アウトロー ~追憶~

白川涼

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2章 ミュラー青春の謳歌

社会の洗礼①

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 砂浜に集まった俺達は、なぜか横一列に整列させられていた。
 服装も青い作業服、しかも長袖で統一させられた。この灼熱の暑さでだ。

 フェンディが声を張り上げる。
「改めて自己紹介するわ! あんたたちの教育係になったフェンディよ! これから私のことは軍曹と呼びなさい!」
 キリッと吊り上がったまなじりで、フェンディは続ける。
「今からあんたたちにはタオのコントロールをしてもらうわ。まずはあんたたちが出せるだけのタオを出しなさい!」
 ジラールが苦笑いしながら反論する。
「おいおい、タオなんて子供でもできるだろ。 なんなら、そこらの草木でも気を宿してるぜ。今さら覚える必要なんてあんのかよ」
 すると、フェンディがどこから取り出したか分からない丸太でジラールの頭をぶっ叩く。
「いいから言われた通り全力でタオを出すのよ! いい!? 全力よ!!」
 言われた通り四人は全身の気タオを解き放った。
 俺が一番かと思ったが、どうやらさっきのクロエとかいう女の子が一番放出力が高い。
 ちょっとショックだ。
 フェンディが続ける。
「じゃあそれを夜までぶっ通しで維持すること! それが今日の訓練内容よ!」

 訓練って言ったか!? 研修じゃなかったのか!? 
 しかも、全力のタオを丸一日中放出し続けるだと!?
  全力疾走で山登りするようなものだ。
 そんなの無理に決まってる!

 案の定ジラールが早くも弱音を吐く。
「ちょっと待て、一日中だと!? できるわけねーだろ!! せいぜい30分が限界だ! 無理に決まってるだろ!!」
 再びジラールは丸太でぶちのめされる。
 フェンディはキッとうずくまるジラールを睨みつけた。
「できるできないじゃないわ。やるのよ!」
 俺は丸太をぶつけられる覚悟で疑問を口にする。
「こんなことに何の意味がある?」
 フェンディは鋭い眼光を俺に向ける。
「いい? 私たちがハントするのは大型の怪物よ。あんたたちの今の力じゃシカを仕留めるのがせいぜいだわ。けどね、タオを自在にコントロールできればこんなことができるのよ」

 可憐な少女はかよわい右手に持っていたこぶし大の石を、まるで水風船を割るように、いともたやすく粉砕して見せた。

「あんたたちには根本的に、タオの出力が足りていないのけど、この訓練をすれば自然とタオの出力は底上げされるわ」
 片手で石を粉砕したフェンディにヒいていた俺達は、何も言えずに顔を見合わせる。
 それを眺めたフェンディは、肩を竦める。
「話はおしまい? じゃあさっさと続ける! 私は向こうのベンチで昼寝してるわ。ちょっとでも気を抜いたら丸太を飛ばすからね」
 そう言ってスタスタとベンチに向かうフェンディ。

 なんだ、この地獄は。
 そして俺は一時も持たず地面に倒れ伏した。

 フェンディが俺の頬を叩く。
「まだ死ぬような時間じゃないわ。ほら、これを飲みなさい」
 俺の口元に瓶が近づけられる。頭がぼんやりして判断力が鈍り、水分補給と勘違いしてそれをつい口にしてしまう。
「感謝しなさい、アナコンダの精力剤よ」
 その瞬間、俺は口の中のものを吐こうとした。しかし、それはフェンディの手で制される。
「何吐こうとしてんのよ!! 全部飲み干しなさい! 杯を干すのよ!!」
 杯じゃなくてこれ瓶だろ!
 抵抗しようと身もだえするが、フェンディに力づくで押さえつけられ、アナコンダの精力剤を流し込まれる。

 こんな小さな女の子相手に屈辱だ。

 結局俺はアナコンダの精力剤をすべて飲み干すことになった。

 すると、フェンディがもう一本アナコンダの精力剤を取り出して俺の目の前で振りながら、
「ほら、早く立ちなさい! 気合よ! 気合でタオを出すのよ、この根性なし! 気合が足んないからあんたはすぐへばるのよっ!!!」

 ヤバい、このままじゃヤク漬けにされてしまう!

 言われた通り俺は立ち上がり、タオを放出した。
 すぐにジラールがへばり、情け容赦なくアナコンダの洗礼を受ける。

 その様子をチラリと見て、思わず微笑んでしまう。
 他人の不幸は蜜の味だ。

 どうだ? 美味いか? クックっクック……。

 そして、残りの二人も無念にも力尽きた。
 フェンディがクロエを抱き上げながら言う。
「喜びなさい、クロエちゃん。ママのおっぱいよりも栄養満点なアナコンダの精力剤よ。ほら、お口をあーんして」
 いやいやと抵抗する可憐な少女に、悪魔の笑みを浮かべながらその口へと瓶を突き立てる。
「ほら、ちゃんと飲み込むのよ! 出しちゃ駄目、最後の一滴まで飲むの!!」
 がっちりと頭を抑えられ、逃げられないクロエは必死にこらえていた。
 そして、独特のにおいとともにむせかえりそうになりながらも、それを喉の奥へと流し込んでいく。
 フェンディが歪んだ笑みを浮かべる。
「しっかりちゃんと残さず飲むのよ?! 空になるまで咥え続けなさい!!」
 一滴も残さないように吸い取り続けると、その手が離れる。

 フェンディは笑う。その姿は悪魔にふさわしい

「ほら、最後にちゃんと言わないとだめじゃない!」
 クロエがせき込みながら言う。
「うっ……あっ、ありがとうございます、ごちそうさまでした、美味しかったです、軍曹……」

 その様子を見て俺はタオの出力が上がった。

 なかなかいいものを見させてもらった。
 ジラールと二人でにんまりする。

 清楚な少女がアナコンダの精力剤で汚される様は、どこか背徳的だ。

「はぁい、今度はオルマちゃんの番でちゅねー」
 フェンディがまるで慈愛の笑みのような表情を浮かべる。
「しっかり全部飲み込むのよ?!」
「えぐっ、やめ……んぐううぅっ! ひぐっ、うぐぐっ、んぐううぅっ!?」

 立ち上がったフェンディはさわやかな笑顔で手を叩く。
「さあ、続けて頂戴! 気合で乗り切るのよ! 一日はこれから長いわよ!」
 四人は思った。

 お、鬼軍曹……!


 俺達は、ヤク漬けにされながら、気合と根性でその長い一日を乗り切った。
 俺は猛烈に明日が来るのが怖くなった。
 故郷に帰りたい!!

 あのクールな佇まいだった、可憐なクロエがブツブツと誰もいないところへ話しかけている。
 アナコンダの精力剤、恐るべし……。
 勿論残り二人も盛大にラリっていた。


 なお、俺は泥のように寮のベッドで倒れ伏し、ビクビクと体を痙攣させながら夢の中へと誘われた。このことは伏せておこう。

 他の三人も、きっと同じだったろう。

 こうして、俺の地獄のような訓練生活は始まった。
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