アウトロー ~追憶~

白川涼

文字の大きさ
19 / 58
2章 ミュラー青春の謳歌

社会の洗礼③

しおりを挟む
 そして軍曹の地獄のしごきは続いた。

「休めーーーーー!!!!」
 今度はオルマがしでかした。
 あまりにタオを放出したせいで。
 制御ができずタオを暴走させてしまったのだ。
 軍曹が容赦なく、渾身の力を込めてオルマの尻に丸太を叩き込む。
「ふぎゃあああ!!!!!!」
「オルマ!アンタはこの訓練2回目でしょ! いつになったら一人前の動き見せてくれるの!! あんたの小ぶりな尻を安産型にするまで叩きつけてあげるわ!!!!」
 オルマの尻に何度も丸太が振り下ろされる。
「うぁあああああああああああ!!!!!!!!」
「アタシのおかげでいい形の尻になったじゃないの、感謝しなさい」

 俺達は軍曹の地獄のようなしごきに戦慄し、ただただ恐怖し、ひたすら「気を付け」、「休め」この二つの号令を繰り返し、ただただ長い長い一日が終わることを望んでいた。

 もちろん、今日も全員アナコンダの精力剤でヤク漬けにされている。

 疲労と薬物のせいで意識が混濁していく中、ひたすら気タオを放出、そして制御して消す。この繰り返しだった。

 その間は言葉にもしたくないようなしごきのフルコースだ。

 ああ……もっと人間らしく生きていたい……。

 先日食べたカサカサのパンが御馳走に思える。

 なんで食事がアナコンダの精力剤なんだ。

 途中から意識は途絶えていた。

 それでも、号令の合図とともに、反射的に行われるタオの操作。
 全ての感覚が麻痺していた。
 気づけば、夕日が暮れる。
 すると、威勢のいい鬼軍曹の叫び声が響き渡った。
「今日の訓練、ここまで!!」
 体から一気に力が抜け、俺はへなへなと身体の力を抜いた。

 立ちっぱなしで何時間経ったんだ?

「何やってんの! 整列!!」
 四人は這う這うの体で、整列する。
 すかさず軍曹が声を上げる。
「こんなくらいの基礎訓練で遅れをとられても困るわよ! 地元じゃちょっとばかし力があるからって自信持ってたかもしれないけど、そんなチンケなプライド、クソの役にも立たないから、覚えておいて!」
 なんの前ぶれもなくジラールのみぞおちに丸太を叩きこむ。
 堪らずジラールは膝をついた。
「今のアンタたちじゃ、ハンターの現場に行ったところで、ただの足手まといどころか、真っ先に死ぬだけよ! 自分の命すら守れない奴はチームにはいらないわ!」
 軍曹はジラールの背中をぐりぐりと踏みつける。
「こんな訓練も乗り越えられない奴はハンターの素質がないってこと、頭に刻んでおくことね! チームから一人も死人を出すわけにはいかないのよ! 素質がない奴は帰りなさい! 今すぐ!! はい、礼!!」
 四人はすぐさま反応できず、バラバラな動きをした。
 容赦なく丸太が投げつけられる。
「ちょっと気を抜くとこれね。最近の新人の中じゃ一番ひどい出来よ。アンタたち、何しに来たの?」

 こうして訓練二日目は終了した……。

 四人はその場から、糸が切れた人形のように崩れ落ちる。
 ミュラーは倒れながら思う。

 体も、頭も、限界だ……。

 その時、ジラールが手を差し伸べてきた。
「やっと終わったんだ。帰ろうぜ。……立てるか?」
 ジラールに助けられ、身体を起こすミュラー。
 オルマが泣き言を言う。
「尾てい骨が折れてる! 立てない!」
 ガタガタと身震いさせながらクロエも続く。
「薬の飲みすぎで、身体が言うことを聞いてくれないわ」
 ジラールとミュラーは顔を見合わせてつぶやいた。
「……おぶってやるか」
 四人は夕日を背に、帰路へと足を動かす。夜の街を潜り抜けて。

 俺はふと街の明かりをぼんやりと眺める。
 このままずっと夜が続けばいいのに……覚めない悪夢はまた明日も繰り返されるのか……。
 明日の朝の起床ラッパを聞くことに、恐怖を覚えた。
 不思議と腹は空いていない。
 悲しいことに、アナコンダの精力剤で腹は満たされている。
 今夜も深い眠りに就きそうだ。
 あの悪魔の笑みを浮かべた少女のせいで、自分の中の自尊心が崩れていくのが分かる。
 心の中の防波堤が、今盛大にひび割れているのを感じた。

 これが、心が折れそうになるということか……。

 俺はこんなにも弱い人間だったのか。

 俺の目からあふれた涙を、ジラールが拭う。
「泣くな、男だろ。あの高慢ちきな女に男の恐ろしさを教えてやる。あいつぜってー処女だぜ、ハハ」
 ジラールの笑いに俺もつられる。
 すると、他の二人も笑い始めた。
 笑い声が夜のベガスにこだまする。
 下品な言葉だったが、ジラールの軽口で四人の心は温まった。
 笑いながら、祈りのように指を重ねて、小さくつぶやく。

「俺はまだやれる」

 こうして地獄のような日々が3週間過ぎた。

 思い出しただけで吐き気をもよおす日々だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...