく踏み潰していった。
「駆けっこもできないの!?? 近所の子供以下じゃない! ちょっと勘弁してよ! こんな新人、生まれて初めて!! テメーなんか辞めちまえ!!!!」
満身創痍のミュラーの足がもつれて、転んでしまう。
倒れたミュラーをゲシゲシと踏み叩く鬼軍曹。
懐から何か取り出す。
「どうやら水分補給が必要ね、飲ませてあげるから、ありがたく飲みなさい!」
差し出された瓶の中身はおぞましい緑色に染まる液体が入っていた。
ミュラーはその正体を知っている。
アナコンダの精力剤だ……。
あのトラウマのある液体を飲めというのか……。
抵抗も虚しく、容赦なく瓶の先を口内に挿入され、それを喉へと流し込まれる。
「全部飲み干すのよ! 少しでもこぼしたりしたら、もう一本追加させるわ! しっかり咥えるのよ」
ミュラーは瓶の先を必死に咥える。
「ぐぶゥウウウウっ! ふっ! ふぶぶっ! んごッ! ごぐゥゥウウウウッ!」
悪寒と吐き気と闘いながらそれを飲み干した。
ミュラーの全身がガクガクと震えだす。
その様を見た軍曹が恍惚の笑みを浮かべた。
「あら? 御馳走様が言えないの? やっぱりもう一本追加ね。ほら一気飲みよ!!」
再び差し出されるアナコンダの精力剤。
屈辱の限りを尽くされたミュラーは見上げた。
彼の網膜には可憐な美少女の笑顔が映っていた。
悪魔の笑みを浮かべた美しい少女が……。
情け無用にミュラーの口先に瓶を差し出す。
色んな意味でミュラーは泣いていた。
拝啓、母上、お元気にしていますか。ミュラーは今猛烈に実家に帰りたい気持ちでいっぱいです。もし帰った時は何も言わずただ優しく抱きしめて下さい。
もう帰りたいです……。
世間は私が思ったよりも険しく、厳しいものだとこの身に今刻まれております。
打ち砕かれた心を癒して下さい。
私は無力だ……。不出来な息子を許して下さい。
灼熱の炎天下の下、口汚い罵倒を浴びながらミュラーは心の底から後悔した。
……何故だ……?
……どうしてこうなった……?
流れる汗をぬぐいもせず、日光に肌を焼かれながらミュラーは立っていた。
ひたすら立ち続けていた。
微動だにせず直立不動を強いられていた。
丸一日、それを強制されていたのだ。
飛びそうな意識をミュラーは気合で保つ。
そこは海洋都市ベガスの誰もいない美しいビーチだった。
来た時こそ花畑越しに見える砂浜に感動したものだが、それも一瞬のこと。
ミュラーはすぐ地獄を見ることになった。
裸足で灼熱の砂浜に起立したまま、一切動かないこと。
ミュラーはそれを強要されていた。
少しは輝く海を眺める余裕があった先ほどまでとは違い、もはや流れる汗が熱さのみならず疲れによる冷や汗にすら感じられてきた。
「休め!」
その号令で、素早く閉じた足を開く。
そのつもりだった。
新しく踏んだ砂が熱くて、思わず引っ込めてしまう。
すると罵声が飛んだ。
「またミュラーあんたね!!! このウジムシが!!!! ペットの犬だってできることよ!!! こんな簡単なこともできないの!?!? あんたは犬以下ね!!!」
鬼軍曹の罵倒が容赦なくミュラーの自尊心を傷つける。
そして大の大人ほどある丸太を投げつけられた。
「それ持って浜辺10往復!!! 掛け声と足を揃えなさい!!!!」
ふらふらになりながら丸太を担ぎ、駆け足をする。
再び罵倒が浴びせられる。
「ちょっと、あんた元軍人なのよね? 全然足が揃ってないわよ! 経歴詐称してるの?!」
鬼軍曹が丸太を振りまわして、ミュラーの頭を叩きながら責め立てる。
「返事はどうしたの!!!!」
「サーノーサー!!」
ミュラーは声を張り上げて答えた。
しかし暴力は止まらない。
ミュラーのみぞおちに丸太のフルスイングが叩きこかれる。
内臓の悲鳴を抑え、歯を食いしばった。
「声が小さいのよ!!!!」
ミュラーは涙混じりに腹の底から声を出す。
「サーィェッサー!!!!!!」
「なに男のクセに泣いてんのよ、気持ち悪い。泣いたら許されるとでも思ってんの!? この根性無しが!!! あんただけなのよ、できないのは!!!!」
鬼軍曹の容赦ない罵声がミュラーのハートを粉々に打ち砕く。
そして粉々になったハートを容赦なく踏み潰していった。
「駆けっこもできないの!?? 近所の子供以下じゃない! ちょっと勘弁してよ! こんな新人、生まれて初めて!! テメーなんか辞めちまえ!!!!」
満身創痍のミュラーの足がもつれて、転んでしまう。
倒れたミュラーをゲシゲシと踏み叩く鬼軍曹。
懐から何か取り出す。
「どうやら水分補給が必要ね、飲ませてあげるから、ありがたく飲みなさい!」
差し出された瓶の中身はおぞましい緑色に染まる液体が入っていた。
ミュラーはその正体を知っている。
アナコンダの精力剤だ……。
あのトラウマのある液体を飲めというのか……。
抵抗も虚しく、容赦なく瓶の先を口内に挿入され、それを喉へと流し込まれる。
「全部飲み干すのよ! 少しでもこぼしたりしたら、もう一本追加させるわ! しっかり咥えるのよ」
ミュラーは瓶の先を必死に咥える。
「ぐぶゥウウウウっ! ふっ! ふぶぶっ! んごッ! ごぐゥゥウウウウッ!」
悪寒と吐き気と闘いながらそれを飲み干した。
ミュラーの全身がガクガクと震えだす。
その様を見た軍曹が恍惚の笑みを浮かべた。
「あら? 御馳走様が言えないの? やっぱりもう一本追加ね。ほら一気飲みよ!!」
再び差し出されるアナコンダの精力剤。
屈辱の限りを尽くされたミュラーは見上げた。
彼の網膜には可憐な美少女の笑顔が映っていた。
悪魔の笑みを浮かべた美しい少女が……。
情け無用にミュラーの口先に瓶を差し出す。
色んな意味でミュラーは泣いていた。
拝啓、母上、お元気にしていますか。ミュラーは今猛烈に実家に帰りたい気持ちでいっぱいです。もし帰った時は何も言わずただ優しく抱きしめて下さい。
もう帰りたいです……。
世間は私が思ったよりも険しく、厳しいものだとこの身に今刻まれております。
打ち砕かれた心を癒して下さい。
私は無力だ……。不出来な息子を許して下さい。
灼熱の炎天下の下、口汚い罵倒を浴びながらミュラーは心の底から後悔した。
……何故だ……?
……どうしてこうなった……?
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