アウトロー ~追憶~

白川涼

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2章 ミュラー青春の謳歌

社会の洗礼②

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 夜と朝をくぐり、夜明けの太陽が登ろうとしている時、盛大な起床ラッパが鳴り響く。
 鼓膜の強烈な痛みに反応してミュラーは目覚めてしまう。
 ベッドから起きようとすると、盛大に冷水をぶっかけられた
 ミュラーが見上げると底には歪んだ笑みを浮かべる美少女、もとい鬼軍曹がいた。
「点呼の時間よ、いつまで寝てるの! さっさと着替えて外に整列しなさい!! 30秒で支度して!!!」
 俺はアナコンダの精力剤の副作用で意識が混濁しながらも身支度を急いで始めた。
 もっとマシな起こし方はないのか……。
 
 早朝に、再び砂浜で整列させられる四人。
 みんな目が虚ろだ。
 昏倒していないだけでも奇跡だろう。
 頭痛に苦しむ俺たちの頭に軍曹のカン高い声が響き渡る。
「よく聞け! ウジムシ共! 今日の訓練では基本動作を徹底的に叩き込む。『気を付け』と『休め』だ! 私が号令で『気を付け』と言う、その合図でアンタたちはタオを発散させろ! そして『休め』の号令でタオを制御して、その体内で循環したタオを遮断させ、滅却させろ! タオコントロールの基本動作だ! その体に刻み込まれるまで徹底的に覚えてもらうわ! 覚悟しなさい!!」
 それをまた一日中やらされるのか?
 嫌な不安がよぎった時、ジラールが懇願する。
「昼飯ぐらい食わせてくれ......」
 即座に飛んできた丸太がジラールの顔にのめりこむ。
 軍曹が声を荒げる。
「このウジムシ! 発言の許可をとりなさい!! どうせ倒れた時に、アナコンダの精力剤で栄養補給させてあげるからいらないわ!! では、『ツケーーーーーー!!!!!!』」
 いきなりの号令に戸惑う四人。
 それを見て激怒する軍曹。
「言われたこともできないの! 耳ついてんの!? 罰として逆立ち腕立て伏せ500回!!!」
 あ、今日も長い一日が始まりそうだ。

「休め!!!」
 全身を汗まみれにしながら、タオを操作し、それを消しさる。
 しかしその動作が遅れた。
 すかさず鬼軍曹が丸太で張り倒す。
「またミュラーお前か!? ねぇねぇ何度言ったらできるようになるの!?? あんたが足引っ張ってるせいで他の三人ボロボロだよ??!! ぺナルティ! 全員うさぎ跳びで砂浜100往復!!」
 ミュラーは倒れた身体を起こせずにいた。

 もう限界だった。
 もう殺してくれ、そう願った。

 すぐにジラールとオルマが両肩を抱きかかえる。
 そして二人が励ます。
「またアナコンダの精力剤飲まされたいの!? 死んじゃうよ」
「このままじゃあのクソアバズレに殺されるぞ。諦めたら死ぬぞ」
 連帯責任の心の呵責で涙が出てきた。
 案外こいつらいい奴らだな。
 クロエも激励する。
「私が先頭で跳ねるからついてきてね」
 俺はクロエの小ぶりな尻が上下に動くのを眺めながら、砂浜をウサギのように跳ねていた。

 眼福だ。
 もう少し頑張ろう。

 鬼軍曹が叫ぶ。
「ツケーーーーーー!!!!!」
 この号令に今度はクロエが遅れる。
 それと同時に倒れ伏してしまうクロエ。
「どうしたの、クロエ! もう限界!? よーし、ならあんたの大好きなアナコンダの精力剤を口いっぱい飲ませてやるわ!! 三人とも、クロエを押さえなさい!!」
 俺たちは弱弱しいクロエの抵抗を抑え込み、閉じた口を開けさせた。
 鬼軍曹が瓶の先をクロエの顔の前に突き出す。
「咥えてもらうのが一番ね。それを咥えなさい、クロエ。根元までしっかり咥えるのよ!」
 口を開けたクロエが、口内の奥まで瓶の先を飲み込みだす。
 屈辱感のためか、恐怖のためか、小刻みに身を震わせている。
 鬼軍曹はニタリと笑う。
「さあ、たっぷりと飲み干しなさい!」
 そんなクロエの喉奥を、さらにゴン、ゴンと瓶でノックを繰り返す。
 それと同時に注がれるアナコンダの精力剤。
「ふぶぶゥッ!? ゴブッ!? ふぐゥッ!? ウッ! ぐッ!? ぶぁあああっ!」
 身もだえしながら暴れようとするクロエを必死に抑える俺は、強い罪悪感と背徳感を感じた。

 俺のせいだ……。

「あ、溢れりゅっ! も、もぅ、ふぐッ!? ンぐぐっ! こ、これ以上、は、入りゃなひっ! んっ! んっ!っ!」
「全て飲み干すのよ、クロエ! これは命令よ!」
「ん! ングッ! ングッ! ゴキュッ! ジュるっっっっ!」」
 嚥下する激しい音が響くと同時に、膨らんでいた両頬が元の形に戻っていく。
 こみ上げてくる嘔吐感をこらえるように、クロエの顔はこわばっている。
 最早、その瞳から光は消えていた。
 クロエがむしゃぶりついていた瓶を、軍曹が乱暴に引き抜く。
 クロエが堪らず呻く。
「んずッ…...フウっ、フウっ......くううぅぅっ、ぷぁあっ!」
 疲労か、精力剤の副作用のせいか、クロエは全身を震えさせている。
 まるで真冬の空に冷水をかけられたかのように。
 しかしクロエは健気にも立ち上がった。

 その姿を見て俺は胸を打たれた。

 辛いのは俺だけじゃないんだ。
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